更新日: 2021.03.25 その他年金

配偶者が失業中に亡くなった…。遺族年金はどうなる?

執筆者 : 新井智美

配偶者が失業中に亡くなった…。遺族年金はどうなる?
失業中の配偶者が亡くなった場合、遺族の方は遺族年金を受け取ることができるのでしょうか。遺族年金は、要件を満たせば受け取ることが可能ですが、その要件の中に年金保険料の納付状況もあることから、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 
今回は、配偶者が失業中に亡くなった場合の、遺族年金の受け取りについて解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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遺族年金を受け取るための要件とは?

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者・被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
 
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなられた方の年金の納付状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。遺族年金を受け取るには、亡くなられた方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件が設けられています。
 

■遺族基礎年金

まず、遺族年金は受給される側の要件を満たす必要があります。その要件とは、「子のいる配偶者」もしくは「子」であることです。したがって、子どものいない配偶者は遺族基礎年金を受給できません。
 
また、亡くなった方の年金保険料納付状況にも注意する必要があります。遺族基礎年金の支給要件には、「被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。
 
ただし、死亡した者について、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること。2026年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がないこと」が要件となっています。
(国民年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」より一部抜粋(※1))
 
したがって、失業中であってもきちんと国民年金保険料を納付していたのであれば、受給要件を満たしていることになり、さらに18歳未満の子どもがいる場合は遺族基礎年金を受給できます。
 

■遺族厚生年金

遺族厚生年金の支給要件は、「被保険者が死亡したとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき。
 
ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者について、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。2026年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がないこと」、もしくは「老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき」となっており、遺族基礎年金のような受給者における子どもの有無についての制限はありません。
(日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」より一部抜粋(※2))
 
遺族厚生年金においては、死亡した者によって生計を維持されていた、「妻」「子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)」「55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。
 
ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給可能)」となっており、30歳未満で子どものいない妻に限っては5年間の有期給付となっています。
 

年金の未納について

20歳以上60歳未満の方であれば、国民年金保険料を納付しなくてはなりませんが、配偶者が失業中という状況であれば、年金保険料をきちんと払っていたのかどうかが気になるところです。収入がないことから納付が困難な状況に陥り、納付していないケースも考えられます。
 
厚生年金保険料については、適用事業所で働いていなければ支払う必要はありませんし、失業前の保険料の支払いについては適用事業所が行っていることから、納付漏れの状況が起きることはあまり考えられません。
 

■国民年金の納付状況を調べるには?

もしも、国民年金保険料が未納の状態であれば、毎年11月中旬に日本年金機構より「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)」が届きます。そのような催告状が届いているのであれば、国民年金保険料を支払っていないことが分かります。また、ねんきん定期便やねんきんネットなどで納付状況を調べることもできます。
 

■国民年金の未納が分かった際に行うこと

催促状やねんきん定期便などで未納期間があることが分かった際には、なるべく早く未納分を支払うようにしましょう。未納分については、過去2年間までさかのぼって支払うことが可能です。
 

年金の免除制度と免除期間の取り扱い

所得が少なく、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や、失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、本人が申請書を提出し、申請後に承認されると保険料の納付を免除してもらえます。
 
免除される額は、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4種類があり、所得によって免除される額が決まります。そして、その免除された額と免除期間に応じて、将来受け取れる年金額が変わります。
 
例えば、全額免除を受けた際には、その期間については全額納付した場合の2分の1の年金額が支払われることとなっています。また、免除期間の保険料については、10年以内であれば、追納することが可能です。
 
失業などで収入がない場合は、失業等による特例免除の制度を受けることができます。通常の免除申請だと前年度の所得により免除される額が決まってしまうため、4分の1免除であっても支払うことが困難となるケースも考えられます。
 
失業等による特例免除の制度を受けるためには、「雇用保険被保険者離職票等の写し」等と併せて年金手帳を自治体の窓口に提出して申請する必要があります。
 

年金の納付猶予制度とは?

国民年金には免除制度とは別に納付猶予制度があり、これは厚生年金保険にも認められている制度です。
 

■国民年金保険料

20歳から50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合には、本人が申請書を提出し、承認されることで保険料の納付が猶予されます。納付猶予の期間は受給資格期間に含まれますが、将来受け取れる年金額が増えることはありません。
 

■厚生年金保険料

厚生年金保険料等を納付することにより、事業の継続等を困難にするおそれがあり、一定の要件に該当する場合、厚生年金保険料等を分割納付できるという制度が設けられています。
 
その際には、事業主が、納付すべき厚生年金保険料等の納期限から6ヶ月以内に「換価の猶予」の申請を行う必要があります。また、換価の猶予が認められた場合は、納付すべき厚生年金保険料等を一定の期間(猶予期間)内に分割して納付しなければなりません。
 

まとめ

基本的に失業中の死亡であっても、年金の未納がなければ遺族年金を受給できます。
 
もしものことがあった際には、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あるか、さらに2026年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がないかどうかをまず確認するようにしましょう。
 
とはいえ、年金の未納はできるだけ避けることが賢明です。特例制度を利用するなどして、故意に未納の状態にしているわけではないということを証明しておくようにしましょう。
 
(※1)国民年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
(※2)日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」

 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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