「基本月額」+「総報酬月額相当額」が50万円を超えたら、年金が減る? その場合、受け取るはずだった年金はどうなるの?

配信日: 2024.06.29

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「基本月額」+「総報酬月額相当額」が50万円を超えたら、年金が減る? その場合、受け取るはずだった年金はどうなるの?
会社員として働きながら老齢厚生年金を受給すると、「在職老齢年金制度」により、報酬額と年金受給額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となることがあります。
 
今回は、「在職老齢年金制度」について詳しく解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

「在職老齢年金制度」とは

1.制度の概要

「在職老齢年金制度」とは、老齢厚生年金を受給している方が、厚生年金の被保険者として働いている場合、受給している老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じて、年金額が支給停止される制度です(※1)。
 
ここで「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額をいいます。また、「総報酬月額相当額」とは、下式により求められる額をいいます。
 
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
 
なお、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金の適用事業所に勤務している場合は、厚生年金の被保険者ではありませんが「在職老齢年金制度」の適用を受けます。その際「総報酬月額相当額」の計算においては、厚生年金の被保険者と同様に「標準報酬月額に相当する額」と「標準賞与額に相当する額」が用いられます。
 

2.在職老齢年金の計算方法

在職老齢年金制度により停止される年金額は、以下の方法で計算します(※1)。
 

1「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が50万円(注)以下の場合
⇒ 全額支給
 
2「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が50万円(注)を超える場合
⇒ 年金支給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円(注))÷2
注:令和6年度の支給停止調整額

 
「基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じた年金支給額の早見表は、下表のとおりです。
 
図表1

図表1

 

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老齢厚生年金を繰り下げて受給すると?

「在職老齢年金制度の適用を受ける年金を、退職するまで繰り下げてから受給すれば、繰下げ期間に応じた割増の年金を受給できるのでは」と考える方もいることでしょう。実際のところはどうなるのでしょうか。
 
老齢厚生年金を66歳以降に繰り下げて受給すると、繰り下げた月数に応じて、増額された年金を受け取ることができます(※2)。繰下げにより増額される年金額(繰下げ加算額)は、下式による増額率を老齢年金(加給年金額を除く)に乗じた額となります。
 
増加率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
繰下げ加算額=老齢厚生年金×増加率

 
しかしながら、在職老齢年金制度により支給停止される額は、繰下げ受給による増額の対象とはなりません。このときは、繰下げ待機期間中の年金の支給割合(平均支給率)によって加算額が計算されます。
 
具体的には、先述の繰下げ加算額に平均支給率を乗じることにより、加算額を計算します。
 
平均支給率=月単位での支給率の合計÷繰下げ待機期間
月単位での支給率=1-(在職支給停止額÷65歳時の老齢厚生年金額)

 
図表2

図表2

 

まとめ

老齢厚生年金の受給権のある方が、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金の適用事業所で働き、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が50万円を超える場合、在職老齢年金制度により、50万円を超えた額の半額に相当する額の年金が支給停止となります。
 
在職老齢年金制度により支給停止された年金は、生涯にわたり受給することができません。また、年金を繰下げ受給しても、支給停止された分は繰下げ加算額に反映されません。
 

出典

(※1)日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
(※2)日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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