夫婦で「年金25万円」を受け取っていますが、夫が死亡したら「自分の年金」は“月7万円”だけです。「夫の遺族年金」はいくら受け取れるでしょうか?

配信日: 2025.12.20
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夫婦で「年金25万円」を受け取っていますが、夫が死亡したら「自分の年金」は“月7万円”だけです。「夫の遺族年金」はいくら受け取れるでしょうか?
夫婦2人で月25万円の年金収入があっても、「もし夫が亡くなったらどうなるのだろう」と不安を抱える専業主婦は少なくありません。夫が亡くなると、当然ながら夫の老齢年金の受給は停止し、収入は大きく減少します。
 
特に、専業主婦で老齢基礎年金のみとなる場合、生活は一気に苦しくなりそうですが、配偶者が亡くなった際には「遺族年金」という保障が用意されています。
 
本記事では、遺族年金の仕組みを解説し、今回のケースを例に、年金収入が最終的にいくらになるのかをシミュレーションします。さらに、遺族となった後の生活を維持するためのポイントも紹介するので、参考にしてみてください。
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夫の死亡で受け取れる「遺族年金」の仕組み

夫が亡くなった際、妻(配偶者)が受け取れる遺族年金は、主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2階建て構造になっています。
 

遺族年金の2階建て構造

遺族基礎年金(1階部分)は、国民年金の加入者や受給者が亡くなった場合に支給されますが、支給対象は子のいる配偶者(または子)に限定されています。一定の特例はあるものの、子がすでに18歳を超えている場合、妻は原則として遺族基礎年金を受け取れません。
 
遺族厚生年金(2階部分)は、厚生年金に加入していた夫が亡くなった場合に支給されます。子の有無にかかわらず、配偶者が受給できる点が大きな特徴です。夫が会社員だった場合、この遺族厚生年金が主な保障です。
 

遺族厚生年金の計算方法(基本)

遺族厚生年金の年金額は、亡くなった夫が受け取る予定だった老齢厚生年金の報酬比例部分の金額の4分の3、つまり75%が基本となります。
 
夫婦で月25万円の年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計)を受け取っていた場合、令和7(2025)年度の老齢基礎年金の月額(1人あたり)は、昭和31(1956)年4月2日以後生まれの人が6万9308円、昭和31年4月1日以前生まれの人は6万9108円です。
 
そのため、25万円から基礎年金2人分を差し引いた約11万円が、夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)と推定されます。この金額の4分の3が、遺族厚生年金の目安です。
 

遺族年金と老齢年金の「調整(併給調整)」のルール

実際に受け取れる年金は、「自分の老齢基礎年金」と「夫の遺族厚生年金」を単純に足し算できるわけではありません。法律によって、年金額が多くなるほうを優先するという調整ルールが定められています。
 

年金受給額のシミュレーション

前提として、月25万円の内訳を、夫の老齢年金が月18万円、妻の老齢基礎年金が月7万円と仮定してシミュレーションしてみます。
 
この場合、先ほどの計算どおり、夫の老齢厚生年金は月11万円、年間132万円と想定されます。遺族厚生年金はその4分の3であるため、132万円×75%で年間99万円、月額では8万2500円が目安です。
 
ただし、妻が65歳以上で、結婚前などに厚生年金に加入していた期間がある場合、次の2つのうち金額が高い方を基準に支給額が決まります。
 

・自分の老齢基礎年金の全額と、自分の老齢厚生年金の合計額
・自分の老齢基礎年金の全額と、夫の遺族厚生年金の合計額

 
老齢厚生年金がない専業主婦の場合は、「妻の老齢基礎年金」と「夫の遺族厚生年金」を合算した金額を受け取るケースが一般的です。
 
その場合、妻の年金額は、老齢基礎年金の7万円と遺族厚生年金の8万2500円を合わせた、月15万2500円となります。夫の死亡によって、年金収入はおよそ月10万円減少する、という目安で考えるとよいでしょう。
 

遺族年金で生活を維持するためのポイント

年金収入が月15万円程度に減少した場合、これまでと同じ生活を維持するためには、公的支援の活用や家計の見直しが必要になることもあります。
 
遺族基礎年金受給者向けの「遺族年金生活者支援給付金」が受けられるかどうか確認してみましょう。前年の所得が479万4000円以下の場合、月額5450円が給付されます。
 
また、夫が先立ち一人暮らしになった場合、大きな家の管理は負担になるため、住み替えを検討するのも1つの方法です。例えば、家賃の安い公営住宅へ転居することで、住居費が削減できます。
 

年金収入は月15万円程度に減少する見込み

夫婦で月25万円の年金収入があっても、専業主婦が夫を亡くした場合、妻の年金収入は月15万円程度に減少すると見込まれます。夫婦2人で受け取っていた頃と同じ生活を続けるのは難しくなるかもしれません。
 
夫の死亡後は、年金事務所で遺族年金の請求手続きを行うとともに、生活を維持するために利用できる支援制度がないかを確認しましょう。特に、家計の固定費となる住居費の見直しは重要なポイントです。
 
老後の生活不安を少しでも軽減するためにも、まずは自分が受け取れる遺族年金の金額がどの程度になるのかを、早めに確認しておくことをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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