更新日: 2019.01.11 その他年金
老後が不安だからこそ。暮らしの支えとなる「年金」についておさらい。 繰り上げ・繰り下げ請求、する?しない?
今回は年金の繰り上げ・繰り下げ請求について紹介します。
Text:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、
社会保険労務士、米国税理士、宅建士
早稲田大学卒業後IT業界に従事していたが、格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。
ライフプラン、年金、高齢者向け施策、海外在住日本人向け支援(国内行政手続、日本の老親のケア、帰国時サポートなど)を中心に代行・相談サービスを提供中。
企業向けコンサルティング(起業、働き方改革、コロナ緊急事態の助成金等支援)の実施。
国内外に多数実績をもつ。
・コロナ対策助成金支援サイト
・海外在住日本人向け支援サイト
・障害年金支援サイト
65歳まで待てない! 早く年金をもらいたい人は繰り上げ請求が可能
現行の日本の年金制度では、老齢年金の支給開始年齢は原則65歳となっています(厚生年金に1年以上加入していた昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1日)以前生まれの人の中には、60歳~64歳が支給開始年齢の人もいます)。
年金の繰り上げ・繰り下げ請求というのは、この本来の支給開始年齢を早めたり遅らせたりして、年金の支給を請求する制度です。ただし、繰り上げ請求では早く受給する分、本来の年金受給額が減額されます。逆に繰り下げ請求では、年金受給額が増額されます。
例えば、63歳から厚生年金を受給できる人は、60歳から62歳の間に繰り上げ請求することができますし※1、国民(基礎)年金だけに加入していた人は65歳が支給開始年齢ですが、60歳から64歳の間に繰り上げ請求することができます。
一方、繰り下げ請求をする場合には、65歳から受給する部分の年金の受給開始年齢を、66歳~70歳に繰り下げることが可能です※2。
以下は繰り上げ請求、繰り下げ請求によって年金額の増減の計算例です。
<例(1):63歳支給開始の方が60歳へ繰り上げ請求するケース>
3年(36ヶ月)繰り上げ → 年金額が18%(=0.5%×36ヶ月)減額
<例(2)(2):65歳支給開始の方が69歳へ繰り下げ請求するケース>
4年(48ヶ月)繰り上げ → 年金額が33.6%(=0.7%×48ヶ月)増額
※1:厚生年金受給者が繰り上げ請求する場合、厚生年金と基礎年金の両方を繰り上げる必要があります。上の例(1)では、厚生年金を3年繰り上げると同時に65歳から支給される基礎(国民)年金部分も3年繰り上げ請求する必要があります。
※2:一方、厚生年金受給者が繰り下げ請求する場合、厚生年金と基礎年金を別々に手続きをすることができます。例えば、基礎年金だけを繰り下げ請求することもできます。なお、60歳~64歳に受給する部分については繰り下げることはできません。
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繰り上げ請求、繰り下げ請求をする場合、しない場合、どちらがお得?
この制度を利用するかどうかの判断基準としては、「どちらが得か? 」という話になることでしょう。
結論から言うと、比較のポイントとしては、生涯の受給総額やその人の経済状況(老後の所得や借金の有無など)になると思いますが、一概にどちらが得かということは言えません。寿命も経済状況も人によってさまざまであるためです。
そこで、1つの目安として受給累計額を比較してみます。
比較1 本来の65歳から受給するケース vs 60歳に繰り上げ請求するケース
5年(60ヶ月)の繰り上げ請求を行うので、年金受給額が30%(=0.5%×60ヶ月)減額となります。この場合、76歳を超えると繰り上げ請求した場合の受給累計額が本来の受給累計額を下回ります。
比較2 本来の65歳から受給するケース vs 70歳に繰り下げ請求するケース
5年(60ヶ月)の繰り下げ請求を行うので、年金受給額が42%(=0.7%×60ヶ月)増額となります。この場合、81歳を超えると繰り下げ請求した場合の受給累計額が本来の受給累計額を上回ります。
比較1、2ともに年金受給額が変わらない前提で単純計算しているだけですが、実際の受給額は毎年少しずつ減額されます。また、上記の例の損得基準である76歳や81歳より前に死亡してしまったら比較することもできません。
そして、もう1点忘れてはならないことですが、厚生年金に20年以上加入していた人に年下の配偶者がいると、65歳から加給年金が最大で年間約39万円上乗せされます。繰り下げ請求をすると、この加給年金は繰り下げ請求の対象にはならず、結果として放棄する形になるので注意が必要です。
手続きは慎重に検討した上で
繰り上げ請求、繰り下げ請求ともに、一度手続きをすると増減された年金額は生涯にわたって適用され、途中で変更することはできません。したがって、手続き(特に繰り上げ請求)を行うかどうかは慎重に検討するようにしましょう。
最終的には本人が決めるべきことですが、参考までに厚労省「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」で実際の国民の利用状況をみてみると、基礎年金受給者のうち繰り上げ請求による受給者は34.1%。繰り下げ請求が1.4%、どちらもしていないが64.5%となっています。(繰り上げした月数に関する情報はありません)
いかがでしょうか。これから定年を迎える人は、老後の生活を考える上で便利な制度です。定年後の就労や退職金の使い方とともにライフプランにお役立てください。
参考資料:厚労省「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
Text:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表