更新日: 2023.08.08 その他年金

年金受給前に夫が急逝したのですが、「遺族年金」と「老齢年金」はどちらの方が多くもらえますか?

執筆者 : 柘植輝

年金受給前に夫が急逝したのですが、「遺族年金」と「老齢年金」はどちらの方が多くもらえますか?
自身が年金を受け取る前に夫が急逝し、今は遺族年金(遺族厚生年金)を受給できているものの、将来は老齢年金も受け取れるという場合、遺族年金と自分の老齢年金、どちらを選択するべきなのでしょうか。
 
子どもの独立後、年金受給前に夫が亡くなった妻を想定して、遺族年金と老齢年金の選択について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

遺族年金と老齢年金は併給できる場合がある

年金は1人1年金が原則となっています。年金には老齢年金(原則65歳から受け取れる年金)と遺族年金(一定条件に該当する遺族が受け取れる年金)、そして障害年金(一定の障害を負った方が受け取れる年金)がありますが、基本的には、これらのうちどれか1年金を受給することになります。
 
ただし、それには例外があります。その例外の一つが、遺族厚生年金と65歳以後に受け取る老齢年金の組み合わせです。具体的には、下記に該当するような場合、遺族年金と老齢年金は併給が可能です。


・65歳以上で受け取る老齢基礎年金と、遺族厚生年金
・老齢厚生年金と遺族厚生年金(一部支給停止の可能性があります)

 

基本的に併給できる場合は遺族年金と老齢年金の併給でOK

先に見たように、遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金とは、65歳以後に併給することができます。
 
同様に、遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金も併給できます。例えば、老齢基礎年金と遺族厚生年金とは併給しても支給停止されないため、老齢基礎年金6万円と遺族厚生年金10万円を受け取れる場合、合計16万円をそのまま受け取れるという具合です。
 
ただし、遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金を併給すると、一部が支給停止されます。支給停止されるのは、自身の老齢厚生年金相当額です。
 
例えば、自身の老齢基礎年金が6万円、老齢厚生年金が7万円として、遺族厚生年金が10万円支給される場合で考えてみます。この場合、自身の老齢厚生年金に相当する7万円分の遺族厚生年金が支給停止され、遺族厚生年金は3万円のみの支給になります。
 
一部が支給停止されるなら、遺族厚生年金は受け取らない方がよい! となるわけではないのです。
 
なお、65歳より前に老齢基礎年金を受け取る「繰上げ受給」をする場合は併給ができないので、65歳よりも前に老齢基礎年金を受け取るならば、遺族厚生年金の支給額を確認し、比較の上、どちらか金額の高い方を選ぶ必要があります。
 

特別支給の老齢厚生年金に注意

老齢厚生年金には、65歳より前に受け取れる「特別支給の厚生年金」というものがあります。こちらは生年月日や性別に応じて60歳以降に受け取れる年金です。
 
この特別支給の老齢厚生年金と遺族厚生年金とは選択制になっており、併給できません。どちらを取るべきかは生年月日に加え、厚生年金への加入履歴によって異なるので一概にはいえません。
 
それゆえ、老齢厚生年金の受給前に遺族厚生年金の受給ができる場合、まずは遺族厚生年金を受給し、その後特別支給の老齢厚生年金を受け取れる段階になったら、自分自身の特別支給の老齢厚生年金の額を確認してみてください。そして、有利な金額となる方を選べばよいのです。
 
なお、老齢厚生年金については課税対象となります。所得税の場合、老齢基礎年金と合わせて年間110万円を超えた場合に生じることになっています。
 
「税金を考慮すると、特別支給の老齢厚生年金よりも遺族厚生年金の方が、支給額は少なくとも手取りは多かった」ということもあります。特に両者の支給額に差がほとんどないという場合、最寄りの年金事務所などに相談して決めるべきです。
 

まとめ

遺族年金と老齢年金は併給できる場合もあります。「65歳以上で受け取る老齢基礎年金と遺族厚生年金」と、「老齢厚生年金と遺族厚生年金」という組み合わせが代表例です。
 
遺族年金と老齢年金、両方を受け取れる場合は必ずしもどちらか一方を選ぶのではなく、まずは併給できないか確認をして、併給できない場合は両者の金額を比較し、有利な方を選ぶようにしてください。
 
年金制度は複雑で、最適解は個別の具体的な事情によって異なります。受給する年金を選択する際は、最寄りの年金事務所に相談することをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 遺族年金ガイド
日本年金機構 年金の併給または選択
国税庁 高齢者と税(年金と税)
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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