年金を70歳から受け取って「月7万円」増額の予定だったのに、「3万円弱」しか増えてない!? 繰下げ受給の注意点を解説
配信日: 2023.09.28
本記事では、老齢年金の繰下げ受給の注意点について解説します。繰下げ受給を検討している人は、本記事を参考に自分にあった受給開始時期を選択しましょう。
執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)
社会保険労務士・FP2級
老齢年金を5年繰り下げれば年金額は42%増額する
65歳から受け取る老齢年金を5年繰り下げて70歳から受け取ると、年金額は42%増額します。受給開始年齢を繰り下げると、「0.7%×繰り下げた月数」だけ毎月の受給額が増額されるからです。
例えば、老齢基礎年金や老齢厚生年金の65歳時点の年金額が200万円の人が支給開始時期を繰り下げて70歳から受給を始める場合、年金額は284万円となり1ヶ月当たり7万円も年金額が増額します。
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5年繰り下げても年金額が42%も増えないケース
老齢年金を繰下げ受給しても年金額が思ったほど増額しないケースもあるので注意しましょう。主なケースを2つ紹介します。
65歳以降も高い給与を受け取る会社員の場合
働きながら年金を受け取る場合、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。「在職老齢年金」といい、収入の多い厚生年金加入者の年金額を抑制する仕組みがあるためです。支給停止額は収入が多いほど大きくなります。
老齢厚生年金の繰下げ受給をする場合、支給停止分については繰下げがされないため注意が必要です。そのため、老齢年金の繰下げをしても、思ったほど年金額が増えないことがあります。
例えば、65歳時点の年金額が200万円(老齢基礎年金80万円、老齢厚生年金120万円)の人が70歳から年金受給に繰下げをする場合、年金額は原則42%増額して282万円になります。しかし、老齢厚生年金の全額が支給停止の場合、老齢基礎年金しか年金額はアップしません。
そのため、70歳から受け取る老齢基礎年金額は113万6000円に増額(33万6000円アップ)しますが老齢厚生年金は120万円のままであるため、繰下げによる増額は月2万8000円にとどまります。年金額を月7万円増やしたつもりが、実際の受給額は想定より4万2000円も少なくなります。
加給年金が加算される場合
厚生年金に20年以上加入した人が65歳から受け取る老齢厚生年金には、所定の要件を満たす場合には配偶者や子どもの「加給年金」が加算される制度があります。この加給年金は、繰下げ待機(年金を受け取っていない期間)中は受給できず、繰下げ受給する場合も増額はありません。
配偶者と子どもの加給年金の金額(2023年4月時点、毎年更改)と支給期間は図表1の通りです。
【図表1】
加給年金額 | 支給期間 | |
---|---|---|
配偶者 | 39万7500円 | 本人が65歳になった翌月から 配偶者が65歳になる月まで |
子ども(1人目・2人目) | 22万8700円 | 本人が65歳になった翌月から 原則、子どもが18歳到達年度の末日まで |
日本年金機構 加給年金額と振替加算より作成
繰下げ待機している間に、加給年金の支給期間が終わってしまうと、加給年金は受け取れないことになります。加給年金額は年間40万円近く(配偶者の場合)と高額であるため、繰下げ受給することによって損をする可能性もあります。
まとめ
65歳から受け取る老齢年金を5年繰り下げて70歳から受け取ると、年金額は原則42%増額します。ただし、次のケースでは原則通り増額しないため注意が必要です。
・収入が多く老齢厚生年金が支給停止されるケースの支給停止部分
・老齢厚生年金に加給年金が加算されるケースの加給年金額
上記のケースで老齢厚生年金の繰下げにメリットを感じない場合は、老齢厚生年金を65歳から受け取り老齢基礎年金だけを繰り下げる方法もあります。繰下げ受給の注意点を考慮して、自分にあった受給方法を検討しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級