70歳まで働く予定ですが、年金額は減らしたくありません。給料がいくらまでなら「全額」受け取れますか?
今回は、働きながら年金を全額受け取れる条件や、働きながら受給するとどれくらい金額が変わるのかなどについてご紹介します。
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働きながら年金を全額受け取れる条件とは?
働きながら受給する年金を「在職老齢年金」と呼びます。日本年金機構によると、給与収入と老齢厚生年金額の合計が50万円(令和6年度の支給停止調整額)を超えた場合、老齢厚生年金の一部もしくは全額が支給停止となり、受け取る年金額は減少します。
例えば、老齢厚生年金額が月に15万円だとすると、賞与を含む月収が35万円を超えていれば減額されます。
支給停止される金額は「{(総報酬月額相当額+老齢厚生年金の基本月額)-50万円}×2分の1」です。
なお、日本年金機構によれば、総報酬月額相当額は「(該当月の標準報酬月額+該当月より前の1年間の標準賞与合計額)÷12」です。標準報酬月額は、税引き前の給与を一定額ごとに等級で区分し、本人の給与を該当する等級に当てはめた金額をいいます。標準賞与額は、税引き前のボーナスから1000円未満を切り捨てた金額(支給1回の上限は150万円)です。
年金を受け取りながら働くメリット
一定金額を超えない範囲であれば、年金を受給しながら厚生年金保険に加入して働くと毎年老齢厚生年金額が増加する点がメリットです。日本年金機構によると、毎年9月1日(基準日)時点で次の条件に当てはまる方の前年9月から当年8月までの厚生年金保険加入期間を反映して、年金額を毎年10月分(12月に受け取る分)から改定されます。
・65歳以上70歳未満である
・老齢厚生年金の受給権を有している
65歳以降で働きながら受給していた場合の年金の見直しを「在職定時改定」といいます。
70歳まで在職定時改定されたときの年金額
例えば、以下の条件で年収360万円の方が70歳まで働いたときに、年金受給額が毎年いくらになるのかを計算しましょう。
・国民年金は満額納めている
・老齢基礎年金額は令和6年度のものを使用する
・報酬比例部分(年金額の計算の基礎となる数値)を老齢厚生年金額とする
・厚生年金の加入開始は22歳からで平成15年4月以降
・年収は毎年360万円(賞与なし)で変わらない(平均標準報酬額が30万円)
まず、令和6年度の老齢基礎年金の満額は81万6000円、月額6万8000円です。また、日本年金機構によれば、報酬比例部分は「平均標準報酬額×0.005481×厚生年金の加入月数」で求められます。
条件を基にすると、平均標準報酬額は30万円となるため、65歳時点で受け取る老齢厚生年金額は約84万8459円で月額約7万705円、年金は合計約166万4459円、月額約13万8705円です。
66歳以降も働いていると、年金額は表1のように増加します。
表1
| 年齢 | 老齢厚生年金額 | 老齢厚生年金月額 | 合計年金受給額 |
|---|---|---|---|
| 66歳 | 約86万8190円 | 約7万2349円 | 約168万4190円 |
| 67歳 | 88万7922円 | 約7万3994円 | 約170万3922円 |
| 68歳 | 約90万7654円 | 約7万5638円 | 約172万3654円 |
| 69歳 | 約92万7385円 | 約7万7282円 | 約174万3385円 |
| 70歳 | 約94万7117円 | 約7万8926円 | 約176万3117円 |
※筆者作成
表1からも分かるように、今回の条件では老齢厚生年金の月額と標準報酬月額の合計が50万円を超えないため、70歳まで働いても全額を受け取りながら年金額も毎年増やせます。
老齢厚生年金の月額と月収の合計が50万円を超えない程度が目安になる
定年後も年金を受け取りながら働く場合、月に受け取る給与と老齢厚生年金の月額が合計50万円を超えていると、一部もしくは全額が支給停止になる可能性があります。少しでも減らしたくないときは、自分の年金額がいくらかを確認しておくとよいでしょう。
基準を超えない範囲であれば、年金を受給しながら厚生年金保険に加入して勤務すると毎年年金額が増加します。老後の収入を増やしたい場合に有効な方法といえるでしょう。
出典
日本年金機構 働きながら年金を受給する方へ
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
