夫は現在「年収1000万円」の収入がありますが、私は専業主婦なので収入がありません。この場合、将来の年金額はどのくらいになるのでしょうか?
配信日: 2025.03.16

老齢基礎年金は年金保険料を支払った期間などに応じて、老齢厚生年金は在職中の報酬と被保険者期間の月数に応じて年金額が決まります。今回は、年収1000万円の夫と専業主婦の夫婦の老齢年金額について解説します。

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
老齢基礎年金の受給要件と年金額
老齢基礎年金は、受給要件を満たす方が原則65歳から受給でき、年金額は20歳から60歳までの40年間に国民年金保険料を納付した月数や厚生年金の加入期間などに応じて計算されます(※1)。
老齢基礎年金の受給要件
老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上であることが受給要件となります。
老齢基礎年金額の年金額
老齢基礎年金の額は、図表1の式のとおり計算されます。
【図表1】
20歳から60歳になるまでの40年間、全ての月が保険料納付済である場合、満額の81万6000円(令和6年度額)の老齢基礎年金が支給されます。
一方、40年間の内、第1号被保険者であった期間に国民年金保険料を支払っていない月がある場合は、その月数分減額されます。また、保険料の全額または一部免除期間がある場合は、免除の割合および免除された月数に応じて減額されます。
なお、保険料納付済期間とは、自営業などで第1号被保険者として国民年金保険料を支払った期間および厚生年金の被保険者である第2号被保険者、または第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者であった期間をいいます。
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老齢厚生年金の受給要件と年金額
老齢厚生年金の受給要件
老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給要件を満たす方に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして65歳から受け取ることができます(※2)。
老齢厚生年金額の年金額
老齢厚生年金は、以下のとおり報酬比例部分、経過的加算、加給年金の合計額になります(※2)。
老齢厚生年金の額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金
1. 報酬比例部分の算定方法
報酬比例部分は、年金額の計算の基礎となるもので、年金の加入期間や過去の報酬などに応じて、以下の計算式で求められます(※3)。
報酬比例部分=平均標準報酬額×5.481/1000×加入期間の月数(注2)
注2:平成15年3月以前の加入期間の計算式は異なります。
計算に用いられる平均標準報酬額とは、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入期間で割って得た額です。
平均標準報酬額=(標準報酬月額の総額+標準賞与額の総額)÷加入期間の月数
なお、標準報酬月額とは、厚生年金の保険料を決定する際に用いられる値で、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定されるもので、現在は1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています(※4)。
【図表2】
厚生年金の被保険者は、標準報酬月額に保険料率9.15%を掛けて算出される保険料を毎月支払います。報酬月額が63万5000円以上の高収入の方は、標準報酬が上限の65万円に限定されており、老齢厚生年金額が抑えられる代わりに、保険料も上限の月額5万9475円になります。
また、標準賞与額とは、実際の税引き前の賞与額から1千円未満の端数を切り捨てたもので、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となります。
なお、年4回以上支給される賞与については、標準報酬月額の対象となる報酬とされ、標準賞与額の対象となる賞与とはされません。賞与に対する保険料は、標準賞与額に保険料率9.15%を掛けた額となります。
2. 経過的加算とは
昭和36年の年金制度改正に伴う影響を緩和するために導入された制度です(※2)。
経過的加算=1701円(注3)×被保険者期間の月数(注4)-81万6000円(注5)×(対象月数/480月)
対象月数=昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の厚生年金の被保険者月数
注3:昭和31年4月1日以前生まれの方の数値は異なります。
注4:昭和21年4月2日以後生まれは480月を上限
注5:令和6年度の値
昭和36年以降で20歳から60歳まで厚生年金の被保険者であった方の経過的加算は、下式のとおり480円とわずかですので、今回の説明では省略します。また、この場合、40年以上加入期間があっても額が増えることはありません。
経過的加算:1701円×480月(上限)-81万6000円×480月/480月=480円
3. 加給年金とは
加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点で、その方に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます。配偶者に対する加給年金の額は、特別加算額を加えて40万8100円(令和6年度額)です(※6)。
配偶者:65歳未満
子ども:18歳到達年度の末日まで(1級・2級の障害の状態にある場合は20歳未満)
夫婦の老齢年金の受給額は
年収1000万円の夫と専業主婦で年下の妻に支給される老齢年金額について解説します。
夫の老齢年金額
夫は、20歳から65歳になるまで会社員として年収1000万円で働くと仮定します。現実的には、20歳から65歳まで年収が1000万円であることは考えにくいのですが、ここでは便宜的に、45年間の年収が一定で1000万円であったものとしています。
なお、報酬月額が63万5000円以上の場合、老齢厚生年金に反映される標準報酬は65万円が上限となります。よって、年収762万円を超える方については、超えた分を賞与として受け取る場合は年金額が増えることになります。
1. 夫の老齢厚生年金額(報酬比例部分)
(1)年収の内訳が全て月給であった場合(平均標準報酬額:65万円)
年収1000万円の内訳が月給のみである場合、報酬月額は12月で割って83万3333円となりますが、標準報酬額は上限の65万円となります。65万円の標準報酬額が45年間継続したとすると、老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は下式のとおり192万3831円となります。
報酬比例部分:65万円×5.481/1000×45年×12月=192万3831円
(2)年収の内訳が賞与と月給であった場合(平均標準報酬額:84万8333円)
年収1000万円の内訳を、月給として762万円、残りを2回の賞与に分けて各119万円で受け取った場合、報酬月額は上限の63万5000円、このときの標準報酬は65万円となります。その結果、1年間の平均標準報酬額は下式のとおり84万円となります。
平均標準報酬額(1年間)=(65万円×12月+119万円×2回)/12月≒84万8333円
平均標準報酬額84万8333円で45年間働いた場合の老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は、下式のとおり251万845円となります。
報酬比例部分:84万8333円×5.481/1000×45年×12月≒251万845円
2. 加給年金
夫より妻が年下の場合、妻が65歳になるまでは加給年金40万8100円が夫に支給されます。
3. 老齢基礎年金
夫は、20歳から60歳まで会社員でしたので、65歳から満額の老齢基礎年金81万6000円を受給することができます。
妻の老齢年金額
結婚後は第3号被保険者である専業主婦の妻が、20歳から結婚するまで会社員であったか、第1号被保険者として国民年金保険料を支払っていた場合、65歳から満額の老齢基礎年金81万6000円が支給されます。
夫婦の老齢年金額
20歳から65歳まで年収1000万円の会社員であった夫と、妻が年下の専業主婦の場合の老齢年金額は、夫の平均標準報酬額に応じて図表3, 4のとおりとなります。
【図表3】 1. 平均標準報酬額が65万円の場合
筆者作成
【図表4】2. 平均標準報酬額が84万8333円の場合
筆者作成
まとめ
会社員と専業主婦の夫婦の場合、夫が65歳になると老齢厚生年金と老齢基礎年金が、妻が65歳になると老齢基礎年金が支給されます。また、妻が年下の場合、妻が65歳になるまで夫に加給年金が支給されます。
年収1000万円であっても、その全てを月収として受け取る場合は、夫婦に支給される老齢年金の額は上限の約356万円となります。
平均年収1000万円を月給と賞与に分けて受け取る場合は、支給される老齢年金の額が約414万円に増えますが、この場合は賞与分の厚生年金保険料も支払う必要があります。
将来の年金額を定期的に確認して、給与の受け取り方の工夫をするなど、賢く年金を増やしましょう。
出典
(※1)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※2)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※3)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
(※4)日本年金機構 厚生年金保険の保険料
(※5)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
(※6)日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士