いろいろあって60歳で「早期退職」する予定です。繰上げ受給するならいつからがお得ですか?

配信日: 2025.02.19 更新日: 2025.02.20

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いろいろあって60歳で「早期退職」する予定です。繰上げ受給するならいつからがお得ですか?
Aさんはもうすぐ60歳、職場環境やご自身の「気持ち」の面などいろいろあって、60歳で早期退職する予定だそう。「繰上げ受給をするならいつからがお得ですか?」とのご相談です。損益分岐点から探ってみましょう。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

繰上げ年金額の計算方法

繰上げ受給すると、65歳から受給開始する年金額(本来の年金額)から、次のとおり1ヶ月単位で減額されます(※1)。
 
繰上げ減額率=0.4%*×繰上げた月数(60歳~64歳、最大60ヶ月)
* 2022年4月1日以降の60歳到達者は、1ヶ月あたり0.5%から0.4%に改正。
 
仮に64歳から受給すると4.8%、最大60歳まで繰上げると24%の減額となり、減額された金額は生涯変わりません。また、あとから繰上げを取り消すこともできません。
 

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本来の受給額に追い抜かれるのは何歳?

繰上げた年齢からの受給総額(累積)を、本来の年金総額が上回る損益分岐点を確認します。
 
試算には、2024年度のモデル年金額から算出した標準的な年金月額16万2483円(厚生年金9万4483円、基礎年金6万8000円)を用います(※2)。
 
これが本来の年金額です。では、この金額を使って繰上げ受給した場合の損益分岐点を次の表で見てみましょう。金額は、受給開始年齢ごとに右側の各年齢に達するまでに受給した年金総額です。
 
例えば、60歳から繰上げる場合、79歳までの年金受給累計額は、
16万2483円/月×(1-0.24)×240ヶ月=2963万7000円
です。
 
なお、79歳とは79歳の12ヶ月目を指します。
 
本来の年金総額が、繰上げた受給総額を上回った場合に、表1 のように赤線で損益分岐点の境界を引いています。
 

 
60歳から繰上げた場合の損益分岐点は80歳ということです。80歳以降、支給総額は逆転し差が拡大します。また、損益分岐点は年金額にかかわらず同じです。
 
なお、税・社会保険料負担や諸控除は考慮していない、いわゆる額面の金額であることにご留意ください。
 

お得な開始時期とは?

表を見ると、損益分岐点は令和5年平均寿命の男女の中間値である84歳までに、開始年齢と同じく1年のずれで到達しています(※3)。つまり、いつ繰上げても損益分岐点の頃まで生きるなら、繰上げた年齢相互に、そして本来の年金額との間にも、さほど大きな合計の金額差は生じないということです。
 
また、「早死にするといけないから60歳からもらったほうがいい」という声を聞きます。もし65歳で亡くなることが分かっていればそのとおりです。
 
しかし、寿命のタラレバを前提に安易に繰上げるのは危険です。本来の年金額との差が広がる損益分岐点以降の収支も考慮が必要です。現在60歳なら、少なくともその平均余命である80代半ばから後半まで(※3)の受給計画を立てるべきです。
 
このように、「いつがお得か」を計るのに、損益分岐点までの期間や受給総額比較だけでは決め手に欠けるようです。比較するにしても、繰上げ期間中だけでなく生涯にわたる家計収支の見通しが必要でしょう。
 
金額面の差異を知った上で、収入が必要な時に最も年金が役立つ繰上げ時期を選ぶこと。それがAさんにとって一番「お得」な選択といえるのではないでしょうか。
 
預貯金や他の流動資産を使うタイミング、そして今後のライフイベントも加味し、最も収支が厳しくなる時期に年金を効果的に生かすよう、開始時期を決めるということです。
 

個々のケースは手取り額で

税・社会保険料を差し引いた「手取り額」で比べると、早く受給し年金額が低いほど、65歳から本来の年金額との差が縮まる場合があります。
 
これは、65歳から「公的年金等控除額」が60万円から110万円に拡大するからです。基礎控除や配偶者控除も加えると、受給額や諸条件によっては課税対象額がゼロ、ひいては社会保険料の大幅低減、住民税非課税世帯に該当、という場合もあります。
 
手取り額が65歳以前より増えるだけでなく、本来の年金額とさほど変わらないケースも出てきます。
 
実際の手取り額でシミュレーションしたほうが現実味は増しますよね。「手取り」で比較すると、お得な開始時期の優先度や選択肢が変わるかもしれません。
 
なお、退職金や企業年金、個人年金があるなら、公的年金の受給時期はもっと柔軟に考えられます。繰上げない選択肢が現れるかもしれません。
 
今後、Aさんがパートで働く可能性をも含めると、このあと考えられる収入の種類や資産をすべて並べた上で、年金の出番を決めてはどうでしょうか。今後のお金の使い方の全体像から、本当に「お得」な年金の使い方、開始時期が見つかるはずです。
 

出典

(※1)厚生労働省 [年金制度の仕組みと考え方] 第11 老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給
(※2)厚生労働省 令和6年度の年金額改定について
(※3)厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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