8歳下の妻がいます。年の差夫婦なら“年金の家族手当”をもらえると思っていたのに、受け取れないケースがあるって本当ですか?
配信日: 2024.10.19
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
年下の配偶者なら必ずもらえるの?
少子高齢化の日本では、働き方改革により新たな働き手として女性や高齢者が注目されています。特に出産や子育てのため仕事から離れていた女性が、将来受け取る公的年金額を増やすなら、社会保険に加入する働き方が一番といっても過言ではありません。
一方で共働き夫婦は、夫婦で社会保険に加入し年金額を増やすことができますが、共働き夫婦には家族手当である加給年金がつかないと聞いたので、働くだけ損をするのでしょうか?
製造業で働くAさんには、8歳年下の配偶者(今回は妻)がいます。休憩時間に職場の先輩と話をしていたところ、話題は年金に。先輩夫婦は、妻が年上で共働きとのことです。そのため、先輩夫婦は家族手当がつかないといわれたそうです。Aさんは、「妻が年下だから得したね」といわれました。
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加給年金の要件は“年下”だけではない
妻が年下なら受け取れる、ちょっと得した気分になったAさん。しかしながら、年金に無知なAさんは帰宅後、ネットで調べてみました。家族手当といわれているのは「加給年金」といわれ、原則、65歳到達時点で、生計を維持され要件を満たした配偶者と子がいると受け取れるとのこと。
子は原則、18歳になった年度の3月31日までとなっています。Aさんに子どもは2人いますが、すでに20歳を超えているため、該当しません。妻は8歳年下で、現在、パート仕事をしています。
妻が年下なら必ず受け取れるわけではないらしい……。では、Aさんが加給年金を受け取れる要件をあげてみましょう。
●本人の厚生年金保険と共済組合等の被保険者期間を合わせて20年以上
●本人が在職老齢年金もしくは繰下げ制度により老齢厚生年金の報酬比例部分が全額支給停止していない
妻(配偶者)側にも要件があります。生計を維持している妻(配偶者)に老齢や退職(被保険者期間が20年以上)、障害を支給事由とする給付を受け取る権利がある場合、加給年金は支給されません。特に妻の老齢や退職の年金については、全額支給停止であっても支給状態にかかわらず加給年金は支給されません。
パソコンの前でため息をつくAさん。Aさんの夫婦も共働きです。妻はパートでも、社会保険に加入しているのです。配偶者(妻)が年下であっても受け取れないのかな……。
さらにAさんは、元気なうちは働けるだけ働こうと考えています。年金の受け取る時期を遅らせて増やす、「繰下げ」しようかとも考えていました。
Aさんが加給年金を受け取れる? 受け取れない?
Aさん夫婦の本来の年金受け取り開始時期は、65歳からです。妻はパート仕事ですが、会社の規模(従業員数)により、妻自身で社会保険に加入し、給与から保険料が天引きされています。
現状のまま働き続けた場合、妻も厚生年金保険の加入期間が20年以上になってしまいます。しかし、Aさんが65歳到達時に、妻は年下のため、まだ年金の受給権を有していません。つまり、妻の厚生年金保険の加入期間が20年以上であっても、妻が65歳になるまで加給年金を受け取れる可能性のある人です。
Aさんは、加給年金が受け取れると分かり、ホッと一安心しますが、妻が65歳到達(受給権発生)まで加給年金が受け取れるかどうか、注意点をお伝えします。
(1)Aさんが65歳以降も社会保険に加入する働き方をした場合、給与が現役時代と変わらないもしくは役員になって給与が上がったなど、給与が高く、老齢厚生年金の報酬比例部分が全額支給停止されている人には、加給年金はつきません。
(2)Aさんが65歳からの老齢厚生年金を繰下げ待機した場合、加給年金は支給されません(老齢基礎年金のみ繰下げする場合は支給されます)。
まとめ
Aさん夫婦は、働き方や生活環境が大きく変わらないのであれば、加給年金を受け取ることができそうです。年金は一人ひとり、もしくは家族の在り方で異なります。不安や疑問がありましたら、専門家や年金事務所に相談してみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士