65歳以降も「月収20万円」で働くつもりです。あまり稼ぐと年金が「一部停止」になるって本当ですか?

配信日: 2023.12.18 更新日: 2024.07.29

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65歳以降も「月収20万円」で働くつもりです。あまり稼ぐと年金が「一部停止」になるって本当ですか?
定年年齢の上限引き上げや定年制度そのものの廃止など、高年齢者雇用の法整備が進んでいる中、65歳以降も働けるだけ働こうと考えている人が増えてきているのではないでしょうか。一方で「老後も働くと年金支給が止まってしまうのでは……」と不安に感じる人もいるかもしれません。
 
本記事では65歳以降に働き続けた場合の年金への影響について解説します。
御手洗康之

執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)

CFP、行政書士

年金支給停止になる基準は、収入と年金の合計が48万円から


働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、「在職老齢年金」という仕組みによって、老齢厚生年金の一部もしくは全額が支給停止される可能性があります(老齢基礎年金は支給停止の対象にはなりません)。以前は65歳未満の人についての仕組みがやや複雑でしたが、2022年4月以降条件が緩和され、65歳以上の人の場合と同様に考え方が簡単になりました。
 
現在は年金の受給額(基本月額)と収入(総報酬月額相当額)の合計が48万円以下の場合、年金が全額支給されます。48万円を超えた場合は、48万円を超えた部分の2分の1が支給停止されます。
※基本月額=老齢厚生年金の額(加給年金などの加算額は除く)
※総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計/12

例)基本月額10万円、総報酬月額相当額40万円の場合

支給停止額=(10万円+40万円-48万円)÷2=1万円
調整後の年金支給月額=10万円-1万円=9万円

年金と収入の合計額が48万円を超えるかどうかは、年金受給額や収入は人により異なるため、「月収○万円なら支給停止にならない」と一概に言うことはできません。なお、厚生労働省によれば、65歳以上で在職している年金受給権者のうち、2018年度末では2割弱の人が年金の支給停止(一部停止含む)の対象となっているようです。
 

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収入が多いなら年金の繰下げ受給がおすすめ。ただし注意点あり

計算の結果、年金の多くが支給停止されたり、全額停止されてしまう人は、「年金の繰下げ受給」をして受給額を増やしておこうと考えるかもしれません。しかし、支給停止部分は繰下げ受給の増額対象とならない点には注意が必要です(図表1)。
 
図表1

日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
とは言え、支給停止額が大きくなるほどの収入があれば、今すぐ年金受給を開始しなくても生活に支障はないはずです。特に老齢基礎年金(国民年金)部分は在職老齢年金による支給停止に影響しないので、繰下げ受給による年金受給額の増額対象です。
 
2023年度の場合、老齢基礎年金の満額は79万5000円です。仮に5年間(60ヶ月)受給開始を繰り下げれば、受給額は42%増額(0.7%×60ヶ月)されて年間約113万円になるため、繰下げ受給を検討しても良いでしょう。
 

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結論:月収20万円で年金との合計額48万円以下なら影響なし。状況によっては働き方を変えていくのもよし


タイトルの相談事例のように、月収20万円程度で年金額との合計が基準の48万円以内であれば、年金支給額に影響はありません。また、年金の支給停止に該当するほどの収入になるのであれば、徐々に働き方を変えていく選択肢もあります。
 
例えば、経営者や働くこと自体が好きという人は、そのまま働き続けることは全く問題ありません。一方で、これまで多少無理をしてフルタイムで働き続けてきたという人は、時間の融通が利く職場や、収入が減っても長期間働くことができそうな職場にシフトしていくのも良いでしょう。
 
フルタイムの働き方に縛られず、無理のない範囲で働き続けることは、将来の経済的な不安を減らす有効な方法です。働きたい意欲があれば、その気持ちを大切にして柔軟な働き方を含めて検討していくことをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
日本年金機構 令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されました
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級

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