更新日: 2023.04.26 その他年金

年金を一括で「1000万円」受け取れる? 65歳以降も受け取っていないと一括受給できる場合もあるって本当?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

年金を一括で「1000万円」受け取れる? 65歳以降も受け取っていないと一括受給できる場合もあるって本当?
年金は原則として65歳から生涯受け取れますが、その時点では受け取らずに、66~75歳まで受給開始を遅らせることが可能です。
 
受給開始を遅らせることを「繰下げ受給」と言いますが、繰下げ受給で年金を受け取るのを待っている間に、まとまったお金が必要となる場合もあります。そんな時には、繰り下げている間の年金を一括で受け取ることが可能です。本記事では年金繰り下げ中においての一括受給について解説しています。
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年金の繰下げ受給とは

年金は65歳から受け取ることが基本ですが、繰下げ受給をすると、1ヶ月受給を遅らせるたびに本来受け取る年金額に0.7%の増額率が適用されます。
 
66歳0ヶ月であれば0.7%×12ヶ月で8.4%、70歳であれば0.7%×60ヶ月で42.0%の増額率となります。
 

一括受給とは

年金を繰り下げている間でも、家のリフォームや子どもへの援助、介護費用などでまとまったお金が必要となることもあるでしょう。そのような時は、5年前までさかのぼり、それまでの年金額を一括受給できます。ただし、一括受給した場合には、それまで待っていた分の増額分は反映されません。
 

2023年4月から70歳以降の一括受給が有利に!

これまでは繰り下げている間の分を一括受給した際には増額分が反映されませんでしたが、2023年4月からは老齢年金の繰下げ制度の一部が変更されています。
 
変更により、70歳の誕生日から80歳の誕生日の前々日までに一括受給を請求すると、請求の5年前の日時点で繰下げ受給の申し出があったとみなされ、増額された年金を一括で受給できるようになりました。
 

一括受給の金額を試算

それでは具体的な例として、73歳0ヶ月で過去の年金を一括受給した場合の制度改正による違いを見てみましょう。基準とする65歳での年金額は、厚生労働省が公表している平均的な収入の会社員が受け取る年金額である、月額15万8232円の12ヶ月分で189万8784円とします。
 

【制度改正前】

受け取れる年金額は189万8784円の5年分ですので、949万3920円です。また、一括受給した後に月額でもらえる年金額も、繰下げ受給の増額率は適用されず、15万8232円となります。
 

【制度改正後】

受け取れる年金額は73歳0ヶ月の5年前である68歳0ヶ月時点で申し出があったとみなされるため、0.7%×36ヶ月で増額率25.2%が適用されます。そのため、一括で受け取れる年金額は次のとおりです。
 
189万8784円×125.2%×5年=1188万6388円となります。また、一括受給した後に月額でもらえる年金額も68歳0ヶ月時点の増額率が適用されるため、19万8106円となります。
 

一括受給の注意点

まとまったお金が手に入る一括受給ですが、注意点も見ておきましょう。まずは、税金です。年金を今回のように5年分一括受給した場合は、5年分について過去にさかのぼり、所得税の修正申告をしなければなりません。そして、その場合には数千円程度ですが延滞税が課せられます。
 
また、一括受給はあくまでも本来毎月受け取れたはずの年金を一括で受け取っているだけであり、お得というわけではありません。むしろ、今回の例では73歳まで繰下げ受給を待機し、一括ではなくその時点で毎月受け取る選択をすると、毎月受け取る年金の増額率は67.2%です。
 
一括受給すると68歳までの増額率で19万8106円だった年金額も、一括受給せずに受け取ると、73歳の増額率で26万4564円となります。
 

一括受給は慎重に検討しよう

以前よりも有利になっていることもあり、急にお金が必要となった際には、一括受給は検討したい手段です。
 
とはいえ、税金面や今後の年金額を考慮すると、他の手段でお金を工面したほうが良い場合もあるかもしれません。一括受給を選択する前にどちらが自身に有利かを慎重に検討しましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給

厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします

日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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