更新日: 2023.04.13 その他年金

専業主婦で子ども1人。生命保険なしの「夫」にもしものことがあった場合いくら受け取れる?

執筆者 : 辻本剛士

専業主婦で子ども1人。生命保険なしの「夫」にもしものことがあった場合いくら受け取れる?
一家の大黒柱にもしものことがあったら、今後の生活はどうなるのか不安に思うこともあるでしょう。特に、夫が生命保険に加入していなければいっそう心配になります。本記事では、会社員の夫が亡くなった場合に遺族が受け取れるお金について、モデルケースを交えて解説します。
辻本剛士

執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

活動拠点は神戸。FP個別相談や、プロスポーツ選手の資産形成サポートも行っております。プロスポーツ選手に保険、資産運用、支出の見直しなど包括的なアドバイスや、帳簿などの面倒な記帳業務を代行し、本業に集中できる環境作りをサポートします。

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会社員の夫が亡くなった場合に受け取れるお金

会社員の夫が亡くなった場合、受け取れるお金は主に次の5つです。
 

埋葬料

会社員が業務外で亡くなった場合に、5万円が「埋葬料」として遺族に支給されます。埋葬料を受け取るには健康保険組合、または協会けんぽで手続きが必要です
 

死亡退職金

「死亡退職金」とは、亡くなった夫が本来受け取るはずだった退職金を、相続人が代わりに受け取れる退職金です。ただし、死亡退職金制度はすべての企業が採用している訳ではないため、必ず受け取れるとは限りません。
 
死亡退職金は相続税の課税対象となり、非課税限度額を超えると相続税が発生します。非課税限度額の計算式は次のとおりです。
 
500万円×法定相続人数
 
仮に、法定相続人が妻・子ども1人の計2人である場合、1000万円までは非課税になります。もし、死亡退職金が1200万円であれば、1000万円を控除した200万円が相続税の課税対象です。
 

遺族基礎年金

「遺族基礎年金」は、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合に、18歳未満の子どもがいる配偶者や子どもが受け取れる年金制度です。そのため、子どもがいない場合は受け取れません。
 
遺族基礎年金の受給額は、子の人数によって異なります。2023年度の遺族基礎年金の受給額は、一律で79万5000円です。そして、子どもが1人増えるごとに遺族年金が加算されます。子どもが複数いる妻が遺族の場合の、遺族基礎年金額は以下のとおりです。
 

基本額 79万5000円
子ども1人目 22万8700円
子ども2人目 22万8700円
子ども3人目以降 各7万6200円

 
例えば、夫が亡くなり18歳未満の子どもが2人いる妻の場合は、基本額79万5000円に子ども1人目22万8700円、2人目22万8700円が加算され、合計125万2400円を受け取れます。
 

遺族厚生年金

厚生年金に加入している会社員や公務員などは、遺族基礎年金に加えて「遺族厚生年金」も受け取れます。また遺族基礎年金とは異なり、遺族厚生年金は子どもがいない遺族でも受け取れる年金です。
 
遺族厚生年金の受給額については、2003年4月以前と以降で2つの計算式があります。次項で解説する遺族厚生年金の受取額は、42歳会社員の設定でシミュレーションをするため、今回は2003年4月以降の加入月数で解説していきます。遺族厚生年金の計算式は次の通りです。
 

(1)加入月数が300ヶ月未満の場合
平均標準報酬額×5.481/1000×300×3/4
 
(2)加入月数が300ヶ月以上の場合
平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数×3/4

 

中高齢寡婦加算

夫が亡くなったときに妻の年齢が40歳以上65歳未満で、夫が20年以上厚生年金に加入していた場合は、寡婦加算として妻は59万6300円(年額)が受け取れます。期間は40歳から65歳になるまでです。また、遺族基礎年金と重なっている期間は中高齢寡婦加算は受け取れません。
 
例えば、夫が亡くなった時に妻が45歳、子どもが15歳の場合なら、子どもが18歳になり遺族基礎年金が停止されたタイミングで中高齢寡婦加算の受け取りが開始されます。
 

45歳会社員の夫が亡くなった場合、専業主婦の妻はいくら年金を受け取れる?

ここまで、会社員の夫が亡くなった際に受け取れるお金について解説しました。埋葬料は5万円で1回限り、死亡退職金は義務ではないため必ずもらえるお金ではありません。ここからは、毎月受け取れる遺族年金に焦点をあてて解説します。次のモデルケースで、専業主婦の妻がいくら遺族年金を受け取れるかを見ていきましょう。
 

モデルケース

夫42歳:会社員
妻42歳:専業主婦
子ども:15歳
平均標準報酬額:50万円
勤務期間:20年(240ヶ月)

 
「遺族基礎年金」
18歳未満の子どもがいるため、遺族基礎年金として79万5000円と、子ども1人22万8700円の合計「102万3700円」が受け取れます。
 
「遺族厚生年金」
前述で解説した遺族厚生年金の計算式にあてはめていきます。
 
夫の加入月数は240ヶ月と300ヶ月未満なので、次の計算式になります。
 

平均標準報酬額×5.481/1000×300×3/4
50万円×5.481/1000×300×3/4=61万6600円(100円未満は切り捨て)

 
よって、遺族厚生年金の支給額は61万6600円になります。
 
「中高齢寡婦加算」
夫は厚生年金に20年以上加入していたため、中高齢寡婦加算を受け取れます。子どもが15歳であることから、妻は子どもが18歳を迎える45歳から59万6300円が支給されます。
 
妻が受け取れるお金の合計は次のとおりです。
 

【妻42歳から45歳まで】
102万3700円(遺族基礎年金)と61万6600円(遺族厚生年金)で合計164万300円
 
【妻45歳から65歳まで】
61万6400円(遺族厚生年金)と59万6300円(中高齢の寡婦加算)で合計121万2700円

 

不足分を把握して対策を考えましょう

生命保険をかけていない会社員の夫が亡くなった場合でも、「埋葬料」「死亡退職金」「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」「中高齢の寡婦加算」を受け取れることがわかりました。
 
紹介したモデルケースでは、妻は42歳から45歳までは164万300円(月額約13万6700円)、45歳から65歳までは121万2700円(月額約10万1000円)を毎年受け取れます。 毎月受け取る金額が分かれば、対応策も見えてくるでしょう。
 
仮に、毎月25万円で生活していた家族の場合、25万円-13万6700円で毎月11万3300円が不足する計算です。この不足分を補う対策としては、生命保険に加入しておくことや、普段から貯蓄をしておくことなどが挙げられます。 将来に備えるためにも、どのような対策が自分たちに必要なのかこの機会に話し合ってみてください。
 

出典

全国健康保険協会 ご本人・ご家族が亡くなったとき

国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

 
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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