【繰上げ受給の注意点】長生きするつもりがないので年金を「繰上げ受給」します。後悔したくないので、注意点が知りたいです。
配信日: 2024.02.26 更新日: 2024.02.27
そこで、長生きするつもりがなく、年金を繰上げ受給する場合の注意点を解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
何歳まで生きるかは誰にも分からない
何歳まで繰り上げるかにもよりますが、最大である60歳まで繰り上げると、支給される年金額は24%も減額されます。仮に、年金を繰り上げなければ月額換算で10万円受給できるとしたら、60歳まで繰り上げた場合は7万6000円になる、という具合です。
※出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」
一番の注意点として、その減額は一生続くものだということを考えていかなければなりません。「長生きするつもりがないから、年金が減ってもそれまで貯めた老後資金でカバーできる」と考えていても、想定以上に長生きしてしまい、老後資金が尽きる可能性もあります。
自分が何歳まで生きるのかは誰にも分かりません。少なくとも平均寿命程度は生きることを視野に入れて、繰上げ受給をするかどうか判断すべきです。
参考までに、月当たり10万円を「65歳から受け取った場合」と「60歳から受け取った場合」で比較してみましょう。すると生涯で受け取る年金の総額は、仮に80歳まで生きるとして、60歳から受け取ると1824万円、65歳から受け取ると1800万円です。
81歳になると逆転して、60歳から受け取っていた場合は約1915万円、65歳からは1920万円になります。
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障害基礎年金や遺族厚生年金などの受給ができなくなる可能性がある
年金は繰上げ受給すると、受給総額だけではなく、障害基礎年金や遺族厚生年金の受給権にも影響します。
障害基礎年金については、繰り上げた後、65歳までの間に障害を負ったとしても、支給されなくなります。遺族厚生年金については、65歳までの間は、繰り上げた老齢年金とどちらか一方だけを選んで受給することになります。65歳以降は併給できますが、老齢年金は減額された上で支給されます。
障害基礎年金や遺族厚生年金は、誰もが必ず受け取ることになるとは限りませんが、万が一の際の保障としてその存在は無視できません。
また、夫が年金を受けずに死亡した際に妻が受給する「寡婦年金」が受給できなくなり、国民年金を満額受給できない場合に65歳まで国民年金に加入して受給額を満額に近づけることのできる「任意加入」もできなくなります。
※出典:下野市「繰上げ請求の注意点」
これらは繰上げ受給を考えるに当たって見落としがちな点ではありますが、マイナスの影響は年金額の減額だけではないことを知っておきましょう。
在職老齢年金に注意
現在は多くの企業で、65歳まで働くことのできる環境が整えられています。それゆえ、65歳まで働くことを想定して、給与と年金を受け取りたいと考えている方もいるでしょう。
そこで注意しなければならないのが、在職老齢年金です。在職老齢年金とは、働いており、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、年金と賃金の合計が48万円を超えると、超えた金額の半分が支給停止となるものです。減額された年金額と60歳以降の賃金の合計で、48万円を超えることはそう多くないかもしれませんが、こちらもあわせて知っておきたいところです。
※出典:日本年金機構「さ行 在職老齢年金」
まとめ
年金は繰上げ受給をすると減額されるため、仮に長生きするつもりがなくとも、いずれ後悔する可能性があります。また、障害基礎年金や在職老齢年金など、年金額の減額以外にも注意すべき点はいくつもあります。
もし、年金の繰上げ受給を考えているのであれば、「長生きするつもりがない」という以外にも多方面から検討して、後悔のないように選択をするべきでしょう。
出典
下野市 繰上げ請求の注意点
日本年金機構
さ行 在職老齢年金
年金の繰上げ受給
執筆者:柘植輝
行政書士