年金を「全額」もらいながら働くことはできますか? 年金が支給停止になるボーダーラインを教えてください

配信日: 2025.01.25

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年金を「全額」もらいながら働くことはできますか? 年金が支給停止になるボーダーラインを教えてください
老後も働く人がどんどん増えていますので、年金を受け取りながら働いているという方も多いでしょう。しかし、一定以上の給料をもらうと年金の一部が支給停止になります。本稿では、支給停止になるボーダーラインを解説します。
仁木康尋

執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)

日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。

年金の一部支給停止

老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険の被保険者になって働く場合には、一定の条件のもとで年金の支給額の一部が支給停止となります(老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給)。
 
なお、平成19年4月以降に70歳に達した方は、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務する場合は、厚生年金保険の被保険者にはなりませんが、同様に扱われます。
 

【一定の条件】

下記(1)(2)の合計が50万円を超える場合に該当します。
(1) 老齢厚生年金の基本月額(※1)
(2) 総報酬月額相当額(※2) 

 

【支給停止額】

支給停止となる額は以下の方法で算出します。
 
((1)基本月額+(2)総報酬月額相当額-50万円)÷ 2
 
つまり、50万円を超えた額の半分の額が年金からカットされます。
 
(※1)基本月額
老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額です。なお、加給年金額は除きます。また、年金基金に加入していた期間がある場合は、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した老齢厚生年金の年金額をもとに基本月額を算出します。
 
(※2)総報酬月額相当額
給与月額に年間の賞与を月割り換算した額を加えた額のことです。「その月の標準報酬月額(※3)」+「その月以前1年間の標準賞与額(※4)の合計÷ 12」
 
(※3)標準報酬月額
「報酬」とは基本給のほか役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えたもので、臨時に支払われるものや3ヶ月を超える期間ごとに受ける賞与等を除きます。
 
そして、上記報酬月額を1等級から32等級までの32等級に分け、その等級ごとに定めている額を「標準報酬月額」といいます。そのため、実際の報酬月額とは若干異なります(表1参照)。
 
(※4)標準賞与額
その月に支払われた賞与額の1000円未満を切り捨てた額です。また、名称が賞与でなくても、労働の対価として受けるすべてのもののうち、3ヶ月を超える期間ごとに受けるものも賞与として扱います。また、70歳以上の方の場合には、「標準賞与額に相当する額」として取り扱います。
 

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支給停止になるボーダーラインの目安

それでは、支給停止になるボーダーラインの確認の仕方について解説していきましょう。
 

<手順1>

老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額を調べます。すでに受給している方は「年金決定通知書・支給額変更通知書」等で確認ができます。
 
これから受給が始まる方の場合には、ねんきん定期便を確認すると老齢厚生年金(報酬比例部分)の見込み額(年額)が記載されているので、12等分をすれば概算を知ることができます。また、ねんきんネットでも確認できます。
 

<手順2>

上記手順1で確認した額を50万円から引きます。自分の老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額がわかったら、その額を50万円から引きます。その額が年金を全額もらいながら働く際の収入(月の給与+過去1年間の賞与を月額換算した額)の上限の目安です。
 

【例】

老齢厚生年金(報酬比例部分)が11万8000円だった場合、
50万円 - 11万8000円 = 38万2000円 
38万2000円が、年金を全額もらいながら働く場合の月の収入(賞与の月額換算分も含む)のボーダーラインです。

 
なお、もう少し厳密な算出をする場合には標準報酬月額(表1参照)で判断します。
 
この事例の場合は、表の標準報酬月額が38万円にあたる23等級以下に抑える必要があります。23等級の報酬月額は37万円以上39万5000円未満ですので、総報酬月額相当額(給与月額に年間の賞与を月割りした額の合計)のボーダーラインは39万5000円です。
 


 

まとめ

年金の繰下げ受給を選択し、年金を受給していない場合にも注意が必要です。
 
繰下げ受給による割り増しを満額受けられないことがあります。繰下げ期間中で実際に年金を受給していなくても、年金を受給していた場合と同じように支給停止があるからです。支給停止になった部分は繰下げ受給による割り増しの対象外になってしまうので注意しましょう。
 

出典

日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 年金決定通知書・支給額変更通知書
日本年金機構 ねんきん定期便見本(令和6年度「ねんきん定期便」50歳以上の方(表)令和6年10月〜)
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版) (標準報酬月額)
 
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

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