更新日: 2023.10.22 その他年金
60歳から雇用継続で、年収は「300万円」の見込みです。働きながら年金をもらうことはできるのでしょうか?「年金額が減る」と聞いたこともあるため不安です
結論からいえば、年金の受給額の一部または全額が支給停止される可能性があります。ただし、すべての人に影響が出るわけではありません。年齢や条件によっても違いがあるため、本記事では60歳以降に働き続けた場合を2つのケースで試算してみます。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
65歳以降の場合、「月収+年金額」が48万円以下なら全額支給される
65歳以降も厚生年金保険に加入して働きながら年金受給する場合、老齢厚生年金の額(基本月額)と給与や賞与(総報酬月額相当額)の合計額に応じて、年金の一部または全額が支給停止されます。この仕組みを「在職老齢年金」と呼びます。2022年3月以降、年金支給額は以下の計算式に従って調整されています。
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-48万円)÷2
つまり、総報酬月額相当額(働いて稼いだお金)と基本月額(老齢厚生年金)の合計が48万円以下であれば支給停止額はゼロとなり、年金は全額支給されます。
例えば給与20万円、賞与60万円(年)で年収300万円の人の場合、総報酬月額相当額は以下のとおりです。
総報酬月額相当額=20万円+(60万円÷12)=25万円
この場合、基本月額が23万円以下であれば、合計が48万円以下になるので全額支給されます。仮に基本月額が25万円である場合、(25万円+25万円-48万円)÷2=1万円が支給停止となるため、年金支給額は25万円-1万円=24万円となります。
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60歳から65歳までは高年齢雇用継続給付金も影響する
60歳から65歳の場合には注意が必要です。60歳から65歳の期間は、再就職などによる賃金の大幅な低下を抑えるために、賃金の低下率に応じて給付金が支給されます。これは「高年齢雇用継続給付」と呼ばれる仕組みです。
本記事ではこの制度の詳細には触れませんが、60歳時点の賃金月額がそれ以前の61%以下になる場合、支給対象月の賃金の15%が支給されます。しかしこの高年齢雇用継続給付を受けた場合、年金の一部が支給停止(最大で標準報酬月額の6%)されることがあります。
例えば基本月額(老齢厚生年金)が10万円、60歳時点で給与月額が35万円から20万円に下がった場合をみていきましょう。
まず、「基本月額10万円+総報酬月額相当額20万円=30万円<48万円」なので、在職による支給停止はありません。また、給与月額は35万円から20万円の減額が61%以下であるため、高年齢雇用継続給付の対象となり、年金の一部が支給停止となります。
高年齢雇用継続給付額は支給停止前の20万円から計算しますので、この金額の15%が支給されます。高年齢雇用継続給付額と年金支給額、合計の収入は以下のとおりです。
給与月額:20万円
支給停止額:20万円×6%=1万2000円(月額)
年金支給額:10万円-1万2000円=8万8000円
高年齢雇用継続給付額:20万円×15%=3万円(月額)
したがって、月の合計金額として31万8000円を受け取ることができます。
老後のお金が不安な場合は、長く働くこともおすすめ
高齢になっても働く場合、企業規模と働き方によっては70歳までは厚生年金保険に加入することになり、受給できる年金額は徐々に増加するというメリットがあります。また、本記事では年金受給をしながら働く場合を解説しましたが、年金受給のタイミングを繰り下げることで、将来受け取る年金の受給額を増やすことも可能です。
将来のお金に不安があるという方は、基本的にはできるだけ長く働き続けることをおすすめします。そのうえで、年金を受給しながら働くか、年金を繰り下げてさらに将来のお金のリスクを減らすか検討するのが良いでしょう。
なお、具体的な金額計算は個々の条件によって複雑になります。個別のケースについては、社会保険労務士等の専門家やお近くの年金事務所などにご相談ください。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級