iDeCoを運用中ですが、企業型DCに入ったほうがよいでしょうか?
配信日: 2021.03.02
「勤務先で選択制の企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」)が導入されることになりました。iDeCoを運用していても企業型にも入れますか? 無理だとしたら、企業型とiDeCo、どちらで運用したらよいですか?」
それぞれのメリットとデメリットを解説します。
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執筆者:黒木留美(くろき るみ)
黒木DC調査研究所 所長 AFP 2級ファイナンシャルプランニング技能士
保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナー 9割以上法人契約を占める保険会社を夫のメキシコ駐在帯同のため、退職。帰国後、企業型DCやiDeCoといった確定拠出年金を伝えていくことでお客様の老後のお金の不安を解消してあげたいと思い、確定拠出年金を専門とする独立系FPとして活動することを決めました。
今後の3つの選択肢とは?
(1)企業型DCに加入
勤務先の企業型DCにiDeCoで運用していた資産を移換して、今後は企業型DCのみで運用します。
企業型DCに加入後もiDeCoも続けることができるかどうかは、勤務先の規約によります。残念ながら、90%以上の企業がiDeCo併用できるようにしていません。ですから、「企業型DCに加入する」ということは「iDeCoの資格を喪失する」ことになります。
この場合iDeCoで運用していた資産はいったん現金化されてから、企業型DCに移換します。企業型DCで改めて商品を選び運用します。
(2)企業型DCに加入、iDeCoは資格喪失後運用指図者として資産を残す
企業型DCに加入して、iDeCoの資産はiDeCoの口座で運用のみします。iDeCoの資格は喪失しますから、毎月の拠出はできません。運用指図者として運用の指図を続けます。この場合、すぐに企業型DCに資産は移換する必要はありません。もちろん途中で移換したいと思えば、運用指図者をやめて、企業型DCに移換できます。
(3)iDeCoを続ける
企業型には加入せずに、今までどおりiDeCoを続けます。
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企業型DCのメリットとデメリットは?
iDeCoにはない企業型DCのメリットは3つあります。
まず1つ目は、手数料を会社が負担してくれることです。iDeCoの場合、運営管理機関である金融機関が手数料を0円にしていても、国民年金基金連合会や事務委託先金融機関に171円の手数料を拠出する度に払っています。
例えば、毎月1万円拠出していても実際に運用にまわせるお金は手数料171円を引いた9829円になります。この手数料の負担がなくなることは長期運用していく上で大きな差になってきます。
2つ目は、iDeCoでは所得税と住民税の節税だけでしたが、企業型DCは所得税と住民税の節税に加えて毎月の拠出金額によっては社会保険料も減額できることです。ただし、減額できたら、その分将来の老齢厚生年金など減額されることもご確認ください。
3つ目は、iDeCoだと自分で投資について学ぶ必要がありますが、企業型だと会社で投資教育研修を受講できます。2018年から投資教育が努力義務になり、今まで研修をしていなかった会社も投資教育する動きが出てきています。こういった研修は積極的に利用していきたいですね。
反対に、企業型DCのデメリットはiDeCoのように自分で運営管理機関が選べないことです。企業型DCでは運営管理機関ごとに、会社ごとに取り扱う商品は数も種類も違います。自分が買いたいと思う商品がない可能性もあります。
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自分に合った選択肢を考えてみる
iDeCoの運用が赤字の人は慌てて移換しなくても問題ないでしょう。時間をかけて運用していくことも可能です。その間事務委託先金融機関に毎月66円の手数料の支払いがあることはご確認ください。
ただし、企業型DCとiDeCoの2ヶ所で運用しますから、煩雑で管理が難しいようでしたら、タイミングをみて移換してまとめたほうが管理しやすいでしょう。
iDeCoを続けたい方に朗報があります。2022年10月から企業型DCの加入者のiDeCoへの加入条件が緩和されます。この加入条件の緩和により、今まで加入できなかった多くの人が企業型DCにもiDeCoにも加入できることになると期待されています。
まだ1年以上先の話ですが、iDeCoを運用指図者として残しておいて、両方できるようになったら、両方の確定拠出年金で運用するということも可能になります。
選択を注意してほしい方は、出産や病気など休業の予定がある方、会社を退職する予定がある方です。このような予定がある方はiDeCoのままのほうがよいかもしれません。なぜなら、選択制企業型DCは拠出した分、社会保険料や税金の負担が軽くなり、その分給付金が減ってしまうからです。
例えば、育児休業に入った場合にもらえる育児休業給付金では、給与のおおよそ67%(6ヶ月経過後は50%)がもらえます。拠出によって減った給与が算定の基準となるため、給付金も減ってしまいます。育児休業給付金だけではありません。
給与額(標準報酬月額)が算定基準となる、育児休業の前の産休期間にもらえる出産手当金や、働けない期間にもらえる傷病手当金、雇用保険の失業手当、介護休業手当なども拠出しない場合に比べて減ってしまいます。
上記のような予定がない方や、2ヶ所の運用が難しい方は企業型DCのメリット・デメリットを確認して、移換の判断をしてください。
自分に合った選択肢は、今後のライフプランを考えたうえで選んでください。きっと、より効果的に確定拠出年金を利用することができるでしょう。
執筆者:黒木留美
黒木DC調査研究所 所長 AFP 2級ファイナンシャルプランニング技能士