父は65歳で定年退職し「75歳」から年金をもらう予定でしたが、「68歳」の時に事故に遭い、現在リハビリ中です。繰下げ待機中ですが68歳からもらえますか?
配信日: 2025.04.14

しかし、本ケースのように繰下げ待機中に医療や介護が必要になったときどのような対応策があるのか知っておくことが大切です。

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
繰下げ受給とは
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の本来の受給開始年齢は原則65歳ですが、自分のライフプランや家計の状況に応じて、年金を受け取る開始時期を早めたり、遅らせたりできます。年金を遅くもらうことを「繰下げ受給」といいます。なお、特別支給の老齢厚生年金は「繰下げ制度」はありません。
繰下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り下げることも、別々に繰り下げることもできます。
受給開始を遅らせた月数ごとに年金額が0.7%増額され、生涯その増加率は変わりません。たとえば、65歳での受給額を100とすると、70歳受給では142、75歳受給では184になります。
繰下げ受給を希望する人は、66歳以降で繰下げ受給を希望する時期に「繰下げ請求書」をお近くの年金事務所、または年金相談センターへ提出します。
それまでは、「年金請求書」を提出する必要はなく、自動的に繰下げ待機期間になります。繰下げ受給の手続きを行った時点で繰下げ増額率が決まります。1ヶ月の違いで0.7%も年金額が違いますので、手続きをする時期は慎重に決めましょう。
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注意点
繰下げ受給には注意点があります。主な注意点を以下に列挙します。
・加給年金額と振替加算額は、増額の対象にはなりません。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額・振替加算を受け取ることはできません。
・日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(もしくは退職共済年金)を受け取ることが可能となるケースでは、すべての老齢厚生年金を同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけません。
・繰下げ受給により、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金が増える可能性があります。
・在職老齢年金制度により年金の全部一部が停止されている方は、支給停止相当分は繰下げの増額の対象となりません。
・繰り下げると本来の受給総額を上回るのは、概算で「繰下げ受給開始年齢 + 12年」になります。70歳で繰上げ受給をする人は82歳で亡くなると本来の受給総額を下回ります。
繰下げ待機中に医療や介護が必要になったとき
本ケースのように老齢年金を75歳からもらうことを予定していたとしても「繰下げ請求書」を提出して68歳からもらうことも可能です。この場合、老齢年金は65歳時点の25.2%増しになり、生涯この増加率は変わりません。
あるいは、65歳までさかのぼって3年分を一括して受給(増額なし)もできますので、医療や介護の費用に充てられます。
万一、繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族から未支給年金の請求が可能な場合は、65歳からもらえるはずだった過去分の年金額を未支給年金として一括して遺族は受け取れます。ただし、請求の時点から5年以上前の年金は時効となってしまい、受け取れなくなりますので注意しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー