更新日: 2023.09.21 厚生年金
いくら以上稼いだら、「年金」カット?定年後に働きすぎると、年金の支給が停止される?
一体いくら稼ぐと年金の支給が停止されるのでしょうか。定年後の働き方について考える方に向け、賃金と年金の支給停止について確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
在職老齢年金とは
60歳以降に厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。在職老齢年金は、賃金と年金額の合計額が一定額を超えると、支給される老齢厚生年金の一部ないし全額が支給停止されます。具体的には、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が48万円を超える場合に、下記の計算式に沿って支給停止がなされます。
支給停止額= (総報酬月額相当額+基本月額-48万円)×2分の1
※基本月額とは、年金額(年額)を12で割った額をいいます。また、総報酬月額相当額とは、毎月の賃金(標準報酬月額)に、1年間の賞与(標準賞与額)を12で割って加えた額をいいます。
例えば、老齢厚生年金額120万円の方の場合、基本月額は10万円となります。かつ、総報酬月額相当額が42万円(標準報酬月額32万円、標準賞与額は年間120万円で月額10万円)となる場合、計算式は(42万円+10万円-48万円)×2分の1=2万円となります。老齢厚生年金は1ヶ月当たり10万円のうち2万円の支給停止となり、8万円が支給されるという具合です。
【図表】
出典:公益財団法人生命保険文化センター 在職老齢年金について知りたい
なお、在職老齢年金は老齢厚生年金のみが対象となるため、国民年金から支給される老齢基礎年金は全額支給されます。
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在職老齢年金によって、年金がカットされないようにするには?
在職老齢年金によって年金がカットされないようにするには、主に3つの方法があります。
1つ目は、年金と賃金の合計額が48万円を超えないようにすることです。例えば、年金20万円が毎月支給されるのであれば、給料は毎月20万円を超えないようにします。
2つ目には、厚生年金に加入しないで働く方法もあります。例えば、週2日、1日5時間程度など、厚生年金の加入要件を満たさない範囲で働くという具合です。ほかにも、厚生年金への加入が義務付けられている株式会社などの法人の事業所ではなく、従業員数4人以下の個人事業主の下で働くとよいでしょう。そうすることで、フルタイムで働いても厚生年金に加入せずに済むため、在職老齢年金が適用されません。
最後に、フリーランスや業務委託などの形式で、個人事業主として働くという方法も有効です。個人事業主として働くのであれば厚生年金に加入することはないため、何円稼いでも、支給される老齢厚生年金が在職老齢年金によって減額されることはありません。
高年齢雇用継続給付を受ける場合も注意
人によっては60歳から65歳までの間、厚生年金を受け取りながら働きつつ、さらに、高年齢雇用継続給付を受け取るということもあるでしょう。そういった場合、在職老齢年金による支給停止分に加えて、最大で標準報酬月額の6%相当の支給停止がなされます。
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者のうち、賃金が60歳到達時の75%未満となった方が対象となる制度で、最大で賃金額の15%に相当する額が、雇用保険から支給されます。
参考までに、老齢厚生年金額120万円(基本月額10万円)の方で、60歳到達時点で月額35万円だった賃金額が月額20万円に下がったという状況では、高年齢雇用継続給付を受け取ると、老齢厚生年金が1万2000円支給停止されることになります。
60歳から65歳の間に老齢厚生年金を受け取る方はそう多くないかもしれませんが、制度としては知っておくべきでしょう。
まとめ
厚生年金に加入しながら働く方の場合、賃金と老齢厚生年金の合計額が48万円を超えると、在職老齢年金によって、その金額に比例して老齢厚生年金の一部ないし全額の支給が停止されます。
将来が心配で、老齢厚生年金を受け取りながら働くということも珍しくはない昨今、在職老齢年金について知らないと、思わぬタイミングで老齢厚生年金の受給額が減ってしまうこともあり得ます。
今老齢厚生年金を受け取っている方やこれから老齢厚生年金を受け取る予定の方はもちろん、現役世代の方も一度、在職老齢年金がどのような制度であるか確認しておくべきでしょう。
出典
公益財団法人生命保険文化センター 在職老齢年金について知りたい
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
執筆者:柘植輝
行政書士