更新日: 2021.03.19 その他年金
年金生活者支援給付金をもらえる人の条件とは
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
年金生活者支援給付金制度とは?
年金生活者支援給付金は、公的年金を含めても所得が低い方の生活を支援するために、基礎年金に上乗せして支給されます。この制度は、2019年10月に消費税が8%から10%に引き上げられたことに伴い、消費税率の引き上げ分を活用して導入されました(※1)。
年金生活者支援給付金には、老齢年金生活者支援給付金、障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金の3種類があります(※2)。
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各年金生活者支援給付金の給付要件は?
1.老齢年金生活者支援給付金
老齢年金生活者支援給付金は、以下の受給要件を全て満たしている方が対象です(※2)。
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者である
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税である
(3)前年の所得(注1)が87万9900円以下(注2)である
2.障害年金生活者支援給付金
障害年金生活者支援給付金は、以下の受給要件を全て満たしている方が対象です(※2)。障害厚生年金3級の方は対象となりません。
(1)障害基礎年金の受給者である
(2)前年の所得(注1)が462万1000円(注3)以下である
3.遺族年金生活者支援給付金
遺族年金生活者支援給付金は、以下の受給要件を全て満たしている方が対象です(※2)。遺族厚生年金のみを受給されている方は対象とはなりません。
(1)遺族基礎年金の受給者である
(2)前年の所得(注1)が462万1000円(注3)以下である
注1:前年の公的年金などの収入金額(障害年金、遺族年金などの非課税収入は含まれません)と、その他の所得(給与所得や利子所得など)との合計金額
注2:77万9900円超、87万9900円以下の方には補足的老齢年金生活者支援給付金を支給
注3:扶養親族などの数に応じて増額
各年金生活者支援給付金の給付額は?
1.老齢年金生活者支援給付金
老齢年金生活者支援給付金の給付額は、月額5030円を基準に保険料納付済期間(aヶ月)と保険料免除期間(bヶ月)ごとに算出されたAとBの合計額となります(※2)。
老齢年金生活者支援給付金額(月額)=A+B
保険料納付済期間に基づく額(A)=5030円×a/480月(注4)
保険料免除期間に基づく額(B)=1万856円(注5)×b/480月(注4)
注4:被保険者月数。昭和16年(1941年)4月1日以前に生まれた方は月数が減少
注5:保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間の場合。1/4免除期間は5428円
なお、前年の所得が77万9900円超、87万9900円以下の方には、保険料納付済期間に基づく額Aに調整支給率を掛けた補足的老齢年金生活者支援給付金が支給されます(※2)。
補足的老齢年金生活者支援給付金額(月額)=5030円×a/480月×調整支給率
調整支給率=(87万9900円-前年の所得)/10万円
2. 障害年金生活者支援給付金
障害年金生活者支援給付金の給付額は、障害等級により以下の金額となります(※2)。
障害等級2級:5030円(月額)
障害等級1級:6288円(月額)
3. 遺族年金生活者支援給付金
遺族年金者支援給付金の給付額は、5030円(月額)となります。ただし2人以上の子が遺族基礎年金を受給しているケースでは、5030円を子の数で割った金額がそれぞれに支給されます(※2)。
給付を受けるためには
年金生活者支援給付金を受給するためには、認定請求を行う必要があります(※1)。なお、受給要件の確認は市町村から提供される所得情報などにより行われますので、添付資料は必要ありません。
1. 既に年金を受給している方
2019年4月1日時点で老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給しており、年金生活者支援給付金の受給要件を満たしている方には、2019年9月頃に日本年金機構から給付金の請求に必要な書類が送付されています(※1)。
2019年度以降も所得の低下などにより、新たに年金生活者支援給付金を受給することができるようになった方には、10月頃に請求書(はがき形式)が送付されます(※3)。
2. これから年金を受給する方
新たに基礎年金を請求される方は、それぞれの年金の請求時に年金生活者支援給付金請求書を提出します(※3)。
3. 年金生活者支援給付金を受給中の方の手続き
年金生活者支援給付金は、毎年市町村から提供される受給者本人および世帯員の前年の所得情報に基づき、引き続き受給要件に該当するか確認(継続認定)しているため、2年目以降は受給者が手続する必要はありません。
継続認定の結果、支給金額が変更となる方には「年金生活者支援給付金 支給金額変更通知書」が送付され、10月の支払い(8月分、9月分)から変更後の給付金が支給されます。継続認定の結果、受給要件に該当しなかった方には「年金生活者支援給付金 不該当通知書」が送付されます(※4)。
まとめ
年金生活者支援給付金は、基礎年金に上乗せして給付金が支給される制度です。受給要件は市町村から提供される所得などの情報に基づき判定されますが、基礎年金を請求する際には年金請求に合わせて手続きを行います。また、既に基礎年金を受給している方で新たに受給要件に該当した方には請求書が届きますので、認定請求をしましょう。
出典
(※1)日本年金機構 年金生活者支援給付金制度について
(※2)厚生労働省 年金生活者支援給付金制度
(※3)日本年金機構 年金生活者支援給付金のお知らせ
(※4)日本年金機構 年金生活者支援給付金を受給されている方の令和2年10月以降のお支払いについて
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士