更新日: 2022.11.25 国民年金

「年収600万円」と「年収1000万円」、学生の子どもの国民年金保険料を親が支払ったらどのくらい節税できる?

執筆者 : 中村将士

「年収600万円」と「年収1000万円」、学生の子どもの国民年金保険料を親が支払ったらどのくらい節税できる?
学生の子どもの国民年金保険料を親が支払った場合、社会保険料控除として、その金額を親の所得から引くことができます。つまり、節税効果があるといえます。
 
それでは、もしも年収600万円の人と年収1000万円の人が、それぞれ子どもの国民年金保険料を支払ったら、どれくらい節税できるのでしょう。本記事では、実際に試算し、節税できる金額について解説します。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

節税効果を計測するポイント

所得税は、以下の手順で計算します。なお、ここでは話を単純にするために、収入は給与のみと仮定します。
 

(1)総支給額の計算
(2)給与所得控除
(3)所得控除
(4)課税所得金額の計算
(5)所得税額の計算
(6)税額控除
(7)納付税額の計算

 
子どもの国民年金保険料を支払った場合の節税効果は、(5)の所得税額の計算を行う段階で表れます。ポイントは、「課税所得金額」と「所得税率」です。所得税額は、(4)の課税所得金額に所得税率を乗じて算出するからです。
 
子どもの国民年金保険料を支払った場合、その金額は全額「社会保険料控除」として所得から控除することができます。上の手順でいえば(3)に該当します。子どもの国民年金保険料を支払うということは、この所得控除額が大きくなるということです。所得控除額が大きくなれば、(4)の課税所得金額が少なくなります。課税所得金額が少なくなれば、算出される所得税額も少なくなります。
 
所得税率は、日本では「超過累進税率」が採用されており、課税所得が高い人ほど高い税率が適用されるようになっています(2022年時点では、所得税率は5%から45%の7段階に区分)。税率が高い方が、節税を行ったとき、その効果は大きくなります。
 
例えば、所得税率が10%の場合と20%の場合を比較してみます。節税対策を行い、課税所得金額を100万円下げることができたとします。このとき、所得税率が10%の場合は10万円の、所得税率が20%の場合は20万円の節税になったといえるのです。
 

年収600万円の場合の節税効果は約2万円

以上を踏まえ、学生の子どもの国民年金保険料を親が支払ったらどのくらい節税できるのか、年収600万円の場合と年収1000万円の場合で試算してみます。節税効果は、以下の計算式により算出します。
 
節税金額=課税所得金額の減少分×所得税率
 
ここでいう「課税所得金額の減少分」とは、子どもの代わりに支払った国民年金保険料を指します。国民年金保険料は1ヶ月当たり1万6590円です(令和4年度)。1年分の国民年金保険料を支払った場合、課税所得金額の減少分は19万9080円となります。
 
次に、所得税率を求めます。所得税率を求めるには、まず、課税所得金額を求める必要があります。課税所得金額を求めるにあたり、前章の(1)から(4)までの流れを踏襲します。すると、図表1のようになります。
 
図表1

(1)総支給額 600万円 1000万円
(2)給与所得控除 164万円(=600万円×20%+44万円) 195万円
(3)所得控除 163万円(※) 203万円(※)
(4)課税所得金額 273万円
(=600万円-164万円-163万円)
602万円
(=1000万円-195万円-203万円)

筆者作成
※(3)所得控除額は、社会保険料控除(年収×10%)、生命保険料控除(12万円)、地震保険料控除(5万円)、配偶者控除38万円、基礎控除48万円を合計して算出しています。
 
以上の計算から、課税所得金額は、年収600万円の場合は273万円、年収1000万円の場合は602万円となりました。ここから、適用される所得税率を調べると、年収600万円の場合は10%、年収1000万円の場合は20%ということが分かります。
 
最後に、節税金額を求めます。上記の所得税に加え、住民税(一律10%)を考慮すると、年収600万円の場合は3万9816円[=19万9080円×(10%+10%)]、年収1000万円の場合は5万9724円[=19万9080円×(20%+10%)]となります。つまり、節税効果としては、年収1000万円の場合の方が大きいといえそうです。
 

まとめ

本記事では、学生の子どもの国民年金保険料を親が支払った場合、どのくらい節税効果があるのかについて、解説しました。実際に、年収600万円の場合と年収1000万円の場合、いくらの節税になるのかについて、試算もしてみました。年収600万円の場合は約2万円、年収1000万円の場合は約4万円の節税になるという結果が出ました。
 
所得税額をどのように計算するのかについても解説しました。この計算過程を理解することは、節税対策を考える上でとても重要です。本記事では、節税対策を行った場合と行わなかった場合の所得税額を全て算出したわけではありません。課税所得金額と所得税率を出し、そこから節税金額を算出しました。
 
「節税になる」といわれると、なんだか得するような気分になります。しかし、実際に資産をしてみると、その効果が大きいのか小さいのかが分かります。節税をするのであれば、どれくらいの効果が見込めるのか、それが本当に良い選択なのかをしっかりと見極めたいものです。
 

出典

国税庁 No.1000 所得税のしくみ
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1199 基礎控除
日本年金機構 国民年金保険料
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
 

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