67歳、年金が「12万円」なのでダブルワーク中です。年金と給与で「月収40万円」ほどですが、友人に「稼ぐと年金が減らされる」と言われました。今のところ減っていないのですが、なぜでしょうか?
配信日: 2024.11.12
こうした高齢者の大部分は老齢年金を受給しながら働いていますが、給与と年金との関係はどうなっているのでしょうか? 本記事では、在職老齢年金の制度について説明します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
年金の支給停止
年金と給与の合計が一定額を超えると年金が支給停止される「在職老齢年金」という制度があります。在職老齢年金が適用されるのは(つまり年金が減らされるのは)、厚生年金保険の被保険者が、同時に老齢厚生年金の受給者である場合です。
在職老齢年金とは
在職老齢年金の制度により、次に該当するときは、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。
老齢厚生年金の月額+総報酬月額相当額>50万円
総報酬月額相当額とは、標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与の合計額のことです。直近1年間の賞与を12ヶ月で割った1ヶ月相当額も含まれるので注意しましょう。
年金の支給停止はどのくらい?
年金月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えた場合、次の額の年金が支給停止されます。
(年金月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
つまり厚生年金の月額と給与(賞与分を含む)の合計額が50万円を超えると、超えた分の2分の1が支給停止されることになります。
老齢厚生年金を1ヶ月14万円、給与(標準報酬月額)が36万円、直近1年間の賞与が48万円という人で考えてみましょう。年金月額と総報酬月額相当額の合計は
年金月額14万円+標準報酬月額36万円+賞与48万円÷12(ヶ月)=54万円
年金月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えていますので、計算式に当てはめると
54万円-50万円÷2=2万円
54万円になるため、支給停止は2万円です。
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年金が停止されないのはなぜ?
タイトルの例では「厚生年金が月12万円、給与が40万円超」ということですから、老齢厚生年金の支給停止がありそうです。なぜ支給停止されないのでしょうか?
支給停止の対象
在職老齢年金の制度により老齢厚生年金が支給停止されるのは「厚生年金の被保険者」である場合です。つまり勤務先が厚生年金適用事業所でなかったり、または社会保険の加入要件を満たさない働き方をしていたりする場合は、その事業所からの給与は在職老齢年金の対象となりません。
例えばダブルワークの片方(または両方)が、勤務時間が短かったり、雇用契約ではなく業務委託契約だったりする場合は、そこからの収入は在職老齢年金の計算にカウントされないわけです。
ダブルワークの場合は
タイトルの「厚生年金が12万円、給与の合計が40万円くらい」の人が、仮に次のような働き方をしていたとしましょう。
A社 常勤・社会保険加入 1ヶ月の給与 26万円
B社 非常勤・社会保険加入なし 1ヶ月の給与 14万円
この場合、社会保険(厚生年金保険)に加入していないB社の分は、在職老齢年金の計算に算入されません。老齢厚生年金12万円とA社の給与26万円の合計は38万円です。50万円に満たないため、老齢厚生年金は満額支給されます。
タイトルの人が支給停止されていない理由は、このような働き方をしているためかもしれません。
まとめ
在職老齢年金の制度は1965年に導入された歴史ある制度です。しかし「長年働いた成果の老齢厚生年金なのに、給料が多いからといって停止されるのは我慢ならない」という人もいるでしょう。そうした場合は、厚生年金が適用されない労働条件で働いたり、業務委託契約の仕事を取ったりするなど、働き方を工夫してみてはいかがでしょうか。
出典
総務省 統計からみた我が国の高齢者
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 [年金制度の仕組みと考え方]第10 在職老齢年金・在職定時改定
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士