更新日: 2023.07.11 その他年金

障害年金を受給中の妻がいる場合、配偶者加給はどのようになるのか?

執筆者 : 鈴木一成

障害年金を受給中の妻がいる場合、配偶者加給はどのようになるのか?
公的年金は「一人一年金の原則」があり、特例を除き2種類以上の年金を同時に受給(併給)できません。その際はいずれかの年金を選択することになります。
 
今回は、配偶者加給の支給要件を満たした方に障害年金を受給中の配偶者がいるケースを取り上げます。
鈴木一成

執筆者:鈴木一成(すずき かずなり)

1959年生まれ。一成FP社会保険労務士事務所代表。

社会保険労務士、AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCアドバイザー(DC協会)、企業年金管理士(企業年金連合会)、日本年金学会会員

企業勤務時代も含め20年以上にわたり公的年金を中心とした社会保険・DCをメインに、企業年金運営、ライフプランセミナー、年代別セミナー講師といった分野の業務に携わっています。企業・NPO法人等での講師経験も多数あります。

経験から得たものを付加価値として「顧客視点」でお伝えできます。「この人に出会えて良かった」と思っていただける仕事をします。

配偶者加給とは

配偶者加給とは、以下の要件を満たすことで受け取ることができます。

<加給年金の支給要件>

1. 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある

2. 65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その人に生計を維持されている配偶者または子がいるとき

また、配偶者加給は以下の要件にあてはまると支給が停止されます。

<配偶者加給の支給停止要件>

1. 配偶者が老齢厚生年金(被保険者として20年以上の期間もしくは共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳[女性の場合は35歳]以降15年以上の場合に限る)を受け取る権利があるとき

2. 配偶者が退職共済年金(組合員期間20年以上)を受け取る権利があるとき

3. 配偶者が障害年金を受けられる間

配偶者加給の例を見てみましょう

では、配偶者加給の仕組みを、Aさんご夫婦の例を見ながら確認してみましょう。
 

【Aさんご夫妻の場合】


夫Aさん

・昭和32年1月生まれ
・40年間厚生年金保険加入
 
・老齢年金額<62歳から特別支給の老齢厚生年金受給>
報酬比例部分:120万円
老齢基礎年金:78万円
 
妻Bさん
・昭和35年2月生まれ
・国民年金:23年加入(未納:2年)
・厚生年金:18年加入
 
・老齢年金額<64歳から特別支給の老齢厚生年金受給>
報酬比例部分:36万円
定額部分:30万円
老齢基礎年金:74万円

※)60歳前から障害基礎年金2級を受給中:78万円

妻Bさんが障害基礎年金(障害等級2級)を受給中の場合、配偶者加給の受給方法にどのような選択肢があるのでしょうか?ここで、Aさんご夫妻の年金受給額を表で確認してみましょう。
 


 
ポイントは夫が65歳になった時点で妻が障害基礎年金受給を選択するか? 否か? という点です。
 
前述の<配偶者加給の支給停止要件>をもう一度ご確認ください。3.障害年金を受けられる間とあります。つまり配偶者が障害年金を受給している期間、配偶者加給は支給停止されてしまいます。
 
夫が65歳になった時点で(夫:老齢厚生年と老齢基礎年金受給)


(1) 妻が障害年金から特別支給の老齢厚生年金に選択変更した場合は、夫に配偶者加給が付き、妻は特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分と定額部分)を受給する。妻の生年月日では特別支給の老齢厚生年金は報酬比例部分のみであるが、「障害者特例」により定額部分も支給されることとなる。

妻が65歳になった時点で


(1) 夫への配偶者加給は終了となる。
(2) 妻は1階部分では額の多い障害基礎年金、2階部分は自身の老齢厚生年金を受給する。

節目の年齢で受給する年金の選択を変更することで、年金額に大きく影響することが分かります。

まとめ

今回のケースは、配偶者加給を受給することのメリットを享受するため、受給する年金の選択を申し出た場合の試算です。
 
また、特例である「障害基礎年金+老齢厚生年金」を選択することで、年金額の多い組み合わせとなります。2つ以上の年金受給権を得た際には、ぜひお近くの年金事務所の相談窓口にてご相談されることをお勧めします。
 

出典

日本年金機構 ホームページ
 
執筆者:鈴木一成
1959年生まれ。一成FP社会保険労務士事務所代表。
社会保険労務士、AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCアドバイザー(DC協会)、企業年金管理士(企業年金連合会)、日本年金学会会員

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