遺族年金を受けると「老齢年金」が減る? 65歳以降の年金受給の真実とは

配信日: 2025.03.19 更新日: 2025.10.21
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遺族年金を受けると「老齢年金」が減る? 65歳以降の年金受給の真実とは
日本の年金制度は多様で、そのなかでも老齢年金と遺族年金は重要な役割を果たしています。しかし、遺族年金と老齢年金の関係については誤解が生じることも多いようです。
 
本記事では、65歳以降の遺族年金と老齢年金の関係について詳しく解説し、具体的な影響や計算方法について考察します。
廣重啓二郎

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

年金制度の基本

日本の年金制度は、主に国民年金と厚生年金の2つに分かれています。国民年金は自営業や学生などが加入する基礎年金であり、厚生年金は会社員や公務員が加入する上乗せ年金です。
 
老齢年金は、一定の年齢に達した際に受け取る年金で、納付した保険料に応じて金額が決まります。一方、遺族年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族が受け取る年金です。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
 

遺族年金と老齢年金の関係

65歳以降は、遺族年金と老齢年金を同時に受給できます。ただし、受給額の調整が行われる場合があります。具体的には、老齢厚生年金の受給権がある場合は老齢厚生年金が優先的に支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金との差額が支給されます。
 
この仕組みは、平成19年4月以降の改正によるものです。「最も有利な年金の組み合わせを選択する仕組み」から「老齢厚生年金を全額受給したうえで、従来の遺族給付との差額を遺族厚生年金として支給する仕組み」になっています。
 

具体的な計算方法

では、実際に受け取れる年金額について見ていきましょう。
 
65歳以上で老齢厚生年金を受ける権利がある方が、配偶者が亡くなったことにより遺族厚生年金を受け取るときは、次の(a)と(b)の額を比較し、いずれか高いほうの額となります。
 

(a)遺族厚生年金
(b)遺族厚生年金の2/3+老齢厚生年金の1/2

 
以下の条件で、具体的に計算してみましょう。
 

・Aさん(妻、65歳未満)は、数年前に夫に先立たれ、現在、遺族厚生年金60万円を受け取っている。
・Aさんの老齢厚生年金は30万円
・Aさんの老齢基礎年金は65万円

 
Aさんが65歳になったときに受け取れる遺族厚生年金の金額は、

(a)遺族厚生年金:60万円
(b)遺族厚生年金の2/3+老齢厚生年金の1/2 :60万円×2/3+30万円×1/2=55万円
 
(b)<(a):60万円
併給調整後の遺族厚生年金は、60万円-30万円=30万円

 
よって、Aさんが受け取れる年金額は、以下のとおりです。
 
老齢基礎年金65万円+老齢厚生年金30万円+併給調整後の遺族厚生年金30万円=125万円
 

遺族年金の受給条件と注意点

遺族年金の対象となるのは、亡くなった方に生計を維持されていた遺族です。「生計を維持されている」とは、原則として、次の2つの条件をどちらも満たす必要があります。
 

1. 亡くなった方と生計を同じくしていたこと
2. 年収が850万円未満であること

 
したがって、配偶者の前年の年収が850万円以上の場合は支給の対象外となる可能性があります。また、内縁関係であっても、実質的に婚姻関係と同等の状況にあり、生計を一としていたことが証明でき、収入条件も満たしていれば、遺族年金を受け取ることが可能です。
 

遺族年金の課税と受給期間

遺族年金は老齢年金と異なり、所得税(復興特別所得税を含む)や住民税の課税対象とはなりません。また、相続税もかかりません。つまり非課税です
 
遺族厚生年金は、一生涯にわたって受給することができます。一方、遺族基礎年金はすべての子が18歳の年度末を迎えるまで支給され、子の加算についてもそれぞれの子が18歳の年度末を迎えるまで受け取ることができます。
 

まとめと注意点

65歳以降は、遺族年金と老齢年金を同時に受給できますが、受給額の調整が行われる場合があります。年金制度は複雑であり、各人の状況によって異なるため、専門家に相談することが重要です。
 
また、遺族年金と老齢年金の両方を理解し、今後の生活設計を考えることも大切です。自身の年金記録を確認し、必要に応じて年金事務所や専門家に相談することをお勧めします。年金制度を正しく理解することで、安心して老後を迎えるための準備ができるでしょう。
 
このように、遺族年金と老齢年金の関係について理解を深めることで、よりよい生活設計ができるようになります。年金に関する不安を解消し、自分自身の未来を見据えていきましょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 は行 併給調整
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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