更新日: 2024.01.25 その他年金

40年勤めた会社を63歳直前で退職、年金はまだ増やせる?(2)再就職した場合

執筆者 : 井内義典

40年勤めた会社を63歳直前で退職、年金はまだ増やせる?(2)再就職した場合
Aさん(男性)は1961年4月生まれ。大学生時代は国民年金に未加入、大学を卒業して23歳になる月(1984年4月)に就職、ちょうど40年厚生年金に加入して今年(2024年)3月末で退職することになりました。
 
公的年金については65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されるようになります。老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計で年間230万円程度の見込み。ここからさらに年金を増やすことはできるのでしょうか。
 
年金の増え方について全2回で取り上げますが、第2回目の今回は退職後に再就職した場合についてです。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

再就職・厚生年金再加入で報酬比例部分のみ増える

Aさんが2024年3月末の退職後、再就職して厚生年金に加入した場合も年金は増えます。老齢厚生年金として増えることになります。ただし、Aさんの場合は厚生年金の被保険者期間がすでに40年となっているため、そのうちの報酬比例部分のみ増えます(【図表1】)。
 
前回(※)取り上げた老齢基礎年金に相当する経過的加算額は増えません。また、60歳以降での厚生年金への加入であるため、老齢基礎年金も増えません。つまり、2階建ての年金の2階部分のみが増えます。報酬比例部分は、厚生年金被保険者期間や厚生年金保険料に応じて増えます。
 


 
厚生年金への加入自体は最大70歳になるまで可能ですので、2024年3月で退職し、63歳になる2024年4月にすぐ再就職した場合、最大7年間(2024年4月~2031年3月)報酬比例部分を増やすことができます。
 
前回(※)取り上げた国民年金の任意加入が最大65歳になるまでであることとはこの点が異なっています。
 

65歳で年金が受けられるようになっても増やせる

65歳から老齢基礎年金と併せて老齢厚生年金を受け取れるようにはなりますが、65歳時点でのその老齢厚生年金は65歳の前月までの厚生年金加入記録で計算されます。Aさんが63歳になった月から再就職して厚生年金に加入し続けた場合、65歳時点では2026年3月までの504月で計算された年金となります(【図表2】)。
 
仮に、2024年4月から2026年3月までの標準報酬月額(毎月の給与)が24万円であれば、厚生年金保険料の負担は月額2万1960円(24万円×9.15%)の24月分ですが、年間3万円程度の報酬比例部分が増えます(注:2023年度の「再評価率」で再評価後の額)。
 
2024年3月末の退職時点で230万円だった、すべての年金の合計額については、約233万円に変わります。
 


 
また、65歳になった月以降の厚生年金加入期間分はその後の退職時や70歳到達時の再計算、在職中毎年1回の再計算(在職定時改定)で増えます。
 
70歳まで厚生年金に加入し続けると、最終的に70歳以降の報酬比例部分は564月(504月+60月)の被保険者期間で計算された額になります。標準報酬月額24万円で勤務を続けていれば、その受給額は10万円程度(注:2023年度の「再評価率」で再評価後の額)増え、70歳以降のすべての年金の合計額は約240万円となるでしょう。
 

年金を増やせる機会を活用して増やす

現行制度上、60代前半で退職した場合、その後の年金の増やし方としては、国民年金への任意加入と厚生年金への加入、2つの方法があります。退職後の離職期間中は任意加入、その後再就職した場合に厚生年金加入するという、2つを組み合わせたパターンもあるでしょう。
 
老齢基礎年金も老齢厚生年金も終身で受給できる点を念頭に置き、将来の受給額を増やすために可能な限り年金加入を続けるのが理想ではないでしょうか。
 

出典

(※)ファイナンシャルフィールド 40年勤めた会社を63歳直前で退職、年金はまだ増やせる?(1)再就職しない場合
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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