更新日: 2023.03.14 国民年金
大学生の子どもがいます。アルバイトでは年金を払うのが厳しいと言うのですが、親が支払った方がいいですか?
しかし、勉強が忙しくてアルバイトに時間を割けないなどの理由で、本人の収入だけでは支払いが難しいということもあるでしょう。そんな子どものために、親としては保険料をかわりに支払ってあげたいと考えるかもしれません。
本記事では親が保険料の支払いを肩代わりした場合のメリットについて解説します。
執筆者:渡辺あい(わたなべ あい)
ファイナンシャルプランナー2級
親が代わりに保険料を払うと節税できる
令和4年度の年金の保険料は毎月1万6590円(年間19万9080円)です。実は子どもの保険料であっても親が代わりに支払った場合、所得控除を受けることができます。
住民税率は10%で全国一律となっていますが、所得税の税率は都道府県や収入によって異なります。親の所得税率を20%とした場合、これらをもとに計算すると、控除額は以下のとおりとなります。
19万9080円×(10%+20%)=5万9724円
つまり、年間で約6万円の節税となるのです(※実際の控除額は状況によって異なります)。
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控除の条件
年金の保険料を控除するためにはいくつか条件があります。主な条件は次の2点です。
・生計を同一にしていること
・親名義で保険料を支払うこと
・確定申告をすること
ここでいう「生計を同一にしていること」は、必ずしも同居である必要はありません。離れて暮らしていたとしても、仕送りをするなど生活費の出どころが同じであれば、「生計を同一にしている」と判断されます。
また、控除は保険料を支払った本人に対して行われます。親の所得税を控除したい場合は、子どもの年金保険料であっても、親の名義つまり親が払っていることが証明できるように、親名義の口座やクレジットカードを使用する必要があります。
さらに、控除を受けるには、年金事務所から送付される国民年金保険料の控除証明書を提出し、確定申告をする必要があります。忘れると控除が受けられなくなってしまうため、しっかり手続きを行ないましょう。
猶予制度を利用した場合
経済的に余裕のない学生を支援する「学生納付特例制度」という猶予制度があります。ただし、猶予されたまま納めずにいると将来の年金額が減ってしまいます。追納には10年という期限があり、奨学金の返済があれば支払う余裕がないことも考えられます。
学生納付特例制度を2年間利用し、未納となった場合を考えてみましょう。
2022年度の老齢基礎年金の満額は年間77万7792円です(2023年2月時点)。学生納付特例制度で2年間(24ヶ月)猶予した場合、年金の受取額は以下のとおりです。
77万7792円×(480-24ヶ月)÷480=73万8902円
(※実際の受取額は状況によって異なります)
つまり、保険料を2年間納めなかった場合は年間3万8890円の差が生まれることになります。先述した節税効果や、将来の年金額の減少を踏まえれば、猶予制度を利用するよりも可能な範囲で親が肩代わりする方がメリットが大きいといえそうです。
将来のためにも保険料を納めよう
将来のために年金の保険料をしっかりと納めることは大切ですが、経済状況によっては支払いが難しい場合もあるでしょう。そんなときは、無理のない範囲で家族間での助け合いができるといいですね。
親が支払ってくれた場合は、子どもが就職して少しずつ返済したり、控除分を除いた実質分のみ返済したりすれば、子どもにとっても負担が少なくなるはずです。制度をしっかり理解して、自分たちに最も合っていると思う方法で保険料を納付するようにしましょう。
出典
国税庁 No.1130 社会保険料控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
日本年金機構 国民年金保険料
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級