更新日: 2022.11.30 国民年金

国民年金の「追納」と「任意加入」はどちらがお得? 60歳に検討すべき「年金増額法」

国民年金の「追納」と「任意加入」はどちらがお得? 60歳に検討すべき「年金増額法」
老後に備えて、将来的に受け取ることのできる年金の総額はできるだけ増やしたいものです。
 
日本年金機構のホームページには、年金額を増やすために「保険料の後払い(追納)をお勧めします! 」との案内が記載されていますが、実は、追納するより任意加入したほうがお得なケースがあることをご存じですか?
 
この記事では、国民年金の追納と任意加入について解説し、どちらが自分にとってお得かを見きわめる基本的な考え方を紹介します。60歳まで国民年金に加入し、払い込みが終わったときのために、ぜひ参考にしてみてください。
西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

国民年金の追納とは

国民年金の追納とは、国民年金保険料の支払いが困難などの理由で、「免除」や「納付猶予」を受けた保険料を、後から支払う制度です。年金事務所で追納の手続きをして保険料を払い込むと、将来受け取る老齢基礎年金の金額がアップします。
 
老齢基礎年金額は、20歳から60歳までの40年間保険料を支払って満額(2022年度は77万7800円、毎年改定)となります。しかし、保険料の未納だけでなく、免除や納付猶予を受けた場合は、満額の年金を受け取ることができません。
 
追納ができるのは、追納が承認された月(原則年金事務所で追納の手続きをした月)の前月から10年以内の期間です。この期間を過ぎた分は追納できなくなるので注意しましょう。
 

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国民年金の任意加入とは

国民年金の「任意加入」とは、60歳以降も任意で国民年金に加入できる制度です。60歳までは強制加入のため加入が義務付けられていますが、60歳以降は希望者が加入の申し出をして、保険料を納付します。
 
老齢基礎年金額は保険料の納付月数に応じて計算されるため、任意加入によって年金額を増額できます。ただし、任意加入できるのは、20歳から60歳まで間に「未加入の期間」や「保険料の未納期間」がある人に限られます。また、厚生年金に加入している人は任意加入できません。
 

国民年金の追納と任意加入はどちらがお得?

追納も任意加入も保険料を納付することに変わりありませんが、追納するより任意加入したほうがお得なケースもあります。ここでは老齢基礎年金の計算方法と、どのようなケースで任意加入したほうがお得になるかについて解説します。
 

老齢基礎年金の計算方法

老齢基礎年金の計算方法は、次の通りです。
 
・老齢基礎年金額=77万7800円(2022年度)×保険料納付月数÷480ヶ月(40年)
 
保険料納付が240ヶ月(20年)の場合、老齢基礎年金額は38万8900円です。追納や任意加入を選択すると、納付月数が増えるため年金額がアップします。
 
1ヶ月分の保険料(2022年度は1万6590円)納付によって年金額は約1620円(=77万7800円÷480ヶ月)増加するため、65歳から10年と数ヶ月年金を受給すると元が取れる計算になります。
 

任意加入したほうがお得なケース

追納するより任意加入したほうがお得になるのは、保険料を免除(免除額は全額や3/4、半額、1/4の4種類)された期間があるケースです。
 
保険料納付によって増額する年金額は、追納と任意加入では異なります。任意加入の場合、1ヶ月分の保険料納付によって年金額は約1620円増加します。
 
一方、免除された月の保険料を追納した場合、最大でもその半分しか年金額が増加しません。免除された月は、保険料を納付しなくても「1/2ヶ月」納付したものとして年金額を計算するためです。つまり、追納する前から、免除月は年金額に反映されているのです。
 
例えば、全額免除された月の年金額は、保険料1ヶ月当たり約810円です。保険料を追納した場合、年金額は約810円増加して約1620円になります。
 
ただし、納付猶予された月や学生納付特例が適用された月については、もともと年金額に反映されていないため、追納した場合、保険料1ヶ月分を納付すると年金額は約1620円増加します。
 

保険料を免除された月を追納するより任意加入がお得

老後の生活を豊かにするためにはさまざまな方法が考えられますが、保険料の納付額を増やすのであれば、追納よりも任意加入を選択したほうがお得になる可能性があります。
 
本記事で紹介したポイントを踏まえ、将来的に受け取れる年金の総額をアップさせる効率的な方法を賢く選び取るように心がけましょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 任意加入制度
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級

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