更新日: 2023.11.13 厚生年金
ボーナスで厚生年金分が5万円も引かれていました。賞与が下がったりナシになったりしたら天引きはどうなりますか?
賞与に対する厚生年金保険料の金額は一律で決まっているのではなく、賞与の支給額にもとづいて決まります。本記事では、賞与に対する厚生年金保険料の計算の仕組みを説明するとともに、日本企業の賞与の支給状況をまとめました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
賞与が下がったりナシになったりすれば厚生年金保険料は下がる
賞与に対する厚生年金の保険料は、給与に対する分とは別に支給の度に計算されます。賞与がない場合、保険料は発生しません。賞与に対する保険料額の計算式は、次のとおりです。
賞与の保険料額=標準賞与額×保険料率
標準賞与額とは、税引き前の賞与の金額から千円未満の端数を切り捨てた金額です。実際の賞与額と標準賞与額の差額は千円未満のため、原則として賞与の増減にほぼ比例して厚生年金保険料も増減することとなります。
賞与から厚生年金保険料が約5万円天引きされているケースの標準賞与額を令和5年度の厚生年金保険料の保険料(従業員負担分)9.15%から逆算すると、54万6000円または54万7000円(実際の賞与額は54万6000~54万7999円)と計算できます。
なお、ここでいう「賞与」とは、労働の対償として支給されるもののうち年3回以下のものです。名目がボーナスや賞与でなくても、この条件に当てはまるものは賞与として計上されます。具体的には、次のようなものが賞与として扱われます。
・賞与(役員賞与を含む)
・ボーナス
・期末手当
・年末手当
・夏季・冬季手当
・勤勉手当
・繁忙手当
・もち代
・年末一時金
・上記のような名目で金銭でなく現物支給されるもの
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賞与ナシの会社は約3割に上る
厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、令和4年度に夏季賞与が支給された事業所の割合は66.8%、同じく冬季賞与が支給された割合は70.5%です。賞与が支給されていない事業所は意外と多く、全体の3割程度を占めています。
事業所の従業員規模が小さいほど賞与ナシの割合が高く、従業員30人未満の事業所では令和4年度夏季賞与の支給割合が6割強にとどまっています。なお、産業別の賞与の支給事業所数割合は、図表1のとおりです。
【図表1】
産業種別 | 令和4年度夏季賞与(%) | 令和4年度冬季賞与(%) |
---|---|---|
鉱業、採石業等 | 100.0 | 100.0 |
建設業 | 66.5 | 76.4 |
製造業 | 71.6 | 76.6 |
電気・ガス業 | 90.7 | 90.3 |
情報通信業 | 72.9 | 75.1 |
運輸業、郵便業 | 69.8 | 75.4 |
卸売業、小売業 | 67.2 | 67.9 |
金融業、保険業 | 91.0 | 89.6 |
不動産・物品賃貸業 | 78.5 | 80.2 |
学術研究等 | 77.8 | 81.6 |
飲食サービス業等 | 46.2 | 54.9 |
生活関連サービス業等 | 50.3 | 50.8 |
教育、学習支援業 | 75.5 | 75.5 |
医療、福祉 | 69.7 | 73.9 |
複合サービス事業 | 95.5 | 93.5 |
その他のサービス業 | 71.8 | 73.6 |
厚生労働省「毎月勤労統計調査」をもとに筆者作成
賞与額が150万円を超えると厚生年金保険料は頭打ちに
賞与に対する厚生年金保険料の計算に用いる標準賞与額は、支給1回(同月に複数回支給された場合は合算)につき150万円が上限です。150万円を超える場合は150万円として保険料が計算され、それ以上は賞与額が上がっても保険料は上がりません。
令和5年度の厚生年金保険料の保険料率は18.3%なので、厚生年金保険料の上限額は150万円×18.3%=27万4500円です。このうち、2分の1の13万7250円が賞与から天引きされます。
賞与の額と厚生年金保険料はおおむね比例する
賞与に対する厚生年金保険料は、額面の賞与額から1000円未満を切り捨て、保険料率を掛けて計算します。賞与が支給されるたびに保険料を計算するため、賞与が出なければ保険料もかかりませんし、前回よりも支給額が減れば保険料も比例して下がります。保険料が決まる基本的な仕組みが、給与とは違うことを覚えておきましょう。
出典
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和4年9月分結果速報等
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年2月分結果速報等
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー