会社員で「iDeCo」が気になってたけど、「退職所得控除が改悪」というニュースを見て心配に。改悪するなら、今から始める必要はないですよね…?
本記事では、税制改正大綱で決まったiDeCoの改正点の中でも「5年ルール」の変更に焦点を当てて紹介しつつ、「改悪するならiDeCoを始めないほうが良いのか? 」という疑問に対しても回答します。
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iDeCoの「改悪」といわれる「5年ルール」の変更とは
iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金のことで、自分で掛け金を積み立てて金融商品に投資し、最短60歳以降に元金と利息の合計額を受け取れるという私的年金です。
将来にお金を受け取る方法としては「一時金」「年金」の2通りがあります。一時金で受け取る場合、原則60歳に達したら75歳になるまでの間に一括で受け取れ、年金として受け取る場合、原則60歳に達したら5年以上20年以下の期間で受け取れます。一時金と年金の併用も可能です。
今回紹介する「5年ルール」は一時金での受け取りに関係する話です。
一時金で受け取る際に適用される退職所得控除
「5年ルール」の前提として、iDeCoの退職所得控除について確認しておきましょう。
iDeCoは受け取り時に「一時金」を選択することでまとまった資金を一度に得ることができ、受け取り時には、税制メリットが大きい「退職所得控除」が適用されます。
退職所得控除の金額は、iDeCoの加入年数によって計算式が異なります。
加入年数20年以下の退職所得控除:40万円×加入年数
加入年数20年超の退職所得控除:800万円+70万円×(加入年数-20年)
例えば、加入年数が30年であれば「800万円+70万円×(30年-20年)」となり、受け取る金額のうち1500万円が非課税になります。一時金の金額が2000万円になった場合の退職所得額は(2000万円-1500万円)×1/2=250万円です。
所得税率が20%、住民税率が10%と仮定した場合、所得税は250万円×20%=50万円、住民税は250万円×10%=25万円で、合計75万円を税金として納める計算になります。
退職金とiDeCoを同時に受け取ると税金負担が増える可能性がある
退職所得控除を適用できるのはiDeCoだけでなく、会社を退職する際に受け取れる退職金も対象です。
この場合、受け取り額は退職金とiDeCoの金額が合算されますが、加入年数は会社の勤務年数とiDeCoの加入期間のうち、控除額の大きいほうのみが適用されます。
例えば、40年勤めて受け取った退職金2000万円と、30年間積み立てたiDeCoの元本と利息の合計2000万円を同時に受け取る場合、勤続年数40年で4000万円の収入があったと判断されます。
iDeCoを受け取ってから退職金を受け取るまで5年以上あれば両方が控除される
ここからは「5年ルール」について解説します。
5年ルールとは、退職所得控除額に関するルールで、iDeCoの一時金の受け取り時期と退職金の受け取り時期を5年あけて受け取ることで、退職所得控除を両方に適用できるというものです。
例えば、iDeCoの一時金を60歳で受け取った後、会社の退職金を65歳で受け取ることで両方に退職所得控除を適用できます。
退職金とiDeCoを同時に受け取ると税金が増える可能性があるため、退職金がある人は退職所得の5年ルールを適用して、受け取り時期を遅らせるのがこれまでのセオリーでした。
2024年の税制改正大綱では「10年ルール」に変更された
今回の税制改正では、前述の5年ルールが「10年ルール」に変わったことが、「改悪した」といわれる理由です。
2026年1月1日以降は、企業型DCやiDeCoを一時金で受け取ったあと、「10年」という長い期間をあけて退職一時金を受け取らなければ、それぞれに退職所得控除が適用できなくなるというわけです。
「10年ルール」になったからと言ってiDeCoを始めないほうが良いわけではない
60歳で企業型DCまたはiDeCoを受け取ってから10年間会社で働き、70歳で退職一時金を受け取るのは難しく、実質的に負担増になると言われています。
ただ、10年ルールになったからと言って、iDeCoには加入しないほうが良いと言い切ることはできません。
まず、10年ルールになっても、退職所得控除の「2分の1課税」の仕組みはそのままです。これまで通りの節税とはいかずとも、引き続き節税の効果は期待できます。
また、iDeCoの運用期間中のメリットも見逃してはいけません。運用中の利益は全て非課税であり、拠出した掛け金は全額所得控除になっており、所得税や住民税を減税できるメリットも健在です。
現役時代の税金を節税できるメリットは新NISAにもないiDeCoのメリットであり、できるだけ長く続けて、節税と資産形成を同時に進めることを検討したほうが良いでしょう。
まとめ
今回の税制改正では、10年ルールへの変更だけでなく、「企業型DCの掛金額の上限の増額」や、「マッチング拠出時に企業の掛け金に関係なく上限まで拠出できるようになる」などメリットになる改正ポイントも多くあります。
改正によるメリット・デメリットの両方を比較し、改正後も変わらないiDeCo本来のメリットも加味したうえで、始めるか否かを検討しましょう。
出典
自由民主党・公明党 令和7年度税制改正大綱
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
