厚生年金保険料は年収によってどれだけ変わる?
配信日: 2021.05.07
そこで今回は、その中でも「厚生年金保険料」について、給料の金額の変更に伴いどのぐらい厚生年金保険料の金額が変わるのか、見ていきましょう。
執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
そもそも厚生年金保険料とは?
厚生年金保険とは、会社員の人が加入する保険です。この厚生年金保険に加入すると、定年退職後や、病気やけがで障害が残ったとき、家族の働き手が亡くなったときに、年金を受け取ることができます。
また、日本の年金は積立方式ではなく、賦課方式が採用されています。賦課方式とは、年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する方式です。つまり、現役世代から年金受給世代への仕送りに近いイメージです。
厚生年金保険には、以下の年金の種類があります。
●一定年齢に達したときの生活の支え(老齢年金)
●障がいをもったときの生活の支え(障害年金)
●大黒柱が亡くなったときの生活の支え(遺族年金)
この保険料は、自分が勤める会社と折半で国に支払っています。会社は、従業員全員からお金を集めるのが大変なので、支払う前の給料から天引きし、保険料を集め、その集めた金額と会社負担分をまとめて国に支払っています。
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厚生年金保険料の金額が決まるまで
厚生年金保険料は、毎月の給料などの金額から「標準報酬月額」を決定します。その上でその標準報酬月額に18.3%を乗じます。
そして、そのうちの半分が従業員負担分となります。なお、2017(平成29)年9月から厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。
【図表1:厚生年金保険料額表】
(出典)日本年金機構「厚生年金保険料額(令和2年9月分〜)」(※)
図表1の「厚生年金保険料額表」の通り、例えば給料の月額が9万3000円未満の人は、給料から差し引かれる厚生年金保険料は8052円です。その後は随時、給料の月額が上がるにつれ厚生年金保険料も上がり、63万5000円以上の人は一律の5万9475円となります。
年収別の厚生年金保険料の金額
先ほど述べたように、厚生年金保険料の大部分は、給料が増えると保険料の負担も増えます。料率(18.3%の半分の9.15%が従業員負担分)が分かっているので、年収別に厚生年金保険料を把握することも可能です。
つまり、年収に9.15%を乗じれば、自分が負担する金額はおおよそ把握できます。念のため、図表2にまとめておきました。
【図表2:年収別厚生年金保険料一覧】
(出典)筆者作成
図表2の一覧をご覧いただくと一目瞭然ですが、年収が増えるにつれ、保険料も増えています。ところが、年収が800万円を超えると厚生年金保険料の徴収が一律の5万9,457円となるので、年収に対する負担分が一定金額となります。この表はあくまでもおおよその把握です。参考にしてください。
なお、給料から差し引かれるのは、厚生年金保険料のほかに、「健康保険料」「雇用保険料」「源泉所得税」「住民税」があります。そのため、手取り額の予測はできないので注意してください。
給料明細を理解しましょう
新年度には昇給・降給といった給料の変更はつきものです。それに伴い厚生年金保険料も変更になります。ただし、厚生年金保険料の変更は、原則1年に1回の9月以降となります(定時改定)。そのため、9月以降の手取り額を予想することは可能です(厚生年金保険料以外に差し引かれるものも変更になります)。
厚生年金保険料のそもそもの意味や仕組み、計算方法を正しく理解していただきたいと思います。厚生年金保険料はあくまでも保険であり、積み立てているわけではありません。ご自身の給料明細を確認し、その点を誤解しないようにしましょう。
出典
※日本年金機構「厚生年金保険料額(令和2年9月分〜)」
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士