同僚が「教育費の公的支援を受けるためにiDeCoをやっている」と言っていました。なぜ、iDeCoが役立つのですか?
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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教育費支援のしくみ
教育費の支援には、一般的に所得制限が設けられています。
0~2歳児クラスの子どもの保育料は住民税の所得割額から計算します。なお、所得割額は、算出所得割額(課税総所得金額×税率(10%))から調整控除・税額控除を差し引き求めます。
高校生等奨学給付金(教科書費、教材費など、授業料以外の教育費を支援する返還不要の給付金)も、対象は生活保護世帯、住民税の所得割が非課税の世帯です。
大学や専門学校等向けの日本学生支援機構の返済義務のある貸与奨学金の家計基準は、第一種・第二種併用では、生計維持者(原則父母)の貸与額算定基準額が16万4600円以下であること、第一種奨学金では生計維持者の貸与額算定基準額が18万9400円以下であること、第二種奨学金では、生計維持者の貸与額算定基準額が38万1500円以下であること、となっています。
貸与額算定基準額は、
(課税標準額)×6%-(市町村民税調整控除額) -(多子控除)-(ひとり親控除)
で計算します。
返済不要の給付型は、支給額算定基準額(課税標準額×6%-(市町村民税調整控除額+市町村民税調整額))に基づいて給付額などが計算されます。
課税標準額という言葉は一般の方には難しいので、パンフレットなどではわかりやすいように会社員の場合、年収で目安が表示されますが、実際の審査対象は、収入ではなく、住民税の課税標準額が基準になります。
これらからわかることは、住民税の課税標準額を小さくすると支援を受けるのに役立つということです。
住民税の求め方
基本的には所得税の求め方と同じです。簡略化して説明します。
住民税の求め方は以下の算式で計算します。
(1) 収入−必要経費(会社員の場合は給与所得控除)=所得
(2) 所得−所得控除=課税所得(課税標準)
(3) 課税所得×税率(10%)=税額
(4) 税額−税額控除=納付税額
この算式から、課税標準を小さくするためには所得控除を増やせばいいことがわかります。
なお、「ふるさと納税」の住民税の寄付金控除や住宅ローン控除などは、税額控除です。納付税額は少なくなりますが、所得控除ではないので課税標準は小さくなりません。
住民税の所得控除の種類
住民税の所得控除には、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、医療費控除(要確定申告)、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、雑損控除(要確定申告)などがあります。
このうち、社会保険料やiDeCoの掛け金(小規模企業共済等掛金控除)は支払った金額が全額所得控除できるので効果的です。
生計一の子どもの国民年金保険料を親が支払った場合も社会保険料控除できます。生計一の家族の医療費も一番収入の高い人が支払えばその方の課税標準を小さくできます。親が介護保険施設に入所している場合、子どもが支払ったその費用も医療費控除の対象になります。雑損控除には控除限度額は設定されておらず、一定の方法により計算した金額がそのまま控除額となります。
なお、所得税と住民税では所得控除の金額が違う場合があることに留意してください。
まとめ
所得控除は教育費の支援を受けるのに役立つだけではなく、ご自身の節税にも役立ちます。所得控除にはどのような種類があるか、自分にはどのような控除が利用できるのか、いくら控除できるか、家族の分も控除できるかなど調べて有効に活用しましょう。
出典
文部科学省 高校生等への修学支援
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金
総務省 これまでの個人住民税の主な改正について(令和3年度第1回)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
