年収120万円の妻が「社会保険」に加入し、手取りが「1万4000円」減りました。将来の年金が増えるそうですが、実際何歳まで生きれば“元を取れる”のでしょうか?
配信日: 2024.10.31
東京都の協会けんぽに加入する40歳以上で年収120万円程度の人は月に1万4641円、年間17万5692円の社会保険料を負担しなければなりません。「社会保険に加入すれば将来の年金が増える」とは言われていますが、増えた分の「元をとれるのか」と疑問に感じる人もいるでしょう。
今回は、社会保険加入によって将来の年金がいくら増えるのか、何歳まで年金をもらえば元が取れるのかを見ていきましょう。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
10月から社会保険加入となるのはどんな人?
2024年の制度改定により、以下の5つ全てに該当する人は社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しなければならなくなりました。
(1)週の勤務時間が20時間以上
(2)給与が月額8万8000円以上
(3)2ヶ月を超えて働く予定がある
(4)学生ではない
(5)従業員が51人以上の企業に勤めている
月額8万8000円は年額にすると約106万円なので、この基準は「106万円の壁」と呼ばれることもあります。
これまでは(5)の基準が101人以上だったので、従業員が101人未満の会社で働く人は「106万円の壁」を意識する必要はなく、配偶者の健康保険の扶養に入れなくなる「130万円の壁」を意識していたのではないでしょうか。
しかし、2024年10月からは従業員数が51人以上に改められました。これにより51人以上101人未満の会社で勤めていた人でも「106万円の壁」を意識しなければならなくなり、(1)~(4)全てを満たした場合は、社会保険加入の義務が生じるのです。
年収120万円(月収10万円)の人は1年間に社会保険料を約17万5000円負担するため、実質的な年収が約102万5000円となってしまいます。年収を106万円(正確には105万6000円)未満に抑えて、扶養に残ったほうがお得と考える人もいるかもしれません。
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社会保険に加入すると将来の年金はいくら増える?
厚生労働省によると、年収120万円の人が1年間社会保険に加入することによって増える年金額は年額約6000円です。つまり、1年分の約17万5000円の社会保険料の元を取るために約29年かかることになります。
65歳から年金をもらうとすると、94歳ごろまで生きることでようやく1年分の元が取れる計算です。厚生労働省が発表した2023年時点での平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳なので、年金だけで元を取るのは難しいと考える人のほうが多いかもしれません。
社会保険に入ると傷病手当金がもらえる
社会保険に入るメリットは、年金の増額だけではありません。もう1つ大きいのが傷病手当金です。
傷病手当金とは、健康保険に加入している人が、業務外の病気やけがで仕事を休んだときにもらえるお金で、休んだ4日目から最大1年6ヶ月間、給与の3分の2の金額が受け取れます。
例えば、月収10万円の人の場合、1日あたり2180円、1ヶ月半(45日)休むと9万1560円もらえるのです。傷病手当金が出ることによって、無理に働こうとせず、病気やけがの治療に専念できるのは大きなメリットと言えそうです。
社会保険にはメリットとデメリットがある
10月から社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象が拡大され、強制加入となった人もいるでしょう。社会保険加入のデメリットは、社会保険料を負担しなければならないことで、年収120万円の人の負担額は年額約17万5000円と決して小さくありません。
年間約17万5000円の社会保険料を負担しても、増える年金は年額約6000円。94歳までもらい続けてやっと1年分の元がとれる金額です。年収が106万円未満になるように仕事を減らしてもらい、扶養に残ったほうが良いと考える人もいるでしょう。
しかし、年金が増えるほかにも、万一病気やけがで働けなくなったときに傷病手当金がもらえること、さらに「130万円の壁」を気にせず働けることは大きなメリットです。
将来の年金や万一のことも考えながら、社会保険に加入するか、しなくてもいいように仕事を減らしてもらうか検討してください。
出典
厚生労働省 社会保険加入のメリット
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士