更新日: 2022.12.06 iDeCo(確定拠出年金)

「受け取る」目線で比べるiDeCo(イデコ)とつみたてNISA

執筆者 : 大泉稔

「受け取る」目線で比べるiDeCo(イデコ)とつみたてNISA
拠出する掛金が「全額所得控除」の対象となるiDeCo(以下、イデコ)と、配当や利益などが「全額非課税」になるつみたてNISA。どちらを選べばよいのでしょうか?
 
もちろん、どちらも行うという選択肢もありますが、どちらか一方に絞って行う場合、何を目安にして比べたらよいのでしょうか?
 
本稿では、イデコとつみたてNISAを将来の「受け取る」目線で比較してみます。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

イデコを受け取る

イデコを受け取ることができるのは60歳以後です。60歳前でも、要件に該当すれば脱退一時金という方法もありますが、例外的な措置でもあるのでここでは省略します。
 
イデコの受け取りは、一括で受け取る「一時金受け取り」と、何年かに分けて受け取る「年金形式」とがあります。
 
なお、イデコを受け取る場合には、給付事務手数料という費用を負担しなくてはなりませんので、その分、手取額が減ることにもなります。
 

<一時金で受け取る>

一時金で受け取る場合には、退職所得として課税の対象となります。退職所得は、退職金から退職所得控除を適用した後の数字を2で割ることで算出ができます。退職所得は分離課税ですから、他の所得と合算することはありませんし、老後の国民健康保険料等への影響もありません。
 
なお、退職所得控除の額は勤続年数に比例しますが、イデコの場合は掛金を拠出していた期間が勤続年数に当たります。つまり、50歳代で加入し、大きな利益を挙げた等の理由で60歳でイデコを一時金で受け取ってしまうと、退職所得控除の額が少なくなる可能性があります。
 

<年金で受け取る>

イデコを何年かに分ける、いわば年金形式で受け取る場合、公的年金等控除が利用できます。
 
毎年の受取額から公的年金等控除を差し引いた後の数字が、プラスなら雑所得として課税対象になります。雑所得は給与所得や不動産所得等と合算して所得を申告します。そのため、老後の国民健康保険料や介護保険料等の保険料額や自己負担の割合(1割~3割)等に影響する可能性もあります。
 

つみたてNISAを受け取る

つみたてNISAは、いつでも解約できます。しかしイデコとは異なり、年金形式で受け取ることはできません。一度に全額を解約するか、少しずつ解約するかなどの対応になります。
 
利益は非課税で確定申告等の手続きも不要ですので、いくら利益をあげても税金はもちろん、国民健康保険や介護保険の保険料や自己負担割合に影響することもありません。また、イデコと異なり、受け取りに伴った給付事務手数料等の費用を負担することもありません。
 

まとめに代えて

拠出する掛金が「全額所得控除」になるイデコは、特に節税の機会が少ない会社員の方には魅力的に映るでしょう。しかし、老後の生活資金という目的としてイデコを行う場合は、受取時の課税や手数料等に留意してください。
 
イデコは60歳になるまで解約できませんし、掛金の拠出を止めることもできません。それだけに、老後資金作りという目的に特化しているともいえますが、途中解約ができないことは注意点の1つです。
 
その点、つみたてNISAは投資した資金が非課税になることはありませんが、制度上年齢の縛りはありませんし、いつでも解約できる自由もあります。ご自身はもちろん、家族のライフプランニングも踏まえて検討すると良いでしょう。
 

出典

金融庁 つみたてNISA
iDeCO公式サイト
厚生労働省 2020年に制度改正
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

ライターさん募集