「5年前に離婚したんですが、元夫の年金を半分もらえるんですよね?」熟年離婚で多い思い込みとは
配信日: 2018.11.20 更新日: 2019.09.02
「離婚協議書は作成されましたか?」
相談者-「子供も社会人で養育費などないので、協議書は作っていません。話し合いで財産を分けました。そろそろ、元夫の年金支給が始まりそうなので手続きが必要ですよね」
「離婚されたのは、いつですか?」
相談者-「5年前です」
「えっ…残念ですが…もう年金分割の手続きはできません」
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
地域の皆様のかかりつけ法律家を目指し奮闘中!!
https://www.shukuwa.com/
【年金分割制度の概要】
以前は離婚した場合、妻は自分の年金しか受け取れませんでした。専業主婦の場合は老齢基礎年金のみとなり、経済的に厳しい老後を迎えることになりました。
年金分割は、この問題を解消するための制度です。
(1)合意分割-婚姻期間中の厚生年金の保険料の納付記録を、夫婦の合意または裁判により分割。
夫が納付してきた厚生年金保険料の一部(上限1/2)を妻が納付したものとする。
(2)3号分割-平成20年4月1日以後の婚姻期間中、妻が第3号被保険者(専業主婦など)の夫が納付してきた厚生年金の保険料納付記録を、強制的に1/2に分割する。
2つとも、納付した年金保険料を「夫婦が共同して負担したものとみなす」という考え方の制度です。
夫の年金保険の受給権を分割するのではなく、納付記録を分割するので、元妻は自分の年金として亡くなるまで受給できるようになります。
「合意分割」は、妻が会社に勤めていて第2号被保険者であっても、夫の納付記録の方が多い場合は請求できます。「3号分割」は、専業主婦など第3号被保険者のみが請求できます。
熟年離婚では、「合意分割」と「3号分割」両方が含まれることも多いですが、その場合は、「3号分割」の期間を含む婚姻期間全体について、合意分割するのが通常です。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
【いくら年金が増えるのか】
年金事務所に請求すれば、「年金分割のための情報通知書」を交付してくれますので、離婚協議の前に確認しましょう。請求時に50歳以上で受給資格期間を満たしていると、分割後の老齢厚生年金の見込み額まで教えてもらえます。
例)
婚姻期間25年で平均月収36万円(ボーナス年3ヶ月)の夫の年金を、専業主婦だった妻に1/2で分割した場合、年額約38万円が元妻の年金に加算されます。
年金を25年間受け取った場合、トータル950万円(38万円×25年)の加算となります。
【分割までの手順】
(1)年金分割のための情報通知書の請求
(2)夫婦での話し合い(合意)
*合意できない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立て、分割割合が決定されます。
*3号分割のみならば合意不要なので、離婚から2年以内に妻の一方的な請求が可能です。
(3)分割合意の書面を「公正証書」または「公証人の認証を受けた私署証書」で作成
*家庭裁判所で案分割合を決定した場合は、調停証書、審判書などが作成される。
(4)離婚から2年以内に、年金事務所に(3)の書類を添えて年金分割請求
(5)「標準報酬改定通知書」の交付
【熟年離婚の注意点】
熟年離婚の場合、子供に嫌な思いをさせたくないなどの理由で、離婚時期を「子供が成人してから」「就職してから」とすることが多くなります。この場合、養育費などはありませんので、財産額が多くない家庭などでは、正式な離婚協議書を作成しないケースがあります。
専門家に相談すれば、年金分割のアドバイスも受けられますが、よく調べないまま夫婦の話し合いで財産分割してしまうと、冒頭の相談者のような状況になってしまいます。
ちなみに、財産分与と年金分割の請求権は2年、慰謝料は3年間で消滅します。年金分割は公正証書の作成など、手続きも面倒です。長引きそうなら、専門家を頼ることをためらってはいけません。
Text:宿輪 德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士