50代会社員、個人年金保険が気になっています。長生きリスクに個人年金保険の“終身年金”が有効だと聞いたのですが、どういうものなのでしょうか?

配信日: 2024.12.19

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50代会社員、個人年金保険が気になっています。長生きリスクに個人年金保険の“終身年金”が有効だと聞いたのですが、どういうものなのでしょうか?
日本の平均寿命を超え長生きすることは、珍しいことではありません。長生きリスクへの対応に有効とみられる個人年金保険に終身年金があります。終身年金のひとつに、より年金額を大きくした仕組みの「トンチン年金」があります。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

長生きリスクに備える必要性

令和5年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は年々上昇しており、男性が81.09歳、女性が87.14歳となっています。2070年には、男性85.89歳、女性91.94歳まで上昇すると推計されています。
また、平均余命を見ると、85歳の男性は6.29年、90歳の女性は5.53年となっています。全国の100歳以上の高齢者は2023年に9万5000人あまりと、54年連続で過去最多となっており、“人生100年時代”は間近に迫っているといえます。
 
一方、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、男性が72.68歳まで、女性が75.38歳までとなっています。平均寿命と健康寿命の差というのは、日常生活に制限がある「不健康な期間」ですが、2019(令和元)年では男性8.73年、女性12.06年となっています。この期間は、働いて収入を得ることが難しいので、健康に配慮する一方で、こうした期間に対する収入等の備えが重要になります。
 

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個人年金保険

個人年金保険は、払込保険料のなかから資金を積み立て、それを原資に契約時に定めた年齢から年金を受け取れる仕組みです。
 
年金を受け取る期間により、「確定年金」「保証期間付終身年金」「有期年金」があります。
 

■確定年金

年金受取開始後、被保険者の生死に関係なく契約時に定めた一定期間、年金を受け取れます。
 

■保証期間付終身年金

年金受取開始後、保証期間中であれば被保険者の生死に関係なく年金を受け取ることができ、その後は被保険者が生存している限り一生涯年金を受け取れます。
 

■有期年金

年金受取開始後、契約時に定めた一定期間中、被保険者が生存している限りずっと年金を受け取ることができます。
 
人生100年時代に備えるには、「終身年金」や「保証期間付終身年金」が安心です。
 

トンチン年金の特徴

名称は、イタリア人のロレンツォ・トンティが考案した保険制度に由来しています。
通常の個人年金保険では、年金受取開始日前に死亡した場合、それまでに払込済みの保険料に応じ、死亡給付金を受け取ることできます。
 
一方で、現在の日本で販売されているトンチン年金(加入可能年齢は50歳以降)は、死亡時の保障を抑え、さらに年金受取開始日前の解約払戻金を通常の70%など低くして、その分を生きている人の年金原資に回すことで、長生きしたときにより多くの金額を受け取れる仕組みになっています。保証期間付き終身年金や保証期間付き有期年金(30年など長期)があります。
 
トンチン年金の保険料についても、一般生命保険料控除とは別枠で、所定の要件を満たせば個人年金保険料控除(所得控除)の適用が受けられます。
 
たとえば、K社のトンチン年金(保証期間付有期年金)を見てみましょう。
年金額10万円、年金支払期間30年、保証期間20年、年金支払い開始年齢70歳の契約内容で、50歳女性が加入した場合の月払い保険料は1万340円となっています。
払込期間は20年間なので、保険料払込総額は248万1600円となります。
したがって、保証期間中(70歳~90歳)のすべての年金200万円を受け取った場合の返戻率は80.5%、年金支払期間中(70歳~100歳)のすべての年金300万円を受け取った場合の返戻率は120.8%です。
 
受取総額が払込総額を超える年齢は約95歳です。95歳より長生きすれば、保険料払込総額よりも多くの年金を受け取ることができます。
 

まとめ

公的年金の受給額が将来的に減額された場合に備えて、減額分を補うトンチン年金は選択肢のひとつです。
しかし、現在のトンチン年金は平均余命以上に長生きしないと元が取れないので、公的年金だけでは老後資金が十分でなければ、iDeCo(個人型確定拠出年金)や新NISA(少額投資非課税制度)で老後資金を確保することをお勧めします。
 
また、働けるうちはしっかり働き、繰り下げ受給をして公的年金を増や方法も検討しましょう。
 

出典

厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
厚生労働省 第4回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会 資料4
内閣府 令和5年版社会高齢白書(全体版) 第1章 高齢化の状況(第2節 2)
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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