更新日: 2023.07.31 その他年金

年金受給中の家族が「行方不明」に! 必要な手続きをしないと「不正受給」になる可能性もあるって本当?

執筆者 : 鳥居佳織

年金受給中の家族が「行方不明」に! 必要な手続きをしないと「不正受給」になる可能性もあるって本当?
年金受給者本人が行方不明となった場合、受給中の年金をどのようにしたらよいのか、分からない人も多いのではないでしょうか。
 
行方不明になったあと、必要な手続きをしないと不正受給となってしまう可能性もあるため、もしものときのために理解しておきましょう。
 
本記事では、年金受給中の家族が行方不明になったときの手続き方法や、不正受給扱いになった場合にどのような処罰があるのか、解説します。

家族が行方不明になったときの年金手続き方法

年金受給者である家族が行方不明になった場合、手続きをして年金を一時的に止めてもらう必要があります。手続きをせずに受給者本人に代わって年金を受給し続けていると、不正受給とみなされてしまうため、注意しましょう。
 
行方不明となった年金受給者の所在が1ヶ月以上明らかとならないときは、家族が年金事務所に「年金受給権者所在不明届」を提出する必要があります。
 
「年金受給権者所在不明届」は年金事務所の窓口、または日本年金機構のホームページからダウンロードが可能です。なお「年金受給権者所在不明届」を提出する際は、年金受給権者の年金証書を添付しましょう。
 
届け出後は、年金受給者本人宛てに「現況申告書」が送付されます。受給者本人の所在が明らかになった場合は、本人が「現況申告書」を記入し提出します。
 
しかし受給者本人の所在が明らかにならなかった場合は、受給者本人が返信できないため提出がなされず、一定期間提出がなければ年金が一時停止になる仕組みです。
 

届け出後に年金受給者の所在が明らかとなった場合

「年金受給権者所在不明届」の提出手続きを終えたあとに、年金受給者の所在が明らかとなったときは、一時停止されている年金の解除手続きが必要となります。手続きは最寄りの年金事務所に連絡をし、必要書類を確認しましょう。
 

年金受給者の死亡が判明した場合

年金受給者が行方不明となってから戻らない場合や死亡が判明した場合は、年金受給が終了となります。年金支給の終了には、家族の手続きが必要です。
 
死亡が判明したあとに、年金受給終了の届け出をせず年金を受け取っていると不正受給となるため、注意しましょう。また、年金受給者が死亡したあとに年金を受け取っていた場合には返還します。
 

年金受給者が行方不明のまま長期間経過した場合の申し立て

年金受給者が行方不明となり、長期間経過した場合には「失跡宣告」を申し立てられます。失跡宣告とは生死不明となった人に対して、法律上死亡したとみなせる制度です。失跡宣告には2種類があり、以下の要件を満たした場合に適用されます。


普通失踪:不在者の生死が7年間明らかでないとき

危難失踪:不在者が戦争や船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき

失踪宣告の申立先は、不在者の従来の住所地、または居住地の家庭裁判所により行うことができます。
 

遺族年金や死亡一時金が請求できるようになる

申し立てをすることで死亡したとみなされるため、相続や遺族年金などの手続きが可能となります。
 
なお、遺族年金は失踪宣告により「死亡とみなされた日」の翌日から時効が進行し、5年が経過すると、請求時にさかのぼって受け取れる年金は5年分のみとなるため、注意しましょう。
 
また国民年金の第1号被保険者として、保険料を納めた月数が36ヶ月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受給することなく亡くなったときは、その人と生計を同じくしていた遺族は死亡一時金を受け取ることが可能です。
 
ただし、図表1のとおり、失踪宣告審判確定日の翌日から2年以内に請求する必要があるため、注意が必要です。
 
図表1

図表1

厚生労働省 失踪宣告を受けた者の「死亡一時金」の請求期間の取扱いについて
 

年金を不正受給してしまうと厳しい処分がある

ここまで解説した手続きを行わず、年金を不正受給してしまった場合には、厳しい処分があります。厚生労働省によると以下のような処分を受ける可能性があります。
 

1.支給停止

不正の行為のあった日以降のすべての給付が受けられません。
 

2.返還命令

不正に受給した金額を、全額ただちに返還しなければなりません。
 

3.納付命令

不正の行為により、最大で受けた額の2倍もの納付が命じられます。


【例】 100万円を不正受給した場合
(返還命令100万円+延滞金)+(納付命令200万円)=300万円+延滞金を返してもらうことになります。

 

4.刑法の詐欺罪と支給停止

特に悪質な場合は、刑事事件として告発されます。
 
もし、返還や納付をしないときは、財産差し押さえなどの強制処分となるため、不正受給とならないように注意する必要があると言えるでしょう。
 

まとめ

家族が行方不明となったときには、さまざまな手続きや捜索活動などがあり、細かいところまで注意がおよばないでしょう。
 
しかし、その家族が年金受給者であれば年金を一時停止する手続きを忘れずに行わないと、不正受給となってしまう可能性が高いです。忘れずに手続きを行いましょう。
 

出典

日本年金機構 年金を受けている人が所在不明になったとき
裁判所 失跡宣告
厚生労働省 失踪宣告を受けた者の「死亡一時金」の請求期間の取扱いについて
厚生労働省 大阪労働局 不正受給について(事例等)
 
執筆者:鳥居佳織
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