年金は「払った分だけ受け取れる」ほうがお得? 年収「458万円」の会社員が、平均寿命まで生きる場合で試算
配信日: 2024.08.27
本記事では、これらの違いを説明し、賦課方式の例として、納める保険料の総額と受け取れるであろう年金の総額を、国民年金のみ加入していた場合と厚生年金保険にも加入していた場合の2パターンで概算します。
執筆者:福嶋淳裕(ふくしま あつひろ)
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
目次
積立方式とは
積立方式は、積立貯蓄や積立投資と同じイメージで、自分が納めた保険料や掛け金が年金資産の原資となり、これを将来自分が受け取る方式です。個人年金など民間保険の商品やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度がこれに該当します。
運用収益を期待できる反面、物価や賃金の上昇による年金の実質的な価値の目減り、運用の失敗や経営破綻による年金の減額があり得ます(年金の実質的な価値とは、額そのものではなく、物価や賃金水準に応じた経済的な価値を意味します)。
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賦課方式とは
賦課方式は、被保険者(加入者)が納める保険料を、その時点の受給者に給付する方式です。老齢年金でいえば、働いている現役世代から働けなくなった年金受給世代への「仕送り」であり、「社会的扶養(世代間での支え合い)」の仕組みです。
現役世代の保険料を年金受給世代に給付するため、物価や賃金水準の変化に対応しやすく、年金の実質的な価値が目減りしにくい長所がある反面、現役世代と年金受給世代の人口比率の変化が保険料や年金に影響しやすい短所もあります。
日本の公的年金(国民年金、厚生年金保険)制度は、アメリカ、ドイツなどと同様、年金の実質的な価値を維持しやすい賦課方式で運営されています。
「国民年金40年納付、65歳から平均寿命まで年金受給」の収支概算
現役時代の全期間が自営業で、国民年金保険料を20歳から40年間納め、老齢基礎年金を65歳から平均寿命まで受け取る想定で、納める保険料の総額と受け取れるであろう年金の総額を概算します。
単純化のため、国民年金保険料は2024年度の月額1万6980円を、また老齢基礎年金額は2024年度の満額である月額6万8000円(年額81万6000円)を用います(税、社会保険料は考慮しません)。
年金は65歳で受給開始するものとし、受給年数は、平均寿命が男性81.09歳、女性87.14歳ですので、男性は81歳到達直前までの16年間、女性は87歳到達直前までの22年間と仮定しました。
納める保険料の総額=月額1万6980円×12ヶ月×40年=815万400円
受け取れるであろう年金の総額(男性)=年額81万6000円×16年=1305万6000円
受け取れるであろう年金の総額(女性)=年額81万6000円×22年=1795万2000円
基礎年金給付の半分は国が負担しています。老後の防貧のために「半分は国が出してくれる」お得な終身年金です。
「年収458万円×40年、65歳から平均寿命まで年金受給」の収支概算
続いて、現役時代の全期間が会社員の場合です。単純化のため、国税庁調査による給与所得者の平均給与458万円で20歳から40年間働くものとします。本人負担の厚生年金保険料は給与458万円の9.15%である年額41万9070円とします(ちなみに、事業主も同じ額を負担します)。
なお、厚生年金保険料を納めると、国民年金保険料も納めた扱いで老齢基礎年金額が計算されます(2024年度は年額81万6000円)。老齢厚生年金額は次の式で目安を計算しました。
老齢厚生年金(報酬比例部分)=年収458万円×5.481÷1000×40年=年額100万4119円
納める保険料の総額=年額41万9070円×40年=1676万2800円
受け取れるであろう年金の総額(男性)=(厚生年金100万4119円+基礎年金81万6000円)×16年=2912万1904円
受け取れるであろう年金の総額(女性)=(厚生年金100万4119円+基礎年金81万6000円)×22年=4004万2618円
厚生年金保険料の半分は事業主(会社など)が負担しています。従業員の老後の暮らしを支えるために「半分は会社が出してくれる」お得な終身年金です。
100歳まで生きたら?
平均寿命は、生まれたばかりの0歳児が平均してあと何年生きるかという「0歳の平均余命」です。現在50代や60代の人の多くは平均寿命より長く生きるでしょう。受け取れるであろう年金の総額は長生きするほど増えます。
「会社員、年収458万円×40年、65歳から100歳まで36年間年金受給」の概算例は次のとおりです。
納める保険料の総額=年額41万9070円×40年=1676万2800円(前記の例と同じです)
受け取れるであろう年金の総額=(厚生年金100万4119円+基礎年金81万6000円)×36年=6552万4284円
年金は「払った分だけ受け取れる」ほうがお得?
日本の公的年金制度がもし積立方式で、国や会社の補助がない仕組みだったら、自営業なら例えば815万円、会社員なら例えば1676万円を老後に取り崩す(またはiDeCoのように、積み立てながら運用し、運用しながら取り崩す)ことになります。
加えて、物価上昇が続けば、受け取るときのお金の価値(将来の価値)は積み立てたときの価値(過去、現在の価値)よりも低くなります。また、現役世代の賃上げが続いても年金受給世代の年金は増えなくなるため、世代間の所得差は拡大します。
まとめると、積立方式は自己責任、自己完結の性格が強く、「価値の目減りリスク」と「世代間格差拡大リスク」が高いことから、「年金は払った分だけ受け取れるほうがお得」とはいえないのではないでしょうか。
出典
日本年金機構 国民年金保険料
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
日本年金機構 厚生年金保険料額表
執筆者:福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)