更新日: 2024.09.09 その他年金

病気がちなので「60歳で定年退職」しようと思います。年金をもらえる65歳までの生活費が不安です。年金を早くもらう仕組みがあるようですが、デメリットはありますか?

病気がちなので「60歳で定年退職」しようと思います。年金をもらえる65歳までの生活費が不安です。年金を早くもらう仕組みがあるようですが、デメリットはありますか?
老齢基礎(厚生)年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望により早く受け取ることも遅く受け取ることもできます。この記事では、早く受け取る場合の注意点について解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

年金の繰上げ受給とは

老齢基礎・老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。希望すれば60歳から65歳になるまでの間に、繰り上げて減額された年金を受け取ることができます。これを「繰上げ受給」といいます。逆に、66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。これを「繰下げ受給」といいます。
 
繰上げ受給を希望する場合は、60歳から65歳までの間に年金事務所で手続きを行ってください。繰上げ請求すると、請求した日の翌月分から、年金が支給されます。手続きを行った時点で繰上げ減額率が決まり、減額された年金が生涯にわたって続きますので、手続きをする時期に注意してください。
 
減額率は、繰り上げた月数×0.4%(最大24%)です。たとえば、60歳から年金をもらう場合、24%減額され(60ヶ月×0.4%)、減額率は一生涯変わりません。
 
なお、繰上げ受給は、原則として、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求をする必要があります。繰下げ受給のようにどちらか一方だけ繰り上げることはできません。
 

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繰上げ受給の注意点

繰上げ受給は、年金を早く受け取れるというメリットがありますが、次のとおり、いくつかの注意点があります。主なものを列挙します。
 
■老齢年金を繰上げ請求すると、繰上げする期間に応じて年金額が減額され、生涯にわたり減額された年金を受給することになります。老齢年金を繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取り消しすることはできません。
 
60歳で繰上げ受給をした場合、損益分岐点は、80歳が目安です。それ以上長生きすると損をします。令和4年簡易生命表によると、60歳の平均余命は、男性が23.59年、女性が28.84年となっており、男女とも80歳を超えるので、60歳で繰上げ受給すると結果的に損する可能性が高いでしょう。
 
■老齢年金を繰上げ請求すると、仕組み上65歳とみなされます。したがって、65歳までしか利用できない国民年金の任意加入や、保険料の追納はできなくなります。
 
■繰上げ請求した日以後は、60歳~64歳の妻に支給される国民年金の寡婦年金は支給されません。寡婦年金を受給中の方は、寡婦年金の権利がなくなります。
 
■繰上げ請求した日以後は、重い病気やケガで障害状態になっても障害基礎(厚生)年金を請求できません。治療中の病気や持病がある方は注意してください。
 
■繰上げ請求した老齢年金は、65歳になるまでは、遺族厚生年金や遺族共済年金などの他の年金と併せて受給できず、いずれかの年金を選択することになります。
 

まとめ

繰上げ受給には年金を早くもらえるというメリットがありますが、障害年金の請求や国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなるなどのデメリットがあります。
 
これらの内容にデメリットを感じない方でも、老齢年金を繰上げ請求した後は繰上げ請求を取り消しすることはできず、減額率が一生涯続くことは人生100年時代、大きく損をすることになります。繰上げ受給の請求は慎重に検討してください。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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