更新日: 2021.07.16 厚生年金

介護休業した場合の厚生年金保険料は、免除にならないの?

執筆者 : 大竹麻佐子

介護休業した場合の厚生年金保険料は、免除にならないの?
家族が介護状態となった場合の「仕事」と「介護」の両立は、想像以上に負担の大きいものです。会社を退職して介護に専念したものの復帰できず、経済的に困窮するケースや介護疲れによる肉体的・精神的な影響など介護に関する課題は深刻です。
 
こうした現状から政府や企業の取り組みも進んでいますが、課題の解決に追いついていないのが現状です。「介護休業」という選択肢は有効であるものの、厚生年金保険料などの社会保険料負担が継続することは、意外と知られていません。
 
介護をとりまく現状とともに、介護休業に伴う厚生年金保険料負担についてお伝えします。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

「家族の介護のために休業する」という選択肢

政府は、「介護離職ゼロ」への取り組みとして、「仕事と介護の両立支援制度」の整備を進めており、支援の柱となるのが「介護休業」です。これは、緊急対応のための介護を行うと同時に、公的サービスの申請や施設見学など仕事と介護の両立のための準備を行う期間と捉えることがポイントです。
 
介護される側にとって、家族の介護は精神的に安心ですが、介護する側の過度な負担は望んではいないはずです。「介護疲れ」や「介護うつ」を避けるためにも、介護する側・される側双方にとって安心できる環境づくりを考える介護休業期間であり、復帰することが前提です。
 

介護休業で介護休業給付金を受給する

労働者は、事業主に申し出ることによって、介護状態にある家族を介護するために、介護休業を取得することができます。雇用保険の被保険者が介護休業を取得した場合、事業者に給料の支払いは義務付けられていませんが、一定の要件を満たせば、雇用保険から休業期間中の所得補償として休業前の賃金のおおむね67%の「介護休業給付金」が支給されます。
 
対象となる家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫です。1人の家族につき通算して93日(3ヶ月間)まで複数回(3回まで)に分けて取得できます。
 
介護のための支援制度には、介護休業のほか通院の付き添い、介護サービスに必要な手続きのために半日や1日単位などで取得する介護休暇や時間外労働の制限などがありますが、制度を知らない、勤務先にいいづらい、同僚などへの負担配慮から認知度、取得率ともに低いのが現状です。
 

休業中の社会保険料負担は継続する

介護休業は、「育児・介護休業法」(育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に基づく制度ですが、育児休業のように厚生年金保険料免除の仕組みがありません。つまり、介護休業中も、これまでどおり保険料を納付する必要があります。
 
これは、介護休業は、育児休業に比べて短期間(通算93日まで)であるためです。
 

収入減少で厚生年金保険料の負担額は変わる?

上記のとおり、介護休業取得に伴う保険料に関する措置がないことから、収入が減った場合でも休業前の保険料と負担額は変わりません。ただし、年金制度上の臨時改定に該当した場合には支給額により再計算される場合があります。
 
具体的には、通常4月から6月の支給額から標準報酬月額が算出され、保険料負担額が決定(定時改定)しますが、標準報酬月額から大きく(2等級以上)変動した場合には、随時改定に該当し、再計算されます。
 

まとめ

介護に直面しても、ひとりで抱え込まず、他の家族や勤務先との相談を心がけましょう。そのためにも、日頃からのコミュニケーションや環境を整えておきたいものです。勤務先によっては、時短や在宅勤務などが可能な場合もあります。
 
また、10年後、20年後といった自分自身のライフプランを長期的視野で考えたいものです。まだまだ社会的環境が整っているとはいえない現状ですが、「介護離職ゼロ」を目指した政府の取り組みや企業の配慮は具体的に拡充されつつあります。
 
公的介護サービスの活用で肉体的負担を減らすこと、自治体の助成や支援の活用で経済的負担を、そして自分自身の時間を持つことで精神的負担を抑えていきたいものです。
 
現在の制度上、介護休業中の社会保険料負担は、経済的に重いものですが、継続することで将来の年金額を増やすことが可能です。そういった意味でも乗り越えていきたいですね。
 
出典
総務省統計局「平成29年就業構造基本調査 結果の概要」(平成30年7月13日)
厚生労働省 都道府県労働局「育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します」(令和2年度版)
厚生労働省 都道府県労働局「介護休業制度等の概要」
日本年金機構「標準報酬月額、賞与等」〜「随時改定(月額変更届)」
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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