更新日: 2021.07.30 その他年金

事実婚の会社員であった夫が亡くなった場合、遺族厚生年金を受け取れる人は誰?

執筆者 : 辻章嗣

事実婚の会社員であった夫が亡くなった場合、遺族厚生年金を受け取れる人は誰?
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者または被保険者であった方が亡くなった場合、その方の遺族に支給されますが、事実婚の関係にある方には受給資格があるのでしょうか。
 
今回は、事実婚の関係にあった方が遺族厚生年金を受給できるのか解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

遺族厚生年金を受給できる遺族とは

亡くなった厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が受給要件を満たす場合、その方に生計を維持されていた遺族は遺族厚生年金を受け取ることができます。
 
対象となる遺族は以下の方になります(※1)。


・妻
・子、孫
・55歳以上の夫、父母、祖父母

従って、生計維持関係が証明されれば妻には遺族厚生年金が支給されます。
 

生計維持関係にあることを証明するには

遺族厚生年金を受給するためには、死亡した方に生計を維持されていたことを証明する以下の要件を満たす必要があります(※2)。
 

1.生計同一要件

死亡した方と同居していることが要件となりますが、別居していても証明書類を提出することにより生計同一要件が認められるケースがあります。

 

2.収入要件

遺族厚生年金を受給される方の前年の収入が、850万円未満(または所得が655万円未満)であることが必要です。ただし死亡当時に年収850万円以上であっても、退職や廃業などの理由により、おおむね5年以内に850万円未満となることが認められる場合を含みます(※3)。

 

事実婚でも遺族厚生年金を請求できるのか

亡くなった方に生計を維持されていた妻には遺族厚生年金が支給されますが、厚生年金保険法には配偶者、妻として「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むとする」と記載されており、事実婚の関係にあった方も遺族厚生年金の受給対象に含まれます(※4)。
 
しかしながら、事実婚の関係にあった方が遺族厚生年金を請求するためには、事実婚関係および生計同一関係の認定を受ける必要があります(※5)。
 

事実婚であった方が遺族厚生年金を請求するには

事実婚の関係にあった方が遺族厚生年金を請求する際には、以下表の(ア)~(カ)のいずれかの書類を添付し、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」を提出して認定を受ける必要があります(※5)。
 
また、この申立書には事実婚の関係にあったことを第三者が証明する欄が設けられており、原則として第三者証明の記入が必要です。

ケース 事実婚関係・生計同一関係証明書類
(ア) 健康保険等の被扶養者になっている場合 健康保険被保険者証等の写し
(イ) 給与計算上、扶養手当等の対象となっている場合 給与簿または賃金台帳等の写し
(ウ) 同一の死亡について、他制度から遺族給付が行われている場合 他制度の遺族年金証書等の写し
(エ) 事実婚関係にある当事者間の挙式、披露宴等が1年以内に行われている場合 結婚式場等の証明書、または挙式・披露宴等の実施を証明する書類
(オ) 葬儀の喪主になっている場合 葬儀を主催したことを証明する書類(会葬御礼の写し等)
(カ) その他(ア)~(オ)のいずれにも該当しない場合 その他、内縁関係の事実を証明する以下の複数の書類
・連名の郵便物
・公共料金の領収書
・生命保険の保険証
・未納分の税の領収証
・賃貸借契約書の写し など

 
※日本年金機構 「⽣計同⼀関係証明書類等について」を基に筆者作成
 

まとめ

事実婚の関係にあった方でも、事実婚関係および生計同一関係の認定を受けることができれば遺族厚生年金を受け取れます。
 
事実婚を証明することができる書類を用意するとともに、申立書に事実婚の内容を詳細に記入して、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出しましょう。
 
出典
(※1)日本年金機構 遺族年金
(※2)日本年金機構 生計維持
(※3)日本年金機構 遺族年金ガイド 令和3年度版
(※4)e-Gov 法令検索 厚生年金保険法
(※5)日本年金機構 ⽣計同⼀関係証明書類等について
(※6)日本年金機構 事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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