更新日: 2021.09.14 厚生年金

2022年に改正予定の「在職老齢年金」どのようなケースで年金を受け取れない?

執筆者 : 前田菜緒

2022年に改正予定の「在職老齢年金」どのようなケースで年金を受け取れない?
老後の年金は原則65歳から受け取れますが、男性の場合は昭和36年4月1日以前生まれなら、65歳より前に年金を受け取れることがあります。一方で、働いて給料をもらっていると年金がカットされることもあります。
 
この制度は2022年に変更される予定ですが、現在64歳の本間さん(仮名)は、この制度改正のタイミングと年齢が一致せず、結局、65歳まで年金を受け取れないことが分かりました。
 
どのようなケースに年金が受け取れないのか、年金カットの仕組みについて、本間さんを例にお伝えします。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

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年金がカットされる在職老齢年金

本間さんは、会社の雇用延長で現在、会社員として働いています。給料は月32万円。本間さんは、今年64歳ですが、63歳の時に支給される年金があることを知り、年金事務所に行きました。63歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取る権利が発生したのです。
 
しかし、年金事務所に行ったところ、なんと年金は全額カットと言われました。

これは、在職老齢年金制度によるものです。60代前半の場合、年金と給料の合計が28万円を超えると年金がカットされます。カットされる金額は、年金額や給料の金額によって異なりますが、本間さんの場合、年金と給料の合計が28万円を超えた半分の額がカットの対象です。
 
計算してみると、年金カットの金額は4万5000円でした。つまり、特別支給の老齢厚生年金から4万5000円を差し引いた金額が年金支給額となります。ところが、本間さんの場合、特別支給の老齢厚生年金が3万円しかなく、全額カットになってしまったのです。
 

特別支給の老齢厚生年金とは

特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金を受け取る年齢が60歳から65歳に引き上げられたことにより、受け取り年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度です。受け取れる年金額は、厚生年金加入期間や給料の額に、基本的に比例して増えます。
 
しかし、本間さんは今でこそ月32万円を稼いでいますが、会社員になったのは40代後半です。それまでは、派遣の仕事等で厚生年金には加入していませんでした。そのため特別支給の老齢厚生年金の金額が少ないのです。
 
一方、現在の給料は28万円を超えており、年金から、28万円を超えた分の給料と年金の合計額の半分を差し引く計算式にあてはめると、全額カットになってしまうのです。
 

在職老齢年金の改正

在職老齢年金は、60代前半と60代後半ではカットされる上限金額が異なります。60代前半の場合28万円がカットの基準額になっていますが、60代後半の場合は47万円です。
 
ただし、60代前半の28万円という上限額は、就業意欲に影響を与えるということで、改正されました。2022年からは60代後半と同じ47万円が基準額になります。47万円であれば、本間さんも上限額には引っかからないので、年金は全額支給となります。
 
改正を喜びたいところですが、本間さんは2022年には65歳になります。65歳は、そもそも基準額が47万円なので、改正は本間さんには関係ありません。
 
法改正自体は、時代にあったもので喜ばしいことですが、本間さんにとって改正のメリットはなく、従来どおり65歳まで年金カットが続くことになります。
 

自分の年金情報を早めに入手して働き方を考える

在職老齢年金は厚生年金に加入して働いている場合に適用されます。したがって、会社員としてではなく、独立して会社から業務委託を受ける形なら厚生年金に加入しないでしょうから、在職老齢年金は適用されません。
 
一方、会社員として厚生年金に加入することによって年金がカットされたとしても、厚生年金に加入した分、老後の年金を増やすことができます。本間さんは年金が全額カットとなってしまいましたが、厚生年金に加入していますから、その分厚生年金を増やすことができます。
 
したがって、年金がカットされるから給料を抑えたほうが良い、厚生年金に加入しない働き方のほうが良いとは、一概には言えません。また、自分にとってどんな働き方が良いかも、老後の暮らし方に大きく影響します。
 
だからこそ、早めに自分の年金情報を知り、働き方や老後の暮らしについて考える必要があるでしょう。
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ

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