更新日: 2023.08.25 その他年金
65歳スタートの年金を60歳から受け取ったら長生きしても元は取れない?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
年金の繰上げ受給とは何か
年金の繰上げ受給とは、原則として65歳から受給できる老齢基礎年金や老齢厚生年金を最大で60歳0ヶ月まで繰上げて受給できる仕組みです。早くから年金を受給できるメリットがある一方で、年金から「繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数×0.4%」が減額されます。減額率は最大で24%ですが、昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%(最大30%)です。
日本年金機構のホームページでは、年金の減額率について詳しい表を掲載しています。年金の繰上げ受給を考えている方は、ねんきん定期便に記載されている年金額をもとに、どれだけ減額されるか計算してみてください。
なお、年金の繰上げ受給は一度申請すると取り消せず、年金の減額率は生涯そのままです。
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繰上げ受給した場合の損益分岐点
昭和37年4月2日以降に生まれた方が60歳0ヶ月で繰上げ受給を始めると減額率は24.0%です。つまり、65歳から受給し始めた方を100%とすると、76%しかもらえないことになります。では、繰上げ受給した場合の損益分岐点は何歳なのでしょうか。
令和5年度の老齢年金の受給金額は、月額で約6万6250円です。年間で79万5000円ですが、60歳0ヶ月で繰上げ受給を選択すると79万5000円×76%=60万4200円となります。65歳0ヶ月で受給したときと比べて、年額で19万800円の差が出ます。60歳から繰上げ受給を開始すると、65歳までの5年間で、60万4200円×5=302万1000円となりますが、その後は1年に付き19万800円の差が出ると考えましょう。
そうなると損益分岐点は、302万1000円÷19万800円=15.8年、つまり15.8年後の約80歳10ヶ月となります。つまり、80歳10ヶ月まで年金を受給すると総受給額は65歳から年金を受給したほうが多くなります
令和3年の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳なので、80歳を超えても元気な方も珍しくないでしょう。繰上げ受給を決める場合、健康状態なども考慮しておきましょう。
繰上げ受給を決断する前に考えること
繰上げ受給をすれば、年金を最大で5年間早くもらえます。その一方で、81歳以降はもらえる年金の総額が繰上げ受給をしなかった方に比べて少なくなるなどの他にもデメリットがあります。
本項では、年金の繰上げ受給を決断する前にチェックするポイントを紹介します。メリット・デメリットをしっかり比較したうえで選びましょう。
繰上げ受給のデメリットをしっかりと把握する
老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰上げ受給すると、減額以外に以下のようなデメリットがあります。
●国民年金保険料の任意加入や追納ができなくなる
●65歳になるまで遺族厚生年金や遺族共済年金などが受給できない(65歳以降は特例的に老齢年金と遺族年金の並給ができる場合がある)
●寡婦年金が受給できない
●新たな障害年金の請求ができない
※1人1年金の原則
また、繰上げ受給は原則として、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時にしなければならないため注意しましょう。
特に、老齢年金以外の年金を受給している場合は、繰上げ年金を受給すると収入が減ってしまう可能性もあるでしょう。受給できる金額を正確に計算したうえで選択してください。
iDeCoや個人年金に加入している場合はそこから生活費の捻出を考える
年金は公的年金の他に、iDeCoや個人年金などの私的年金もあります。年金を繰下げ受給すると最大で84%増額されるので、受給できる年金が倍近く違ってくるケースもあります。
もし、iDeCoや個人年金に加入している場合は、60歳から可能であれば受給を行い、そこから生活費などを捻出できるか検討してみましょう。iDeCoの場合は原則として60歳以降に受給でき、「一時金」と「年金」で受け取り方を選べます(併用も可能)。
繰上げ受給はよく考えてから行おう
年金の繰上げ受給は年金が早くもらえる反面、最大24%まで受給額が減額されます。人生がいつまで続くかは誰にも分かりません。
年金の繰上げ受給は最終手段と考えて、個人年金などからの捻出や、定年後も働くなど他の手段も探ってみるとよいでしょう。自分の生活費や身体の状況を踏まえて、最適の年金受給方法を選びましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー