更新日: 2024.03.04 その他年金
年金をもらいながら月収「20万円」ほど稼ぐ予定ですが、年金が「減って」しまいますか?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
年金をもらいながら働くなら在職老齢年金について知っておくべき
厚生年金(老齢厚生年金)をもらいながら働き、給与を受け取るという場合、「在職老齢年金」を考慮する必要があるでしょう。それによって、厚生年金の一部ないし全額が支給停止になるからです。
具体的にいうと、在職老齢年金とは、「働いて厚生年金に加入しながら厚生年金を受け取る場合、1月当たりの年金と給与(それぞれ、「老齢厚生年金の基本月額」と「総報酬月額相当額」)との合計額が48万円を超えると、それを超えた金額の半分が厚生年金から支給停止される」というものです。
※出典:日本年金機構「さ行 在職老齢年金」
ただし、支給停止されるのは厚生年金部分のみです。仮に、年金と給与の合計が48万円を超えていたとしても、国民年金部分は停止の対象外とならず、全額支給されます。
厚生年金は国民年金の上乗せ分に相当します。従って、厚生年金に加入している方は国民年金にも加入していることになるため「長年会社員で、自分では国民年金に加入した覚えがない」という方でも、国民年金は受けとることができます。
なお、在職老齢年金の仕組みを計算式で表すと、下記のようになります。
在職老齢年金による調整後の年金支給月額=基本月額-(基本月額+「総報酬月額相当額(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12+その月の標準報酬月額」-48万円)÷2
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月20万円も給与をもらっても、意外と年金が減ることはない
ここまでの話を聞くと「月20万円も給与をもらいながら年金を受け取ると、年金が減ってしまうのではないか」と不安になるかもしれませんが、意外にもそうなる方は少数でしょう。
なぜなら、厚生労働省年金局「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度末時点における厚生年金受給者の年金額は、国民年金部分を含めて平均およそ14万5000円となるからです。20万円の給与と合わせても34万5000円と、48万円には届きません。
また、日本年金機構では下記条件のモデルケースで年金月額が試算されていますが、在職老齢年金にはかかりません。
●月額換算した給与(賞与含む)が27万5000円(給与25万円、賞与が年間30万円)
●月換算の年金支給額は、厚生年金部分10万円、国民年金部分6万円の合計16万円
この場合、単純に計算しても年金と給与の合計は1月当たり43万5000円で、在職老齢年金はかかりません。また、国民年金部分は在職老齢年金の計算には含まれないので、実際には37万5000円となり、もう10万円給与が増えても在職老齢年金にはギリギリかからないことになります。
このように、よほど給与か年金、あるいはその両方が高くない限り、在職老齢年金を心配する必要はないでしょう。
在職老齢年金にかからないように働くには
どれだけ稼いでも在職老齢年金にかからないようにする方法としては、フリーランスや自営業として働き、厚生年金に加入しないようにすることが挙げられます。厚生年金に加入していなければ、いくら収入があっても在職老齢年金にかからないからです。
とはいえ、厚生年金に加入することで在職老齢年金にかかったとしても、将来受け取る年金額は増加します。参考までに、65歳まで20万円の給与で厚生年金に加入していた方が、65歳以降70歳まで引き続き、20万円の給与で厚生年金に加入を続けた場合、70歳からは「65歳以降の増額分」として、年金額が6万5000円増加します。
まとめ
年金をもらいながら働いて、毎月20万円の給与を得たとしても、平均的な年金支給額であれば在職老齢年金にはかからず、年金の支給額が減ることはありません。もし、在職老齢年金によって支給額が減ってしまうことが気になるのであれば、年金と給与の合計が48万円を超えないか、一度確認してみることをおすすめします。
出典
日本年金機構
働きながら年金を受給する方へ
年金用語集 在職老齢年金
厚生労働省年金局 令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:柘植輝
行政書士