自分の寿命がいつまでかわからないので、年金の「繰下げ受給」は「損」をしてしまうのでは? どのようなメリットがあるのでしょうか?
配信日: 2025.02.22

しかし、ご相談のように「自分の寿命がいつまでかわからないので、結果として損をしてしまう気がする」と思う方もいらっしゃるかもしれません。今回は、繰下げ受給のメリットを整理するとともに、その注意点をお伝えします。

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
繰下げ受給の仕組み
年金の受給開始年齢を迎える人から、このような不安を持っている問い合わせを多く寄せられます。まず、繰下げ受給の仕組みについて確認しましょう。
繰下げ受給とは、通常の年金受給開始年齢(65歳)を遅らせることです。1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増加します。最大で75歳まで繰下げ可能で、この場合、年金額は、0.7 %×12×10=84%増加します。
例えば、自営業者の第1号被保険者の方で満額納付済みの場合、老齢基礎年金は年額約78万(月額換算6万5000円)ですが、これを75歳まで繰り下げた場合は、年額約143万5200円(月額換算11万9600円)になると試算されます。そして増額された年金額が一生涯変わらず受け取れます。
繰り下げる年齢は、自分で決められます。本来の65歳を66歳からにしても70歳にしても、75歳からと繰り下げる期間を選べます。なお、繰下げ受給を希望する場合は、66歳以後で繰下げ受給を希望する時期に手続きをします。その時点で増額率が決定します。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
繰下げ受給のメリット
繰下げ受給のメリットは以下のとおりです。
1.年金額の増加
繰り下げた期間に応じて年金額が増えるため、長生きすればするほど「受け取れる総額」が増加します。
ケース1:75歳没の場合
65歳で受け取る年金を100として、11 年間受給して75 歳で亡くなるとすると受給総額は、100×11=1100
1年間繰下げ66歳から受け取ると受給額は108.4。同じく75歳で亡くなると10年間受給なので、受給総額は108.4×10=1084です。75歳で亡くなる場合は、繰下げせずに受給したほうが総額は多いという結果です。
ケース2:85歳没の場合
同じように計算すると、繰下げせずに21年間受給した場合の総額は2100
66歳から受給する場合は、108.4 ×20=2168
85歳で亡くなる場合は、1年繰り下げたほうは、総額が多くなります。
この要領で計算していくと、1年繰下げの場合は76歳、2年繰下げの場合は77歳、3年繰下げでは78歳を超えると、繰り下げたほうが総額は多くなるという試算結果が得られます。
2.インフレへの対応
年金額が多くなれば、物価や生活費の上昇に対して余裕を持ちやすくなります。
3.税金や社会保険料の負担軽減
繰下げ期間中は年金を受け取りません。つまり、所得税や住民税の負担が一時的に減少します。また、医療保険料などの計算対象額が下がる可能性があります。
注意点とデメリット
次に、繰下げにあたっての注意点、デメリットについて確認しましょう。
1.お得になるのか否かは寿命しだい
先にも示したとおり、繰り下げておいて、受給開始年齢に到達して短期間で亡くなる場合には、受給総額として考えた場合はお得ではない場合があります。ただ、こればかりは何ともわかりません。
2.繰下げ期間中の生活費の手当
繰下げ期間中は年金を受け取らないため、生活費を預貯金や他の収入で賄う必要があります。将来を夢見るより、まず足元の現実を固める必要があります。
3.家族への影響
受給者が亡くなった場合、遺族年金には繰下げによる増額分は反映されませんので慎重に検討する必要があります。
繰下げ受給をお勧めするケース
繰下げ受給をお勧めできるケースとして以下の場合でしょう。
1.健康状態が良好な場合
2.他に生活費の備えがある場合
繰下げ期間中も生活費に困らないだけの預貯金や退職金、他の収入源がある場合は繰下げを検討するとよいでしょう。
3.税金や保険料の負担を軽減したい場合
繰り下げることで一時的に課税所得を減らすことが可能です。
繰下げに対する不安や迷いへの対応
「寿命がわからないので損をするかも」と感じるのは自然なことです。この不安を軽減するために、検討できる選択肢は以下のとおりです。
1.一部繰下げを検討する
老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金は別々に繰下げができます。どちらかだけを繰り下げ、他方は通常の65歳から受け取る方法もあります。このように部分的に調整することでリスクを分散することを検討してみてはいかがでしょうか。
日本年金機構の「ねんきんネット」にログインすると、年金受給額を確認するだけでなく、さまざまなシミュレーションを行えますので時間を見つけて確認してみましょう。
2.少額からでも老後資金を確保する
繰下げ期間中の生活費を補うため、NISAやiDeCoを活用して余裕を持たせる準備を万全にしておきましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者