更新日: 2023.11.29 その他年金

「年金支給額」=「受け取れる額」ではない!? 支給額が「180万円」だと実際にはいくら受け取れる?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

「年金支給額」=「受け取れる額」ではない!? 支給額が「180万円」だと実際にはいくら受け取れる?
老後の生活を大きく左右するのが年金です。実際に、支給される年金を老後の生活基盤とする方も少なくありません。そのため、将来もらえる予定の支給額を、確認している方もいるのではないでしょうか。
 
しかし、年金支給額と実際に受け取れる金額は、状況によっては同じではありません。給料などと同じように、所得税や住民税が引かれるケースがあります。
 
今回は、年金を毎年180万円受け取れるケースを例に、税金の金額や、実際に受け取れる金額についてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

年金の手取り額を計算する方法

年金は、所得税や住民税における課税対象であり、さらに、国民健康保険や介護保険料なども差し引かれます。老後の生活に深くかかわるため、年金から引かれるお金と、計算方法を把握しておきましょう。
 
なお人によっては、年金以外に収入を得ているケースなどもありますが、今回は、年金からのみ収入を得ているとして考えます。
 

雑所得の金額を求める

年金収入から「公的年金等控除額」を引くと、雑所得としての所得金額を求められます。年金から雑所得の金額を求める方法は、公的年金から得る収入の合計額によって変わるため、注意が必要です。年金から得る収入の合計額に応じた雑所得の金額の求め方は表1になります。
 
表1

公的年金などから得た収入の合計額 雑所得の金額の求め方
65歳未満 60万円以下 0円
60万超~130万円未満 収入の合計額-60万円
130~410万円未満 収入の合計額×0.75-27万5000円
410~770万円未満 収入の合計額×0.85-68万5000円
770~1000万円未満 収入の合計額×0.95-145万5000円
1000万円以上 収入の合計額-195万5000円
65歳以上 110万円以下 0円
110万超~330万円未満 収入の合計額-110万円
330~410万円未満 収入の合計額×0.75-27万5000円
410~770万円未満 収入の合計額×0.85-68万5000円
770~1000万円未満 収入の合計額×0.95-145万5000円
1000万円以上 収入の合計額-195万5000円

※年金以外の所得が1000万円以下の場合
※国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)No.1600公的年金等の課税関係」を基に筆者作成
 

保険料の金額を求める

年金受給者が支払う保険料は、国民健康保険料または75歳以上ならば後期高齢者医療保険料と、介護保険料です。それぞれの保険料は、自治体によって保険料率が異なります。同じ都道府県内でも、市町村によって変わることもあるため、ホームページなどで確認しておきましょう。
 

雑所得から基礎控除や社会保険料などを控除したあとに税金額を求める

基礎控除とは、所得金額に応じて、所得の合計額から控除できる金額のことです。年金収入のみの場合は、雑所得がそのまま合計所得金額となります。そのため、雑所得から基礎控除と社会保険料を引いて求めた金額を基に、所得税や住民税を求めます。
 
なお、所得税の基礎控除額と、住民税の基礎控除額は異なりますので、注意しましょう。表2は、所得税と住民税の基礎控除額です。
 
表2

合計所得金額 所得税 住民税
2400万円以下 48万円 43万円
2400万円超~2450万円以下 32万円 29万円
2450万円超~2500万以下 16万円 15万円
2500万円超 なし なし

※横浜市「住民税税制改正のお知らせ(令和3年度実施分)」を基に筆者作成
 
年金受給者の所得税は所得に応じて変動し、課税所得金額が195万円超330万円以下ならば、住民税率は10%です。また住民税には、均等割として5000円が加えられます。
 

年金が年額180万円だった場合に受け取れる金額

年金が180万円だった場合を例に、手取り額を計算してみましょう。条件は以下の通りとします。


・単身世帯で70歳
・東京都新宿区在住
・収入は年金のみ
・基礎控除、公的年金等控除額、社会保険料控除以外の控除は考慮しない

まず表1より、年金180万円の雑所得は、70万円です。国民健康保険料が年額8万5993円、介護保険料は年額8万4480円ですので、合計すると17万473円になります。
 
ここから所得税を求めるために、基礎控除の48万円、社会保険料の17万473円を雑所得から差し引くと4万9527円となり、1000円以下の端数を切り捨てたあとの所得税は、5%の2450円です。
 
住民税では基礎控除が43万円のため、保険料と合わせて控除すると9万9527円となります。住民税は、10%に5000円を加算した1万4952円です。
 
保険料17万473円と所得税2450円、住民税1万4952円を年金180万円から引くと、実際に受け取れる金額は161万2125円になります。月額にすると、約13万4344円です。
 

受け取れる金額は支給額より少なくなるケースがある

控除額より少ない金額の場合、年金は支給額とほぼ同じ金額が受け取れます。しかし、控除額を超える金額を受け取る場合は、所得税や住民税、保険料などが引かれるため、注意が必要です。
 
支給額を基に、年金受け取り後の暮らし方を考えると、想定よりもお金が少し足りなくなる可能性もあります。あとで苦労しないためにも、年金を受け取る前に、実際はいくら受け取れるのかを、おおよその金額を計算しておきましょう。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1199 基礎控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) 高齢者と税(年金と税)
総務省 地方税制度 個人住民税
横浜市 住民税税制改正のお知らせ(令和3年度実施分)
新宿区 保険料の計算方法について 保険料率等について【令和5年度の保険料率等】
新宿区 介護保険料の決まり方 65歳以上(第1号被保険者)の方の介護保険料(令和3年度~令 和5年度)第6段階
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

ライターさん募集