年金の繰上げ受給中に「がん」のステージ4と診断されました。遺族年金は減りますか?
配信日: 2023.11.10
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
繰上げ受給の仕組み
まずは年金の繰上げ受給の仕組みについて確認していきます。
年金の繰上げ受給とは、原則65歳から受けとる老齢年金について、希望に応じて60歳から65歳になるまでの間に受けとり時期を変更できるという仕組みです。
しかし、繰上げ期間に応じて受給する老齢年金が減額されるというデメリットが生じます。減額は1ヶ月、繰り上げるごとに0.4%の割り合いでなされます。仮に60歳まで繰り上げた場合は、受けとる年金額が24%減額され、本来の76%の額となります。
もし、65歳からの老齢年金を、毎月10万円受けとれる方が、60歳まで繰り上げた場合は2万4000円の減額がされ、7万6000円になります。
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遺族年金への影響は基本的には気にしなくてもよい
繰上げ受給によって老齢年金額が減ってしまっていると、遺族年金も減ってしまうのではないのか、気になるところです。この点に関していえば、遺族年金が減額されることはありません。それは、繰上げ受給後の老齢年金の受給額を基準にするわけではないからです。
遺族年金のうち、亡くなった方が国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金が、また、厚生年金に加入していた方の場合は、遺族厚生年金 (一定の条件に該当する場合には遺族基礎年金に上乗せ) が、亡くなった方に生計を維持されていたそれぞれの遺族に支給されます。
遺族基礎年金の支給額は79万5000円 (2023年度基準) を基準にし、子の有無や数に応じて増額されます。遺族厚生年金においては、おおむね亡くなった方の報酬比例部分の4分の3の額が支給されます。そのため、繰上げ受給による遺族年金への影響を気にする必要はありません。
なお、直接的に繰上げ受給とは関係ありませんが、併給(へいきゅう)調整によって遺族厚生年金が一部、減額となる場合があります。それは、遺族が受けとる遺族厚生年金と65歳以上で受けとる老齢厚生年金を併給するときです。この場合、遺族自身の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金は老齢厚生年金の支給額より高い場合に、その差額が支給されます。
例えば、遺族厚生年金が10万円、遺族自身の厚生年金が6万円支給される場合、差額の4万円が支給されるという具合です。
障害年金への影響は大きい
「繰上げ受給によって老齢年金の額が下がる際、障害年金にもなにか影響があるのではないか」 と思う方もいるでしょう。実際、障害年金には大きな影響があります。それは、障害年金の請求ができなくなる可能性がある、という点です。
具体的には、老齢年金の繰上げ受給をすると、事後重症などを理由として障害年金を受給できなくなります。そのため、現在、治療中のがんが悪化した際に、障害年金の受給を検討している場合は注意が必要です。
例えば、年金の繰上げ受給中に初診日があり、そこで、がんのステージ4と診断されたような場合は、仮に障害年金の要件を満たすようになったとしても、障害年金を受けとることができません。
まとめ
基本的に、年金の繰上げ受給によって遺族年金が減らされることや、不支給となることはありません。そのため、繰上げ受給中にがんのステージ4と診断されても、遺族年金について心配する必要はないでしょう。
ただし、遺族年金を受給する方が受けとる遺族厚生年金と、その遺族自身の老齢厚生年金の額によっては、亡くなった方の繰上げ受給と関係なく、遺族厚生年金が減額されることもあります。
年金制度について気になることがある場合や、詳細が知りたいという場合は、最寄りの年金事務所へ相談してみてください。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 遺族年金ガイド
執筆者:柘植輝
行政書士