更新日: 2021.06.29 その他年金

いつもと違う「ねんきん定期便」が届いたら…年金について考えるタイミング!

執筆者 : 辻章嗣

いつもと違う「ねんきん定期便」が届いたら…年金について考えるタイミング!
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」ですが、節目の年には封書の「ねんきん定期便」が届きます。今回は、封書の「ねんきん定期便」が届いたときに、何をすべきか解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

「ねんきん定期便」にははがきと封書の2種類がある

「ねんきん定期便」は図表1のとおり、年齢によって送付形式や記載内容が異なります。
 
【図表1】

(※1を基に筆者作成)
 
通常、「ねんきん定期便」は、はがきで届きますが、35歳、45歳、59歳の節目の年には封書の「ねんきん定期便」が届きます。そして、はがきの「ねんきん定期」は、直近1年間の情報が記載されているのに対して、封書で届く「ねんきん定期便」は、全期間の情報が記載されています。
 

封書の「ねんきん定期便」が届いたら加入履歴を確認しよう

1.「年金加入履歴」の見方

封書の「ねんきん定期便」には、過去の就職や転職の状況が年金加入履歴として全期間記載されています(※1、2)。
 

(※2を基に筆者作成)
 
「年金加入履歴」表の見方は、以下のとおりです(※2)。
 
h:加入制度
加入していた年金制度が、「国年」(国民年金)、「厚年」(厚生年金)、「船保」(船員保険)、「公共」(公務員共済)、「私共」(私立学校教職員共済)のように記載されています。
 
i:お勤め先の名称等
前述した加入制度が「国年」の場合は、「第1号被保険者」または「第3号被保険者」の別が記載されています。また、「厚年」と「船保」の場合は勤務先名が、「公共」と「私共」の場合は共済組合名が記載されています。
 
j:資格を取得した年月日
当該年金制度に加入した年月日が記載されています。
 
k:資格を失った年月日
年金制度の資格を喪失した年月日が記載されています。なお、年金制度に加入中の場合は、空欄となります。
 
l:加入月数
「加入制度」欄の加入月数が記載されていますが、資格を喪失した月は含まれません。また、「お勤め先の名称等」が「第1号被保険者」の場合、保険料が未納であった月も含まれています。なお、年金加入中の場合は、「ねんきん定期便」の作成年月日の前々月までの月数になります。
 
m:国民年金(a)
国民年金の「納付済」、「全額免除」、「半額免除」、「4分の3免除」、「4分の1免除」、「学生等」(学生特例と納付免除)、「産前産後免除」、「第3号」(第3号被保険者)ごとの月数が、また、その合計月数が「納付済等月数 計」として記載されています。また、付加保険料を納付した月数と、保険料の未納月数が記載されています。
 
n:船員保険(c)
船員保険の加入月数と加入期間が記載されています。
 
o:厚生年金保険(b)
「加入制度」の「厚年」、「公共」、「私共」別に加入月数と加入期間が、また、それらの合計が「厚生年金保険 計」欄に記載されています。
 
p:合算対象期間等
「年金加入期間合計」欄には、「国民年金」の月数(a)(保険料未納期間を除く)と「厚生年金保険」の月数(b)および「船員保険」の月数(c)の合計月数が記載されています。また、「受給資格期間」欄には、「年金加入期間合計」(a+b+c)と「合算対象期間」(d)の合計月数が記載されています。
 

2.「年金加入履歴」の確認項目

(1)年金加入履歴に不連続の期間がないことを確認
20歳を迎えた月から現在に至るまで、年金加入履歴として連続して記載されていることを確認しましょう。もし、不連続の期間がある場合は、その原因を確認しましょう。
 
そして、年金加入状況の記載内容に記入もれや誤りがあった場合は、封書の「ねんきん定期便」に同封されている「年金加入記録回答票」に必要事項を記入して、近くの年金事務所に提出するか、返信用封筒に入れて返送します。
 
その後、日本年金機構において調査・確認が行われ、もれや誤りがあった場合は年金加入記録に統合されます(※3)。
 
(2)受給資格期間が120月数以上あることを確認
老齢年金を受給するためには、受給資格期間が10年(120月)以上あることが必要です。最初の節目の年である35歳でも、既に20歳から15年を経過していますので、120月は満たしていているはずです。
 
なお、59歳の節目の年に受給資格期間が10年に満たない場合は、60歳以降も国民年金に任意加入(厚生年金被保険者を除く)することを検討する必要があります(※2、4)。
 
(3)年金加入期間が60歳の時点で480月を超えるか確認
老齢基礎年金は、年金加入期間が20歳から60歳までの40年間(480月)あると満額が支給されます。
 
ただし、保険料の免除期間がある場合は、免除割合と免除期間に応じて減額されます。この場合は、「ねんきん定期便」の「これまでの国民年金保険料の納付状況」を確認して、過去10年以内であれば免除された保険料や猶予期間の保険料を追納することで満額に近づけることができます。
 
また、年金加入期間が480月になるまで、国民年金に任意加入(厚生年金被保険者を除く)することもできます(※2、4、5)。
 

「ねんきんネット」を利用すると

ねんきん定期便は年に1回送付されますが、「ねんきんネット」を利用すれば、いつでもインターネットを通じて年金の加入状況などを確認することができます(※6)。
 

3.「ねんきんネット」でできること

ねんきんネットは、年金記録の確認や年金見込額の試算などを行うことができる便利なサービスです。
 

《ねんきんネットでできること》

●年金記録の確認
●将来の年金見込額の試算
●追納などが可能な月数と金額の確認
●電子版「ねんきん定期便」の閲覧
●郵送された各種通知書の確認
●持ち主が不明な年金記録の検索

 
したがって、封書の「ねんきん定期便」を待つことなく、いつでも年金記録や年金見込額を知ることができます。また、持ち主不明の年金記録の検索もできますので、年金記録のもれを自分自身で探すこともできます(※6)。
 

4.「ねんきんネット」に登録するには

ねんきんネットを利用するためには、ユーザーIDを取得するための登録が必要ですが、ねんきん定期便を受け取ってから3ヶ月以内であれば、ねんきん定期便に記載されている「アクセスキー」を用いて短時間で登録を完了することができます(※7)。
 

まとめ

節目の年に届く封書の「ねんきん定期便」には、全期間の年金加入記録が記載されていますので、「もれ」や「誤り」がないか確認し、対処しましょう。そして、「ねんきん定期便」が届いたら、この機会に「ねんきんネット」に登録することをお勧めします。
 
出典
(※1)日本年金機構「大切なお知らせ、『ねんきん定期便』をお届けしています」
(※2)日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和3年度送付分)」
(※3)日本年金機構「年金加入記録に『もれ』や『誤り』があった場合」
(※4)日本年金機構「任意加入制度」
(※5)日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」
(※6)日本年金機構「あなたの年金 簡単便利なねんきんネットで!」
(※7)日本年金機構「『ねんきんネット』に登録するには?」
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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