更新日: 2022.09.13 iDeCo(確定拠出年金)

DC法改正で運用期間・配分割合が変わる

執筆者 : 鈴木一成

DC法改正で運用期間・配分割合が変わる
別稿(※1)にて、ご自身の運用における配分割合を考えていらっしゃる方には「リスク許容度も一案です」とお伝えしました。すでに運用中の方は、現在の配分割合と比較していかがでしょうか。
 
ただし、以下の方は安定的な配分割合となっていたと思います。
◇「元本割れしたくない」「損をするのは絶対嫌」と答えた方
◇ 60歳までの運用期間が短い方
 
相談者の50歳代女性のAさんは、元本確保型商品8割・投資信託2割との方針を決められました。
その理由として、以下の2点が挙げています、
1)元本確保型資産を多く持つことで万が一の投資信託の損失をカバーできること
2)60歳までの期間が短いこと(運用期間が短い)
 
どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
鈴木一成

執筆者:鈴木一成(すずき かずなり)

1959年生まれ。一成FP社会保険労務士事務所代表。

社会保険労務士、AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCアドバイザー(DC協会)、企業年金管理士(企業年金連合会)、日本年金学会会員

企業勤務時代も含め20年以上にわたり公的年金を中心とした社会保険・DCをメインに、企業年金運営、ライフプランセミナー、年代別セミナー講師といった分野の業務に携わっています。企業・NPO法人等での講師経験も多数あります。

経験から得たものを付加価値として「顧客視点」でお伝えできます。「この人に出会えて良かった」と思っていただける仕事をします。

改正法の内容確認

ここで留意すべき点があります。すでに施行されている法改正の確認です。
 
2022年4月1日から「受給開始時期の選択肢の拡大」(※2)、5月1日から「企業型DC・iDeCoの加入可能年齢の拡大」(※3)が施行されています。「受給開始時期の選択肢の拡大」では従来の開始時期が、60歳~70歳であったものが60歳~75歳へと拡大されました。
 
「加入可能年齢の拡大」では、iDeCoの加入対象が、従来は60歳未満の国民年金被保険者でしたが、法改正により60歳未満が撤廃され60歳以降も国民年金第2号被保険者(厚生年金保険被保険者)・任意加入被保険者であればiDeCo加入が可能となりました。国民年金第2号被保険者も任意加入被保険者も65歳未満の方ですので、条件を満たせば65歳未満の方はiDeCoへの加入対象となります。
 
2つの法改正は、高齢のiDeCo加入者にとっては大きな方向転換も視野に入れるものとなりそうです。掛金拠出期間、運用期間とも5年延長となりました。
 

DC加入者期間・運用期間が長くなった

運用期間を長くすることが可能となりました。
 

iDeCoでは

1)60歳以降も国民年金第2号被保険者・任意加入被保険者であれば、iDeCo加入者のままでいることができます。つまり、掛金拠出を継続できるのです。
 
2)仮に65歳で加入者要件を喪失しても、75歳まで運用指図者として運用を続けることが可能となりました。

 
つまり、この2つの法改正は、上記2)の「残された運用期間」が長くなる=「安定運用に方向転換する時期があとずれしても良い」環境ができたこととなります。
 

DC資産の活用と運用方針

ただ、ここはライフプランと大きな関係にあるのではないかと筆者は考えます。DC資産の位置付けです。ご自身のセカンドライフ(定年後の生活)において大きな役割を果たすDC資産はどのように活用されるのでしょうか?
 
仮に「住宅ローン等の返済に充てる予定」であれば、資産を元本確保型商品にスイッチングし、市況悪化による資産目減りを回避する判断は重要です。ローン返済を解消する・減額させることは、定年後に給与収入減が考えられるなかでは非常に大きなポイントでもあります。DCに限らず退職金等の大きな資産の役割は別の機会にお伝えしようと思いますが、明確な使い道が決まっているなら、市況の影響を受けない運用方法に切り替える判断はとても重要です。
 

まとめ

「年金関連の法改正は選択肢が増えること」と筆者は考えています。ライフプランセミナーの講師を長年務めてきてもっとも感じるのは、「パターンでは語れない」ということです。
 
従来であれば「60歳定年」「失業給付受給」「公的年金受給」「退職金の切り崩し」といった基本形がありました。しかし、今は定年後も働くことで「公的年金の繰り下げを検討する」=「長寿リスクに備える」という選択肢はとても大きな意味をなすものとなっています。
 
DC法の改正も同様です。例えば、65歳まで厚生年金保険に加入して働くとなっても、60歳で企業型DCは受け取って、その後はiDeCoに加入する? しない? の選択も可能なわけです。もちろん、企業型DCの資産をiDeCoに移換することも可能です。
 
このように選択の時代に入ってきた今、自身の判断における正しい情報の収集と学びが必要となってきたといえます。
 

出典

(※1)ファイナンシャルフィールド 【DC→iDeCo】退職により企業型DCからiDeCoに移るとき、どんなことに注意すべき?
(※2)厚生労働省 2020年の制度改正/受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日施行)
(※3)厚生労働省 2020年の制度改正/企業型DC・iDeCoの加入可能年齢の拡大(2022年5月1日施行)
 
執筆者:鈴木一成
1959年生まれ。一成FP社会保険労務士事務所代表。
社会保険労務士、AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCアドバイザー(DC協会)、企業年金管理士(企業年金連合会)、日本年金学会会員

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