“内縁”の夫パートナーが亡くなった!「事実婚」でも遺族年金はもらえるの?
配信日: 2022.11.16
婚姻届を提出していないだけで法律婚の夫婦と同様、生活の基盤を共に築いている場合、カップルの片方が亡くなると生活が苦しくなることも考えられます。
婚姻関係にある場合、一定の要件を満たせば亡くなったパートナーの遺族年金を受け取ることができますが、事実婚でも「夫婦」とみなされパートナーの遺族年金を受け取ることはできるのでしょうか。ここでは事実婚の方が遺族年金を受け取る方法と、受け取るために必要なものについて詳しく解説します。
執筆者:渡辺あい(わたなべ あい)
ファイナンシャルプランナー2級
遺族年金とは
遺族年金には国民年金である「遺族基礎年金」と会社員や公務員などが加入する厚生年金の「遺族厚生年金」があります。これらは亡くなった方の年金の加入状況などによって、一方または両方の年金が支給されます。
このうち遺族基礎年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることのできる年金です。一方、遺族厚生年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた「遺族」が受け取ることができます。いずれの年金もそれぞれ受給要件を満たしていることが必要となります。
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事実婚でも遺族年金は受け取れるのか
国民年金法5条7項、厚生年金保険法3条2項には、「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」との記載があります。つまり、年金法においては事実婚でも配偶者と同じ扱いを受けられるということになります。
生計を維持するのが夫のケースで考えてみましょう。亡くなった夫が会社員あるいは公務員の場合、事実婚の妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。また夫が自営業で夫婦の間に未成年の子あるいは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子がいる場合は遺族基礎年金を受け取ることができるのです。
ただし、いずれの場合も亡くなった夫によって生計が維持されていることが受け取りの条件となります。
事実婚だと証明する方法
法律婚の場合は戸籍謄本によって亡くなった方との続柄を証明することができます。しかし、事実婚の場合は戸籍謄本のように法的に夫婦関係を証明する書類がないため、それに代わる書類によって生計を共にしていたことを証明しなければなりません。
日本年金機構によると、事実婚の方が生計を同一にしているとの認定を受けるには、生計を同一にしていたことを証明する書類を準備したうえで、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」を添付する必要があります。
事実婚関係・生計同一関係の証明書類には図表1のものがあります。
ケース | 必要書類 |
---|---|
健康保険等の被扶養者になっている場合 | 健康保険被保険者証等の写し |
給与計算上、扶養手当等の対象になっている場合 | 給与簿または賃金台帳等の写し |
同一人の死亡について、他制度から遺族給付がおこなわれている場合 | 他制度の遺族年金証書の写し |
事実婚関係にある当事者間の挙式、披露宴等が1年以内におこなわれている場合 | 結婚式場等の証明書または挙式・披露宴等の実施を証する書類 |
葬儀の喪主になっている場合 | 葬儀を主催したことを証する書類(会葬御礼の写し等) |
上記のいずれにも該当しない | その他内縁関係の事実を証する書類 ・連名の郵便物 ・公共料金の領収書 ・生命保険の保険証 ・未納分の税の領収書 ・賃貸借契約書の写し など複数点 |
出典:日本年金機構 「生計同一関係証明書類等について」より筆者作成
事実婚でも遺族年金を請求できる
遺族年金は残された家族の生活を支えてくれる大切なものです。遺族年金の対象は法律婚のみでなく、事実婚にも適用されるというのはとても心強いですね。
ただし、事実婚は証明書の提出など、法律婚よりも手続きが煩雑になることがあります。事実婚のカップルはお互いが元気なうちに、万が一に備え遺族年金請求に必要な書類等を一度確認しておくとより安心できるでしょう。
出典
日本年金機構 遺族年金
法令検索e-GOV 国民年金法
法令検索e-GOV 厚生年金保険法
日本年金機構 ⽣計同⼀関係証明書類等について
日本年金機構 事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級