更新日: 2022.09.08 その他年金

障害年金請求のつまずき(1)「初診日が分からない」

障害年金請求のつまずき(1)「初診日が分からない」
障害年金を請求しよう。そう思って準備を始めたものの、予想していなかった問題に直面して、作業が前に進まないことがあります。つまずいてしまったわけですね。
 
そんなとき、どうしたらよいのでしょうか。具体的に考えてみましょう。
 
第1回は「初診日が分からない」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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初診証明がスタートライン

障害年金の請求を考えて年金事務所へ相談に行くと、受診歴などを聞かれた後、白紙の受診状況等証明書を渡され、「まず、初診証明です。この証明書を初診の病院で作成してもらい、持ってきてください」と言われることがあります。
 
「そんなに請求手続きは手間がかかるのか」と驚かれるかもしれません。でも、そうなのです。この初診証明が障害年金請求のスタートラインとも言えるのです。
 
初診の年月日によって、保険料納付要件を満たしているかどうかが判断され、受給できる障害年金の種類が決まり、さらに、障害認定日が確定するからです。障害年金の請求には、どれも重要な要素です。
 

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早速つまずいてしまう人が少なくない

ところが、初診日が分からないために早速つまずいてしまう人が少なくありません。
 
理由は、次の3つが考えられます。

(1)受診歴がはっきりしない
(2)相当因果関係の有無が分からない
(3)社会的治癒が考えられる

それぞれ、対策を考えてみましょう。
 

何とかして受診歴を明らかにしたい

(1)受診歴がはっきりしない

初診時はまだ幼かった、取りあえず駆け込んだので病院名を忘れた、何ヶ所も受診したのでその順番がはっきりしない、当時のお薬手帳や受診券がない、など理由はさまざまでしょう。
 
しかし、ここを何とか乗り越えなければなりません。当時のメモ帳や日記帳や家計簿などを探す、固定電話や携帯電話などの電話帳を探す、親や兄弟が覚えていないか尋ねる、などが手始めにできることでしょうか。
 
それでもだめなら、さらに手を広げてみることです。健康保険組合に受診記録を問い合わせたり、救急車を使った場合は搬送記録を調べてもらう、受診したことがありそうな病院に電話をして受診記録を調べてもらう、などの方法です。電話を受けた方は手間がかかるばかりなので、この種の問い合わせは丁寧にお願いすることをお忘れなく。
 

頑張らなくてもよい場合もある

ところで、そんなに頑張らなくてもよい場合もあります。「20歳前障害」で請求する場合や初診日がいつであっても保険料納付要件を満たす人が障害基礎年金の事後重症請求をする場合です。
 
20歳前に初診日がある場合は、保険料の納付要件を問われないので、初診日がはっきりしなくても良いわけです。2番目以降のいずれかの病院の初診日が20歳前であれば、その病院の初診証明で構いません。通常は受診状況等証明書を作成してもらいますが、現在もその病院を受診している場合は、診断書にその旨記入してもらえば事足ります。
 
初診日がいつであっても保険料納付要件を満たしている場合は、初診日の証明ができなくても問題はありません。現在の病院で診断書を書いてもらい、極端にいえば、それ以前の病院すべてについて自身で「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成すればよいわけです。
 
ただし、これは障害基礎年金を事後重症請求する場合のことです。障害基礎年金の障害認定日請求をする場合や障害厚生年金、障害共済年金などを請求する場合は、いずれにしても初診日を証明するための資料が求められます。
 

厚生労働省発行のパンフレットを見てみよう

(2)相当因果関係の有無が分からない

発病から障害状態になるまでに傷病名が変わっている場合は、相当因果関係が問われます。
 
相当因果関係というのは、前の疾病や負傷がなかったなら、後の疾病は起こらなかっただろうと認められる関係です。この場合、前の疾病や負傷と後の疾病は一体とされ、前の疾病や負傷の初診日が後の疾病の初診日でもあるとみなされます。
 
相当因果関係と認められるかどうかは、厚生労働省発行のパンフレット等で「複数の傷病が同一と扱われることが多い具体例」「同一の傷病と間違えやすい傷病の具体例」として例示されています(*)。あくまでも例示ですので、ここに記載されてなくても相当因果関係を認められる場合があります。診断書を作成してもらう医師にご相談ください。
 

再発して受診した日が初診日になることも

(3)社会的治癒が考えられる

社会的治癒とは、医学的には完治していないけれども、治療の必要がなく、通常の社会生活を送ることができる状態をいいます。障害年金では、社会的治癒を経て再び症状が悪化して治療を再開したときを初診日とみなして請求することが可能です。
 
社会的治癒と認められるには、その再開までの一定期間が必要とされています。これまでの認定例でいえば、精神疾患の場合で一般に5年以上とされています。
 
障害年金の請求に際しては、社会的治癒があったことを何らかの方法で証明する必要があります。就労状況が分かる書類とか、健康状態がうかがわれるイベント参加記録など、幅広に探してみましょう。
 

専門家に手伝ってもらうのも一法

上記の(2)の相当因果関係と(3)の社会的治癒については、いざ活用しようとなると、制度の理解を深めておく必要があります。
 
年金事務所や社会保険労務士など専門家に手伝ってもらうのも一考でしょう。
 

出典

(*)厚生労働省 障害基礎年金お手続きガイド(2018年版)
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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